飛騨方言では、終助詞・がい 及び が、が頻用されますので、両語とも重要な助詞です。
両語とも共通語の助詞・か(軽い疑い、例・そうか、及び反語、例・そんなのあるか)、が語源かとも考えられます。
一方、例えば共通語で、行くかい?と行くか?にどれだけの差があるというのでしょう。
がしかし、飛騨方言では以下に示すごとく、がい、と、が、に決定的な接続の違いがあるようです。
さて、実は下記に示す飛騨方言における終助詞・が の接続はすべて男性言葉です。
更に、女性宣言終助詞・な、を男言葉に接続して、
すべて女性言葉に変換が可能です。
助詞・がい、との接続則が同じ、つまり
助詞・が、でも意味が通る接続
★動詞終止形に接続して
確認、勧誘、軽い疑いの意味を表します。
例、いくが? = 行きますか?、ないし、行こうよ
例、いくがな? = 行かれますのね、ないし、行きましょうよ
あるいは、反語の意味を持ちます。
例・そんなごたぁあるが! = そんなのあるかい!
例・そんなごたぁあるがな! = そんなのないわよ!
★形容詞終止形に接続して確認の意味を表します。
例、おいしいが? = おいしいですか?
例、おいしいがな ?= おいしいのかしら?
助詞・がい、の接続則が通じない、つまり
助詞・が、では意味が通らない接続
×助動詞・だ、の連体形・な、に接続して確認の意味を表す接続
例、おひまですか?=○ひまながい? ×ひまなが?
例、ひまながな? おひまよね =○ひまながいな? ひまながな?
実はこれには異論があるかも知れません。
お元気ですか、は、まめながな、でもセンスがあるのか、
あるいは、まめながいな、のみがセンスがあるのか、さてどうでしょう。
×助動詞・だ(実は飛騨方言は、や)、の終止形・や
+確認の終助詞・な、
に接続して
確認、主張の意味を表す接続
例、そうじゃないか!、そうだろう =○そうやながい! ×そうやなが!
例、そうじゃないの!、ねえそうよね =○そうやながいな!×そうやながな!
あるいは驚嘆の意味を表す接続
例、うわあ雨じゃないか! =○雨やながい! ×雨やなが!
例、うわあ雨じゃないの! =○雨やながいな!×雨やながな!
×動詞終止形、形容詞終止形
+確認の終助詞・な、
に接続して驚嘆の意味を表す接続
例、来ているじゃないか! =○きとるながい! ×きとるなが!
例、来ているじゃないの! =○きとるながいな!×きとるながな!
例、来ていないじゃないか! =○きとらんながい! ×きとらんなが!
例、来ていないじゃないの! =○きとらんながいな!×きとらんながな!
例、うまいじゃないか! =○うまいながい! ×うまいなが!
例、うまいじゃないの! =○うまいながいな!×うまいながな!
例、うまくないじゃないか! =○うもうないながい! ×うもうないなが!
例、うまくないじゃないの! =○うもうないながいな!×うもうないながな!
×動詞終止形
+接続・の、の撥音便
+助動詞・だ(実は飛騨方言は、や)、の終止形
+確認の終助詞・な、
に接続して確認、主張の意味を表す接続
例、行くのじゃないか!、そうだろう。=○行くんやながい! ×行くんやなが!
例、行くのじゃないの!、そうよね。 =○行くんやながいな! ×行くんやながな!
これ以上の用法の追加は不要でしょう。以上から明らかな点はたったひとつです。
飛騨方言では確認の終助詞・な、と助詞・がい、は強固な係り結びになっているのです。
あるいは話をもっと簡単にしましょう、
実は "ながい"というひとつの単語で "〜じゃないか"という意味の助詞、
というのが飛騨方言の文法のようです。
この観点からは、まめなかな、という言葉は、この強固な係り結びを無視する
飛騨方言としては一風変わった言い方である、というのが筆者なりの結論です。
正しい言い方は、男言葉・まめながい、ですが、女性格助詞・な、を男言葉に接続させると、
まめながいな(女言葉)、という言葉になるという事でしょう。