大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 文法

飛騨方言における終助詞・よ、の男性格及び女性格

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共通語における終助詞・"よ"は接続するものが何であるかによって、男性格になるか女性格になるか 明確な規則があります。例えば
接続    性別  例文
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
助動詞・だ 男性格 〜だよ。
体言    女性格 花よ。
終止形   男性格 僕は行くよ。
終助詞・わ 女性格 私はいやだわよ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ところが、実は飛騨方言ではこれが当てはまりません。ほとんどあべこべと言ってもいいでしょう。

助動詞・だ、に接続する場合、共通語では男性格(例、僕は佐七だよ)
飛騨方言では、そもそも使用せず。
飛騨方言助動詞・や(助動詞・だ、に相当)、に接続する場合
実は、飛騨方言では女性格になります(例、私はいそがしいんやよ(=忙しいのよ))。 いそがしいんやよ、を品詞分解しますと、
形容詞・忙しいの連体形
+接続助詞・の、の撥音便
+飛騨方言助動詞・や (ここまで中性)
+飛騨方言における女性格終助詞・よ(ここで突然、女性格になる)
になります。つまり例えば、僕はいそがしいんやよ、は飛騨方言の言い回しとしては不可です。 これは文法的には形容矛盾といわれる表現、例えば丸い四角、木製の鉄、など、に相当しましょう。 ところが、僕はいそがしいんや、あるいは、かあちゃんはいそがしいんや、という中性の動詞表現は意味が通ります。
体言に接続する場合、共通語では女性格(例、私は美人よ)
実は、飛騨方言では共通語の正反対で、男性格になります。 (例、今日はおりぃのおごりよ。会費はしめて五千円よ。全部、おりぃの払いよ。わりぃゃ部下やでいつも遠慮なしよ)。 ただし、言い方としては、よ、は尻下がりに話します。 例えば、時代劇で、悪代官が袖の下をもらって "おぬしもワルよ。のう。" というような言い方と同じです。
終止形に接続する場合、共通語では男性格(例、僕は行くよ)
実は、飛騨方言では共通語の正反対で、むしろ女性格になります。 以下に例をあげます。
   動詞例    形容詞例      形容詞例
女性 私ゃ行くよ。 私ゃ忙しいよ。   そんなこたぁないよ。
男性 おりゃいくぞ。おりゃいそがしいぞ。そんなこたぁないぞ。
終助詞・わ、に接続する場合、共通語では女性格(例、私も行くわよ)
飛騨方言では、そもそも使用せず。
接続助詞・の、に接続する場合、共通語では女性格(例、やだわ、これはきのうのよ)
飛騨方言では共通語の正反対で、男性格になります。 勿論、きのうのよ、というのは例えば、きのうのものよ、あるいは、きのうの話よ、という事で、 もの・話、が略されているだけのことじゃないか、と主張する立場からは体言に接続する場合 と同じだから飛騨方言文法をことさらにゴミゴミと記載する必要は無い、という事にります。例としては、
女性 "なんやな、こりゃきのうのやよ。今日のを持ってきないよ。"
男性 "なんじゃい、こりゃきのうのよ。今日のを持ってこい。"

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