表題は仰々しいのですが、〜している、という意味で、〜しとる、という言い回しは
全国の方言の言い回しとして存在するのではないでしょうか。
実は飛騨方言では、いる、という動詞は、おる、になりますので、
その結果、しておる、が、しとる、と発音されやすいという
種明かしもあるのですが。
勿論、動詞・おる、単独の場合は、この連母音融合は生ずべくもありません。
必ず接続助詞・て、で、とともに連母音融合が生ずるようです。
おい、佐七、おるがい?(= おい、佐七、いるかい?)
おい、佐七、しとるがい?(= おい、佐七、しているかい?)
おい、佐七、読んどるがい?(= おい、佐七、読んでいるかい?)
また飛騨方言では、存在するという意味の動詞・いる、以外は、おる、に転換されません
(要る、射る、炒る、踏み入る、等々)。従ってこれらの動詞群も連母音融合は生じません。
動詞連用形+接続助詞・て
+動詞・おる 飛騨方言古語 飛騨方言
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未然形 しておらぬ しとらん
連用形 しておりて しとって
終止形 しておる しとる
連体形 しておる しとる
仮定形 しておれや しとりゃ
命令形 しておりよ しとりょ
動詞連用形+接続助詞・で
+動詞・おる 飛騨方言古語 飛騨方言
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未然形 読んでおらぬ 読んどらん
連用形 読んでおりて 読んどって
終止形 読んでおる 読んどる
連体形 読んでおる 読んどる
連体形 読んでおれや 読んどりゃ
命令形 読んでおりよ 読んどれ
動詞・おる単独 (実は連母音融合無し)
飛騨方言古語 飛騨方言
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未然形 おらぬ おらん
連用形 おりて おって
終止形 おる おる
連体形 おる おる
仮定形 おれや おりゃ
命令形 おりよ おれ
要る、射る、炒る、踏み入る、等々
連母音融合無し、共通語、飛騨方言とも同一
さて以上が月並みな議論です。ついでだからという事で、とる、以外の音で連母音融合現象がないか、
ひたすら内省してみました。こる、そる、ぞる、のる、ほる、ぼる、もる、よる、ろる、の検討です(私っておひま人間?)。
ところがどうにも該当なしのようです。結論としましては、飛騨方言においては動詞・おる、の天涯孤独の連母音融合・とる、どる、でした。しゃみしゃっきり。