大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 文法

飛騨方言における二つの女性格終助詞(えな(いな)・ぜな)の用法の差異

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飛騨方言における三つの終助詞(方言文末詞)、えな、いな、ぜな、ですが女性言葉になります。 男性は用いません。 さて、えな・いな、の両者ですが用法、意味、等々あらゆる点において根本的な違いはありません。 違いは発音のみといえましょう。 例えば、あのえな( あのですね )と、あのいな、ですがこれを詳述しますと 筆者の主観論になる事を恐れて敢えて本稿には記載しません。

ところで、"いな"を省き全て"えな"で代表して議論を進めますが、えな・ぜな、の 二つの終助詞には根本的な用法、意味の違いがあります。 それは、終助詞・ぜな、は女性が主義、主張を表明する目的の方言文末詞であり、 従って、疑問文には決して用いられないという点です。 例えば飛騨方言に
なんやえな
という言い回しがありますが、これは"なん"という撥音便の元の言葉の違いにより、 意味が分かれます。つまり、
  撥音便の
  もとの言葉 意味       種類
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(1)なにやえな なにですかしら? 疑問文
(2)なのやえな なのですって!  感嘆文
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
という意味の差ができてしまうのです。 どちらの意味なのかは文脈、会話の流れで判断するしかありません。 例文を示しましょう。(1)なんやえな、こりゃ?おりゃこんなもん、まんだみたごたぁないんやげど。 (=何かしら、これは?私はまだこのようなものは見た事がないのよ)。 (2)お菓子なんやえな、こりゃ。人形の形しとるげどなあ。 (=お菓子なのよね、これは。人形の形をしているけれどね。)

一方、
なんやぜな
という言い回しはひとつの意味、なのですわよ!しかありません。 つまりは撥音便のもとの言葉は、なのやぜな、です。 なに(疑問)+やぜな(主義、主張を表明)という言い回しは飛騨方言では 成立しないのです。そうなんやぜな(= そうなのよ)、実は。

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