大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

ウツボグサの飛騨方言

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私:ウツボグサ空穂草はシソ科の草本だ。飛騨方言では、みつばな。ウツボグサの方言量はざっと百以上。ミツバナの名は全国各地にあるね。これに関して他には、みっこのすず、みつすいばな、みつすえばな、とか。
君:当サイトは共通語と飛騨方言、両語の語源の探索が目的なのよね。ウツボグサの語源って、若しかして、海の生物・うつぼ、の事かしら。
私:ははは、実は海の生物のウツボは古語辞典には無い。つまりは近代語。古典に表れるのは、つまりは日本語の歴史という事になるが、うつほ空・洞、と言う言葉があった。意味は中身がなく空っぽの事。あるいは具体語が抽象語化して、空虚、という人間の心理なども表現する言葉があったんだよ。ウツホがウツボ、つまりは濁音になるのは近世以降らしい。そしてウツボに別の重要な意味が加わる。武具のひとつ。矢を全体に収めて腰につける容器だ。書かずもがな、形からの連想だね。筒形に作られた上部を穂という。従って武具ウツボの漢字表記は空穂。これの数詞は腰。ひとつ、ふたつ、でもいいが、ひと腰、ふた腰、と数える。魚のウツボは武具たる空穂からの連想。
君:なるほど、それは理解できたけれど武具たる空穂とウツボグサ空穂草の関係は?この草って、中身が空っぽじゃないわよ。
私:うん。それもいい質問だと思う。武具たる空穂は当初は実用品、つまりは戦闘の道具だったが、中世以降は芸術品になった。つまりは華麗なる装飾品。京都では一条北小川(=上京区靱屋町かみぎょうくうつぼやちょう)で作られていた。
君:京都の芸術品と野に咲く華麗な花、つまりは見た目からの連想ね。
私:左様でございます。
君:語源の探索って、それなりに味わい深いものがあるわね。それじゃあ飛騨方言ミツバナの語源は何なのかしら。
私:嗅げばわかる。気分は蜂さん。
君:なるほど。蜜の香り。つまりは蜜花。
私:これがピンとこなかったという事は、子供のころに吸ってみた事がないのかい?
君:ええ。
私:方言というものは素朴だ。方言が増えるのは子供の言葉遊び、つまりは勝手な想像であれこれ名前を付けてしまう事、これから来ていることが多い。これを学問的に実証したのが柳田國男。民俗学の中興の祖。名著・蝸牛考。その他、著作は数知れず。兵庫県福崎と長野県飯田の二か所に記念館がある。
君:今日のキーワードは京都の芸術品と気分は蜂さん。
私:長女は蜂矢という家に嫁いだ。娘夫婦のためにリムスキー・コルサコフ熊蜂飛行の曲にちなんだものを彼らに送っている。例えばCD。
君:なるほど、いろんな楽器で演奏される定番だからCDを探すにも事欠かないわよね。
私:まあね。音符にキーワードがあるとすればクロマチック・ラン(スケール) chromatic run (scale)かな。

君:脱線しすぎよ。ほほほ

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