大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
入声(にっしょう) |
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私:方言の理解のためには日本語の歴史から。 君:入声は漢詩の専門用語よ。 私:その前に、漢字の読みは呉音・漢音・唐音・近代音。仏教とともに大陸の中国の音韻が日本に輸入されたのだけれど、遣唐使は唐音のみならず漢音も持ち帰ったという事なのかな? 君:入声は現代中国の南方方言では保存されているものの、北方方言では多く失われているわ。 私:本家がそうなっているのか。大陸は広いからなあ。日本は単一民族・単一言語・単一音韻と考えてもよさそうだね。 君:そもそも入声とは何か、という説明から入らなきゃ。 私:そうだね。千人ほどの医師を対象に、大学受験では何が得意でしたか、というアンケートがなされた事がある。第一位は? 君:生物? 私:違う。数学だ。断トツ一位。次いで英語。最下位が古文・漢文。現国はともかく理系進学者は古文・漢文が苦手。現国のみの受験校は激戦区。逆に古文・漢文が得意な医学部受験者は同科目が必須校受験は有利。 君:脱線しているわよ。 私:脱線ついでに、高3の夏に岩波唐詩選を読破した。割合とスラスラ読めた事を覚えている。 君:ほほほ、そこで四声(ししやう)ね。 私:そう。四声とは日本人が中国語の声調を、中古漢語の調類に基づいての4種類に分類したもの。中国音韻学(隋・唐時代)では平声・上声・去声・入声という。漢詩に必須の知識は韻をふむ事。でないとアウト。更には日本人は漢字の周囲に小さな点(ヲコト点)を付けた。漢文訓読に於いて漢字の読みを示すために当時の日本人が考え出した記号体系。中古の日本に大量の漢語・仏語が正しい発音と共に輸入され、日本語に同化した。日本語の高低アクセントと中国語のトーンアクセントは僅差、四声の理解は中古の日本語アクセントの理解も同然、類聚名義抄等、この謎を解き明かす事により日本語の音韻学が成り立っている。 君:ほほほ、そんなの高校じゃ教えないわよ。入試にだって出ないわ。 私:まあね。更に余分にひと言、文学部卒業者の必須知識とも言えないな。でも今日の結論、奈良時代から始まる日本語の音韻、それは現代日本語に受け継がれている、この正しい理解のためには必要。 君:では簡単に結論をどうぞ。 私:p, t, k の子音で終わる漢字。これは歴史的仮名遣いでは「ク・キ・ツ・チ・フ」の何れかの音韻になる。数字が一番わかり易い例という事で国語学の成書にはよく引き合いに出される。一郎は「イチラウ」。数字のイチはなあに♪すっかり日本語だが漢音という輸入語。古代には日本でも中国式に「イッ」とのみ発音していた。ただし、漢詩の怖いところは、 屋・沃・覚・薬・陌(はく)・錫(しゃく)・職、以上韻尾 k 質・物・月・曷(かつ)・黠(かつ)・屑(せつ)、以上韻尾 t 緝(しふ)・合・葉・洽(かふ)、以上韻尾 p 合計17韻があり、全て漢詩の押韻では仄(そく)に属する事を理解する事から始めねばならない。このように漢詩の正しい理解には古代の中国の音韻の理解が必須。分厚い漢和辞典も必須。ひたすら引きまくればいい。素晴らしい世界が開けてくる。 君:中国のおかげで日本語が成り立っているのよね。 私:その通り。中国文明には感謝すべき。日本は世界に冠たる漢字国家。初等中等教育では最も力を入れるべき。 君:外国人が漢字を含めて日本語を学ぶのは大変なのよね。教えるほうも。ふう |
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