大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム・泣ける言葉 |
かしき(炊事夫) |
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私:疲れた日でも、気乗りしない日でも、何かひとつ書いておこうという偏屈な考えに囚われている。 君:疲れた? 私:名古屋に住む夫婦共働きの娘からの緊急連絡、孫の熱、一日預かったが、夜明け前に迎えに行き夕食後に届けてきた。 君:普段は日中の散歩が思索の時間なのに、今日はそれが無いからという事ね。ほほほ 私:泣けるというのは、悲しいという意味もあるし、感涙の意味もある。飛騨方言「かしき(炊事夫)」だがどちらだと思う? 君:いうまでも無く悲しい意味ね。職業に貴賎は無いけれど、男尊女卑文化の飛騨で本来は女性の仕事を男性がなさるという事だけに。 私:昨晩の記事はここだが、男たちが乗り込む漁業船でひとり炊事夫をする男「かしき」が船乗りの皆にさげすまれる悲しい物語・まんが日本昔話を紹介した。 君:あら、飛騨には海は無いわよ。 私:その通り。では早速に本題。「かしき」は他カ四「かしく炊」の連用形が語源で全国共通方言だ。甑(こしき)が更にその語源なので、つまりは弥生時代から日本で使われていた言葉、つまりは和語だが方言量、つまり音韻変化は多い。ざっと十数種類か。かひき、かしち、かしぎ、かしきす、かせき、かーし、かしぎわらし、かしぎあんね、等々。更には「かしき」には方言量に加えてもうひとつ多い属性がある。わかるよね。 君:「かしき」は古代の言葉、様々に音韻変化し、・・・わかったわ、つまり、意味も多様という事ね。 私:その通り。「かしき」の意味は、★もちごめをむしたもの、こわ飯、★飯炊き仕事、★飯炊きをする人、★山小屋の炊事役、★船乗りの炊事役、★(単に)女中。 君:つまりは、料理そのものの事、料理をする事、料理をする人、料理をしなくても使用人、というように意味がどんどん増えたという事ね。 私:正にその通り。前日のマンガ日本昔話では船乗りの炊事役カシキが皆にさげすまれた悲しい物語。 君:なるほど。飛騨では山小屋の炊事役という事で、木こりさんの集団がいてその中でたったひとりの料理人というのは、やはり木こりさん連中からさげすまれていたお仕事だったという意味なのね。 私:軍艦の中にも調理室はあってシェフはいらっしゃるが、あまり勇ましいお仕事とは言えないね。原子力潜水艦は潜ったら数か月以上も海の中、敵地湾に潜入し交代で情報収集にあたるが、やはり「かしき」役はいらっしゃる。ドキュメンタリーでやっていた。「かしき」役とは言え、軍人だ。肩書もある。潜水艦の乗組員は全員が海軍のエリートだそうだ。 君:でも毎日、黙々と音を立てずにひたすらハンバーガーを焼いたり皿を洗ったりでは、お仕事としては勇ましくないのよね。 私:職業に貴賎はないが、彼は息子に「お父さんは海軍のエリートで原子力潜水艦勤務だが、実はハンバーガーを焼く仕事だ」と打ち明けるだろうか。 君:結論から言うと、打ち明ける必要ないわね。 私:当然だよね。決まり文句がある。 君:特殊な任務についている、とおっしゃればいいのよ。お父さんの仕事は軍の機密情報なので息子のお前にすら話す事は出来ないんだ、と言えばいいのよ。ほほほ |
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