大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 文法

完了・過去を表す助動詞(てまう)及びその否定形(てまわん)の飛騨方言表現
特にアクセントの違いについての大阪方言との対比検討

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geocities.jp/immanuel_wa/hoby/osakaben/jodoushi-temau.htm わたさんの大阪方言アクセント講座にありますように「てまう」は、 「て・しまう」の転訛したもので、完了・過去を表します。 大阪方言・飛騨方言に共通かつ代表的な言い回しといえましょう。 つまりは書き言葉としては同一言語です。が実は、両者はアクセントが正反対です。 従って話し言葉、会話としては似ても似付かぬ言葉となっています。

また大阪方言「てまえへん」に相当する飛騨方言は「てまわん」になります。 両者とも「て・しまわない」の転訛したもので、「てまう」の否定形です。

例文:   大阪方言                 飛騨方言
もうちょっとやねんから、やってまえ。−> もうちょっとやで、やってまえ。 そんな思い出、もう、忘れてもうた。 −> そんな思い出ゃ、もう、忘れてまった。 どこかへ、行ってまいたいわ。 −> どっかへ、行ってまいたいわい。
大阪方言と違う飛騨方言の特徴
★大阪方言ではマ行、ナ行で活用する動詞につく場合には、「でまう」となりますが、 飛騨方言では「てまう」「でまう」共に用いられます (例 捲いてまう、捲いでまう、泣いてまう、泣いでまう)。

★大阪方言、飛騨方言ともにサ行で活用する動詞の一部では、「でまう」となります (例 割いでまう、死んでまう、済んでまう、削いでまう)。 またこれらの動詞の一部は飛騨方言では「てまう」も用いられる (例 割いてまう、割いでまう、敷いてまう、敷いでまう)。

★飛騨方言は仮定形に、〜てまったら、以外に〜てまや、の表現がある。 例 やってまやええ(=やってしまえばよい)。

★飛騨方言では動詞がウ音便で用いられる事は決してない。むしろ、促音便化する。 例 大阪方言・買うてまう、は飛騨方言では買ってまう。

★飛騨方言では全て飛騨方言では頭高アクセントとなる。しかも「てまう」、「てまわん」の 最初の語「て」までが強アクセントとなる。 飛騨方言では疑問文の場合は、「てまう」、「てまわん」のそれぞれの末尾、「う」、「ん」が強アクセントとなる。

★飛騨方言では「てまわん」の仮定形では「てまわにゃ」、「てまわんと」の二つの活用形がある。 例 日が明るいうちに(やってまわにゃ、やってまわんと)だしかん (=日が明るいうちにやってしまわないとだめだ)

★「てまう」の過去形は大阪方言では「てもうた」と、う穏便化するのに対し、飛騨方言では「てまった」と、促音便化する。
(1)飛騨方言「てまう」の活用形
未然
連用
終止
連体
仮定
命令
接続
てまわ・ん
てまお・う
てまっ・た
てまい・ます
てまっ・て
てまう てまう・どき てまや
てまったら
てまえ 動詞の連用形につく
てしまわ・ん
てしまわまいか
てしまっ・た
てしまい・ます
てしまっ・て
てしまう してまう・どき てしまや
てしまったら
てしまえ 動詞の連用形につく
(2)「てまう」「てしまう」が動詞につく場合の飛騨方言のアクセント
以下にテーブル内に示すのは飛騨方言のアクセントです。大阪方言のアクセントについては、 geocities.jp/immanuel_wa/hoby/osakaben/jodoushi-temau.htm わたさんの大阪方言アクセント講座 を参照なさってください。
アクセントが大阪方言で平板型、飛騨方言では頭高型の動詞
活用形
2拍
大阪[○○]
飛騨●●]
3拍
大阪[○○○]
飛騨●●●]
4拍以上
大阪[○○○○]
飛騨●●●●]
五段活用語 ●●●・○○
言って・まう
●●●・○○○
言って・しまう
●●●●・○○
祈って・まう
●●●●・○○○
祈って・しまう
●●●●●・○○
輝いて・まう
●●●●●・○○○
輝いて・しまう
上一段活用語 ●●・○○
居(い)て・まう
●●・○○○
居(い)て・しまう
●●●・○○
出来て・まう
●●●・○○○
出来て・しまう
●●●●・○○
滅びて・まう
●●●●・○○○
滅びて・しまう
下一段活用語 ●●・○○
得て・まう
●●・○○○
得て・しまう
●●●・○○
越えて・まう
●●●・○○○
越えて・しまう
●●●●・○○
与えて・まう
●●●●・○○○
与えて・しまう
カ行変格活用語
サ行変格活用(サ変)語 ●●・○○
して・まう
●●・○○○
して・しまう


アクセントが大阪方言で尻上がり型、飛騨方言では頭高型の動詞
活用形
2拍
大阪[○●]
飛騨●●]
3拍
大阪[○○●]
飛騨●●●]
4拍以上
大阪[○○○●]
飛騨●●●●]
五段活用語 ●●●・○○
読んで・まう
●●●・○○○
読んで・しまう
●●●●・○○
歩いて・まう
●●●●・○○○
歩いて・しまう
●●●●●・○○
もたらして・まう
●●●●●・○○○
もたらして・しまう
上一段活用語 ●●・●●]見て・まう
●●・●●●]見て・しまう
●●●・○○
悔いて・まう
●●●・○○○
悔いて・しまう
●●●●・○○
用いて・まう
●●●●・○○○○
用いて・しまう
下一段活用語 ●●・○○
出て・まう
●●・○○
出て・しまう
●●●・○○
見えて・まう
●●●・○○○
見えて・しまう
●●●●・○○
答えて・まう
●●●●・○○○
答えて・しまう
カ行変格活用語 ●●・○○
来(き)て・まう
●●●・○○○
来(き)て・しまう
サ変語 ●●●●・○○
命じて・まう
●●●●・○○○
命じて・しまう


例外:大阪方言、飛騨方言とも頭高型アクセントの動詞
活用形
2拍●○
五段活用語 ●●・○○
居(い)て・まう


3)「てまわん」が動詞につく場合のアクセント
「てしまわん」の「し」は、大阪方言では高くつき[●]、飛騨方言で低く[○]つく。

アクセントが大阪方言で平板型、飛騨方言では頭高型の動詞
活用形
2拍
大阪[○○]
飛騨●●]
3拍
大阪[○○○]
飛騨●●●]
4拍以上
大阪[○○○○]
飛騨●●●●]
五段活用語 ●●●・○○○
言って・まわん
●●●●・○○○
祈って・まわん
●●●●●・○○○
輝いて・まわん
上一段活用語 ●●・○○○
居(い)て・まわん
●●●・○○○
出来て・まわん
●●●●・○○○
滅びて・まわん
下一段活用語 ●●・○○○
得て・まわん
●●●・○○○
越えて・まわん
●●●●・○○○
与えて・まわん
カ行変格活用語
サ変語 ●●・○○○
して・まわん


アクセント大阪方言で尻上がり型、飛騨方言では頭高型の動詞
活用形
2拍
大阪[○●]
飛騨●●]
3拍
大阪[○○●]
飛騨●●●]
4拍以上
大阪[○○○●]
飛騨●●●●]
五段活用語 ●●●・○○○
読んで・まわん
●●●●○○○
歩いて・まわん
●●●●●・○○○
もたらして・まわん
上一段活用語 ●●・○○○
見て・まわん
●●●・○○○
悔いて・まわん
●●●●・○○○
用いて・まわん
下一段活用語 ●●・○○○
出て・まわん
●●●・○○○
見えて・まわん
●●●・○○○
答えて・まわん
カ行変格活用語 ●●・○○○
来(き)て・まわん
サ変語 ●●●●・○○○
命じて・まわん


例外:大阪方言、飛騨方言ともに頭高型アクセントの動詞
活用形
2拍
●○
五段活用語 ●●・○○○
居(い)て・まわん

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