大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

こおろぎ

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私:さあ、今夜も華麗なる古文の世界だ。
妻:結論が見えてるわよ。「こほろぎ」がいったいなんぼのものですか。
私:たしかにね。それだけでは僕は読者の皆様にペラッペラな人間と言われても仕方ない。
妻:えっ、若しかして他に沢山あったの?
私:あったなんてもんじゃない。豊漁だ。「こほろぎ」「いとど」「きりぎりす」「ちちろ」「ちちろむし」「つづりさせ」六個の古語だ。すごいでしょ。
妻:若しかして「きりぎりす」もそうなの?
私:そうだ。重要単語、つまり赤文字で印字している古語辞典もある。
妻:じゃあ、キリギリスの古語は何なの?
私:ははは。そうこなくちゃね。「はたおり(め)機織り(女)」要するに、古代の人にはコオロギは「きりきりす」と鳴くように聞こえキリギリスは「はたおりめ」と鳴くように聞こえていたんだ。
妻:じゃあ全国の方言も相当な数よね。
私:勿論だ。日本方言大辞典の記載を紹介したいが、とても書ききれない。「こほ・」で数十、「いと・」も数十、後は想像に任せるよ。
妻:一番に少ない系統ならご紹介できない?
私:その言葉を待っていたんだよ。ずばり、「つづりさせ」だ。
「つーつー」「つづりさし(させ)」「つづれさし」「つんづりさし(させ)」たったこれだけだ。
妻:なるほどね。「つ(ん)づり(れ)」+ 「さし(させ)」」という事で、多少の訛りね。一つの言葉と言ってもいいわね。じゃあ、飛騨方言で「こおろぎ」は?
私:その言葉も待っていた。実は「つづりさし」別原稿「つづり・つづれ」に昔、書いたのを思い出した。
妻:あなたとしては古語辞典に飛騨の言葉が記載してあると嬉しいのよね。
私:嬉しいなんてもんじゃない。発狂したいくらいだ。古今和歌集が出典だぜ。
妻:でも全国の方言なんでしょ。
私:ふふふ、それがそうじゃないんだ。文献の記載は飛騨と富山県砺波のみ。砺波じゃ「つーつー」だそうだから「つづれさし」は飛騨の俚言と宣言してもいいだろう。全国広しと言えども飛騨だけに残る言葉。約20万語を記載する日本方言大辞典に唯一の言葉「つづれさし」飛騨、と紹介されていると言ってもいい。飛騨の土産物の製作業者様にお願いですが、「つづれさし」の言葉をお忘れなく。
妻:インパクト足りないわよ。「ごがわく」「はんちくたい」「げばす」とか、感情あらわの言葉がいいわ。方言グッズは受けが肝、つまり御商売なのだから古語辞典も古今も関係ないのよ、頭でっかちさん。

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