飛騨方言では、勧誘の意味で助動詞特別活用(特活)「まいか」が動詞未然形に接続します。この独特な四段未然形に接続する形式は飛騨を飛び越えて遠州あたりからやや関東寄りの言い方のようです。
口語文法では五段は終止形、その他は未然形に接続となります。例文ですが、
飛騨 共通語
四段 かかまいか 書くまいか 書きましょう
上一 みまいか みまいか 見ましょう
下一 寝まいか 寝まいか 寝ましょう
カ変 こまいか いきましょう
こまいか こないはずがない
サ変 せまいか せまいか しましょう
サ変 しまいか しまいか しましょう
飛騨方言では「行く」という意味で「くる」といい、従って「来る事にしましょう」という意味の「こまいか」は共通語「行きましょう」の意味になります。便宜上で助動詞特活としてありますが、実際は活用はしません。言い回しは「〜まいか」のみです。
この言い回しは、県内の美濃方言の言い回し「〜よう」に接続するようです。ウィキペディア・名古屋弁、の記載と対比してお示ししましょう。
名古屋(岐阜も) 飛騨
五段 行こまいか いかまいか
上一 見よまいか みまいか
下一 食べよまいか たべまいか
サ行 しよまいか しまいか
せまいか
カ行 こよまいか こまいか
古語辞典によりますと「まいか」とはそもそも助動詞「まじ」の連体形「まじき」が「まじい」を経てできた言葉「まい」に終助詞「か」が付加したもの、つまりは婉曲に希望し勧誘する意を表すと言う事で、二重否定は一重肯定と同じという意味、つまり反語の言い回しでしょう。「いかまいか」とは「行ってはならないなどと言う事があるのですか」という意味です。
古語文法に従う限りはいかなる方言も「〜まいか」という言い回しは連体形に接続するべきなのでしょう。つまり、「いくまいか」をキーワードにネット検索しますと、伊予、長野、富山、等々の情報が得られます。
ところで名古屋弁の「いこまいか」という言い回しは関西方言の「いこか」などという言い回しの影響はないのでしょうか。「いこう」+「まいか」で二重の勧誘という訳です。
また、「いかまいか」でネット検索しますと、飛騨、再び長野、飯田、甲州、遠州、等々がヒットし、おぼろげながらも全国図が見えて参ります。飛騨はじめ「〜まいか」が動詞未然形に接続する地方では「まいか」は実は打消しの助動詞「じ」から派生した可能性はあらじか??あらまじか、あらまいか。では佐七は先達に聞きに行かじか。いかまじか、いかまいか。しゃみしゃっきり