倍増期公式 追伸
岐阜東高校 数学科 亀井喜久男
先だって発表しました30103/(2*r*(217-r)) の倍増期公式いかがでしたでしょう
10通ほどの感想、御教示を頂きました その中で数学としては誤差の評価あたりまで示しておいたほうが納得してもらえるであろうというものがありました 自分としても厳密な数学手法で示してみたかったこともありテーラー展開などで踏み込んでみました 良い式は出てはくれましたが もっと良い方式があるかもしれません。 遠慮なくご検討ください。
テーラー展開にいたるまでの経過から説明します
さて あの倍増期公式にまとまる前に 富子氏70の公式と田中氏72の法則、それぞれの誤差が非常に少ない守備範囲がそれぞれ2パーセントと8パーセントであることをLOTUS123 で調べました それで間に入って亀井71の公式 N=71/r 5パーセントあたりでつよいですよ と自分の名前を入れてしまいました しかしなにぶん約数が少なすぎることと あまりにもオリジナルの工夫がないということで 変わりにあの分母を2次式で近似する30103の倍増期公式にいったわけでした いまでも30103方式が気に入ってはおります
しかし rの 守備範囲を 1,2,3 , 4,5,6 , 7,8,9 に幅3でブロック化しておいてそれぞれの時の反比例定数を 70,71,72 というように変化させてみると誤差が少なくなること 何よりも割り算一回で済ませられるという強みがあり だれにでもとっつきやすい方法です
だから簡易倍増期算出公式としてはこちらを提出すべきかもしれません
5.5パーセントのときは 71を採用して71割る5.5で 12.909
真値が12.946ゆえに誤差は0.037程度です
実用上10%以上の利息は投資の時は危険ゆえに一桁の利率までで充分です
よって70,71,72の算出公式としての普及を狙います 冨子亀井田中公式略してTKT公式とも命名します 0%台については 69.3を特に使用することとします
また 3つずつに1下がるというルールをさだめて10,11,12のとき73
13,14,15のとき 74 以下 同様に 28,29,30のとき 79
このようにしておくと 出資法 法定利息上限以内の 29パーセントのとき 真値 2.722に対しこの方式で試算すると2.724 誤差はなんと0.002でした
このあたりまでくると 30303/(2*r*(217-r))の値より良い近似値を与えてくれます
そんなことでこちらも命名し倍増期算出70台の公式とします 拡張TKT公式です
各ブロックの中心の 利率r 2, 5, 8, 11, 14、 17、 20、 23、 26, 29
それぞれに対応して反比例定数 70, 71, 72, 73, 74、 75、 76、 77、 78, 79
を与えることになります
反比例定数を一次関数で示す方法があります
私から倍増期公式レポートを贈った林氏は冨子公式及び田中公式をみて,全く独立に分子を70+1/3*(r-2)とする方式を考えられました n=(70+1/3*(r-2))/rです
そしてもっと良い近似式を探る数学的方法を尋ねてこられました
数式を書きなおしてみましょう
反比例定数を,利率に対し数列的に階段状に変化させるのではなく,1次関数として処理する方法です
n=(69.33+0.33r)/rとも書き直すことができてさらに
n=69.33/r + 0.33
これは松田先生から紹介していただいた「70の公式」の根拠の式
n=69.31/r にそっくりです
これは数学的に解析をしたほうが良いと考えるにいたったわけです
テーラー展開などの数学的道具を引っ張り出しました
検討の対象はずばり LOG(2) / LOG(1+X)
ただしX= r/100 また LOG( ) は自然対数で扱う
分母のLOG(1+X)をテーラー展開すると
1*X−1/2*x^2+1/3*X^3−1/4*X^4+1/5*X^5−1/6*X^6以下続く
また LOG(2 )についてはLであらわす事とする
N=L/(X−1*X−1/2*x^2+1/3*X^3−1/4*X^4+1/5*X^5−1/6*X^6、、、)
分母を因数分解して
=L/(X*(1−1/2*x+1/3*X^2―1/4*X^3+1/5*X^4−1/6*X^5、、))
次に整式の逆数の形を後ろに出して
=L/X *(1/(1−1/2*x+1/3*X^2―1/4*X^3 +1/5*X^4−1/6*X^5、、))
その上で整式の逆数計算を実行する このあたりは腕力計算です
するとその部分については
(1/(1−1/2*x+1/3*X^2−1/4*X^3 +1/5*X^4−1/6*X^5、、)
=(1+1/2*X−1/12*X^2+1/24*X^3、、)
よってついにNについての近似式を2次式まで得ることが出来る
N=L*(1+1/2*X−1/12*X^2+1/24*X^3、、)/X
ここでX=r/100を代入すると
N=L*(100/r +1/2−1/1200*r+1/240000*r^2、、、)
N=100*L/r + L/2 ―L/1200 *r +L/240000 * r^2
N=69.31472/r +0.3465736 +0.0005776*r +0.0000029*r^2
N=69.31472/r +0.346574 + 0.000578*r +0.000003*r^2
覚えやすさから作った簡易公式
N=69.3/r +0.345
上の式 剰余項はともかく 始めに視察によって作った式 N=69.33/r+0.33
と実に良く似ています
だから簡易算出公式とできたのだろうと考えます
倍増期公式 すべての一覧表を作っておきます
70の公式――――――冨子氏 日経新聞社刊 利殖暗算法
N=70/r
72の法則――――――田中氏 フィスコ取締役 月刊現代1998年10月号
N=72/r
70,71,72の公式――TKT公式
r=1,2,3のとき
N=70/r
r=4,5,6のとき
N=71/r
r=7,8,9のとき
N=72/r
以下 3個ずつのブロックに 反比例定数を1ずつ増やして対応させて
r= 10,11,12 13,14,15 16,17,18 19,20,21
のとき 反比例定数を Kとして
K= 73、 74, 75, 76
基本的には出資法法定利息上限の29.2 程度までカバーするつもりです
r=22,23,24 25,26,27 28,29,30
のとき K= 77, 78, 79
1次関数 k=70+1/3*(r−2) で定め
N=k/r とする方法 変形TKT公式 (林氏)
N=69.33/r +0.33 変形TKT別形式
常用対数もしくは自然対数のどちらでも良いがどちらか指定
これは近似式ではなく真の値を与える公式 ただし関数電卓が必要
N=log(2)/log(1+r/100)
N=ln(2) / ln(1+r/100)
解析学を応用した近似公式
ただしL=ln(2)=0.6931472とする
またx=r/100とする
N=L/(x−1/2*x^2+1/3*x^3−1/4*x^4+1/5*x^5.,,,,,)
N=L*(1+1/2*x−1/12*x^2+1/24*x^3 +4次項+,,,)/x
N=L*(100/r+1/2−1/1200*r+1/240000*r^2 +3次項+,,, )
N=69.31472/r+0.346574−0.0005776*r+0.0000029*r^2,,,,
反比例部分 定数部分 比例部分 2次式部分
次の次数の項の計算は 読者の宿題にしておきます
覚えやすさから作った簡易公式
N=69.3/r +0.345
そして30103の亀井倍増期公式
N=30103/(2*r*(217−r))
30103のかわりに47712を使えば3倍増公式になる強みがあります
69897をつかえば5倍増公式です
真なるものへどんどん近接して行く方法
久しぶりに解析学の実用への応用問題で楽しめました
高校数学だけでは処理しきれない部分もありましたが
数Vを終えた生徒には数学の応用例の好例として伝えたいと思います
それではお元気にお過ごし下さい
敬具
平成13年2月17日
追伸 の 追伸
正解は L*(−19)/720/(100*100*100)