大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

しわい(形ク)飛騨方言

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私:飛騨方言に、しわい(形ク)、というのがある。意味は、けちだ。けちんぼう、の事を、しわんぼ、という事がある。
君:今夜はその語源に迫ろうというのね。何か思い当たる事でもあるの?
私:正直言って、あまり書かなれない言葉、現代の飛騨では死語かもしれない。
君:かもしれない、とは?
私:故郷は遠くなりにけり。まずは小学館・日本方言大辞典のお出ましだ。しわい(形ク)撓の見出しがありました。多義語の形容詞だった。意味が幾つ記載されていたと思う?
君:三つや四つはあったと仰りたいのよね。
私:ふふふ
君:えっ、もっと沢山?
私:19個の意味があった。全国各地で各種の意味に使われている。ここからわかる、形容詞しわい、の特性は何?
君:あら、それは簡単よ。感情形容詞。
私:その通り。抽象形容詞といってもいいかな。日本方言大辞典の19通りの意味だが、不愉快な感情、という概念に集約される。更に突っ込んで話すと、相手に対して不愉快に思う感情。飛騨方言の意味、けちだ、とて例外ではない。
君:それはいいから、ここは語源を考える場よ。撓という漢字は、たわむ・たわめる、まがる・まげる、うごく・うごかす、かがむ、みだれる、かきみだす、という意味よ。
私:うん、その通り。そして、ここからは私見になるが、しわい(形ク)の語源は、名詞しわ皺、じゃないかと思う。
君:単純発想ね。外れている可能性があるわね。それ以前のチェックポイントとしては、古語辞典に記載があったのね。
私:まさにその通り。しわし(形ク)吝の記載があった(角川古語大辞典)。意味は、けちだ、のひとつだけ。つまり同じ意味。中世以降の口語だ。室町時代から文献に現れてくる。歴史的仮名遣いが、しわし・しはし、のどちらかは不明との記載だった。
君:つまりは飛騨方言しわい(形ク)は室町時代の中央の言葉で、今も意味は変わらず、ただし全国的には随分、沢山の意味に分かれた、という事ね。
私:その通り。ソシュール言語学的には飛騨では室町以来、シニフィエもシニフィアンも一切、変化していないという事。
君:全国的にはシニフィアンが全く変化せず、シニフィエがどんどん変化していった、という事ね。そして、なぜかといえば感情形容詞だから。これはソシュール言語学で説明がつくわよ。ほほほ

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