飛騨方言文末詞・なで、ですが、形容動詞語幹+なで▼○、
の用法で、〜なので、の意味になります。
平成の御世には死語に近いのではないかと思います。
初めてお聞きになる方には奇異に
聞こえましょう、特殊な文末詞です。
早速に文例を少しお示ししましょう。
立派なお話やったさ。学者なでなあ。
(=立派なお話でしたね。さすが学者でいらっしゃいますのでね。)
またブランコやりたいと。こどもなでなあ。
(=またブランコをやりたいのだって。
子供だからねえ。)
お祭り男の○○さんぁ元気やなあ。参院選挙なでなあ。
(=○○さんは元気ですね。参院選挙だからね。)
入選せりゃええに。一生懸命なでなあ。
(=入選すればよいのに。一生懸命だからね。)
立派な作品や。飛騨工なで。
(=立派な作品ですね。さすが飛騨工だから。)
ええ人やなあ。正直なで。
(=いい人。正直だからねえ。)
お察しの良い方には書くまでも無い事、複合語・なで、は
形動ナリの終止形なる+接続・の+理由を著わす助詞・で、
つまりは、なるので、が訛った言葉でしょう。
形容動詞とは限りません、要は、体言+なので、という
飛騨方言の言い回しが、なで、と言う事になります。
ただし筆者が幾ら内省実験をしてみても、
一拍の体言に接続する場合はこの用法はアウトなのです。
その場合の代替の話法は、〜やで、です。
例文ですが、
(○)木やで、堅い。(×)木なで、堅い。
(=○木だから堅い。)
(○)親やで、子供を心配せる。
(○)親なで、子供を心配せる。
(=○親だから子供を心配する。)
また二拍でも明らかに形容動詞の語幹であれば
文句なしに飛騨方言のセンスに合います。
(○)味が変やで、やめまいが。
(○)味が変なで、やめまいが。
(=味が変だから、やめておきましょう。)