飛騨方言では形容詞の活用に以下の特殊な言い回しがあります。またこの言い回しが体言に接続する事もあります。
形容詞語幹+たやな
例えば、はずかしたやな事、などど言います。
はずかしいような事、という意味になりますが、もとの言葉は、はずかしいとや+格助詞・な+事 という事でしょう。
ところで飛騨方言で、はずかしい事と、はずかしたやな事、の意味の差を考えますと、はずかしたやな事、
とは別に恥ずかしいと思わなくてもいいのにそれでもなんとなく、どうしても恥ずかしくなってしまう事という意味で
あろうかと思います。例えば、
選挙違反で捕まりゃ、本人は恥ずかしいこっちゃさ。
( 本当に恥ずかしいことだね )
無名候補がいきなり当選すると、本人は恥ずかしたやなこっちゃさ。
( 別に恥ずかしからなくてもいいのにね )
飛騨方言では、〜ものだ、を、〜もんや、と言いますので、恥ずかしたやなもんや、と言えば、
別に恥ずかしがらなくてもいいのに何かしら恥ずかしい感じがするものだ、という意味になります。
体言+たやな
例えば、たわけたやな事、といえば、たわけのような事、という意味になります。
たわけた事といえば、明らかに馬鹿な事という意味になりますが、たわけたやな事、という事の意味は
実は、上記の恥ずかしたやな、とは全く逆の使い方になります。たわけたやな事、というのは
一見しては、たわけた事にはみえず、ややもすれば見過ごされてしまうかも知れないが、実は明らかにたわけた事、
という意味なのです。たわけたように見えても実はたわけではない事という意味では決してありません。例えば、
いくら男女平等やたって(=だとて)、男が美容室行くなんて、たわけたやな事があるがよ。
形容詞語幹+たいな
体言+たやな
たやな、がさらに訛った言葉でしょう。はずかしたいな事、たあけたいな事などともいいます。
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