大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 古代

和語とは

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私:先月あたりだが、幻の古代語・縄文語について興味が急に沸いて書物を幾つか買い求めたんだけど、いきなり挫折のような感じだった。
君:ほほほ、考古学の世界に言語は辛いものがあるわね。物証となるものは石、銅鐸、ラジオアイソトープ年代測定。
私:からかわないでくれ。でもロマンがあるじゃないか。古代人とて何かはお話しになっていらっしゃったのだから。アルタイ語理論で全て押し通す事が出来ると思っていた考えが甘かった。
君:Art is long。コツコツとお調べになって、何かパッと閃いたら教えてね。
私:But, life is short。遅咲きどころか、まだ咲いてもいない。結局、僕は何も知らないで死んでいくのだろう。
君:何よ、その厭世的な言い方は。何かあったの?
私:ははは、何もない。強いて言えば親友が何人も既に病気で死んでいる事かな。
君:弔いの為に書くのね。
私:その通り。では早速。実は当サイトでは「大和言葉」を長らく使っていたが、今後は「和語」に改めようと思っている。
君:良い事だわ。つまりは「和語」と「漢語」、日本独自の言葉が「和語」で、外来語が「漢語」、両者の組み合わせが日本語よ。日本独自の言葉に中国語が与えた影響の歴史。
私:和語には五つの特色が指摘されている。
君:急がないで。それより前に和語の例をお示しになったほうがいいわよ。
私:ああ、そうだね。昭和32年。国立国語研究所資料だがざっと30個の和語動詞、ざっと20個の和語名詞を紹介している。動詞では、し・する・いる(居)・なり(為・成)・なる・あり(有・在)・ある・き(来)・くる・される・みる・おもい・おもう・ゆき(行)・ゆく・ゆき・ゆく・できる・より(依)・よる・もち(持)・もつ・かんがえる・やり・やる・おき(於)・おく・つき(=about)・つく・とり・とる(取・執・採・捕・撮)・でる・える(得)・しり・しる・しまい・しまう・をり(居)・をる・わかり・わかる・だし・だす・きき(聞)・きく。つくり・つくる、以上だ。勿論、此れが全てではない。東国方言が入っていないようだし。頻度が多い三十傑という事なのだろう。
君:ほほほ、まずはお孫さんが和語動詞をマスターなさるといいわね。次いで名詞は?
私:ほいきた。こと事、もの者物、わたくし私、ため為、なに・なん何、ひと人、とき時、かれ彼、いま今、ところ所。なか中、ほど程、かた方、われわれ、くに国、まえ前、はなし話、わけ訳、め(三年目等)、ひとり一人・独、こんなところだそうだ。
君:。上代語から今に続く現代語という意味で、奈良時代にこのまま使われていた訳ではないのね。
私:勿論そうだし、昭和のコーパス解析で、新聞・書籍などをコツコツと手作業でお拾いになったのだろう。
君:敢えて漢字表記をしなくても、耳からわかる言葉ばかりね。
私:そうだね。しかも二拍が圧倒的に多い。
君:では、和語にある五つの特色をお示し頂戴な。
私:ほいきた。
★語彙全体としてみると、異なり語数(*)では漢語、延べ使用頻度では和語が優勢である。
★基礎語彙を品詞別に分類してみると名詞では漢語、動詞では和語が優勢である。
★複合語は漢語に多く、和語は単独で用いられることが多い。
★語の表す意味範囲としては和語には抽象概念を表す語(殊に名詞)が少ない。この種の語は漢語に依存している。
★同じ意味内容を表す場合、漢語は文章語、和語は日常語として使われる事が多い。
君:当然と言えば当然、平凡な結論とも言えるわね。
私:言語学が平凡な結論でなくてどうするんだ。それだからこそこの歳でもやっていられるんだよ。今じゃ微積分はまるでだめだな。でもサインの微分がコサインで、コサインの微分がサイン位は直感でわかるけど。
君:お孫さんのために一言、知性の発達は国語が原点。数学を教えるのは後回しにしてね。
私:それは同感だ。ただし、ひとつ・ふたつ、と数を数え始めたところだ。その母親だが、家族で留学した時には三歳だった。私達・両親は長女に一切、英語は教えていない。娘に教えたのは日本語だけだった。歌もね。
君:まさか抽象概念をお教えになったとか。
私:ははは、それはない。三歳に漢字は教えるのは無理。だから抽象概念も教えようがないね。
君:感情表現は?
私:ははは、私ども若夫婦は長女がそれこそ物心つく頃、一歳前から徹底的にやったっけな。良い事をすれば直ぐほめる。悪い事をすれば直ぐ叱る。喜怒哀楽は生まれて直ちにだね。
君:結論が見えてきたわね。
私:子供はまず感情表現に始まり、真っ先に和語を覚え、小学生から漢語を覚える。そして究極の家族愛として最終的にメタ言語を習得する。
君:?お利口な子は小学生で自然にメタを覚えるわよ。家族愛とは直接は関係ないような気がするのよ。
私:恋人同士なら、「あれどう?」「ああ、あれね。いいわね。」で心が通じる。私の場合、メタとは家族でしか通用しない合言葉だよ。つまりは家族には共通の体験、共通の価値観があり、この世の最強の秘密結社。そこで話される秘密の日本語がメタ。我が家では最近は「うさぎ」がメタ名詞になっている。
君:何の事か、わからないわ。
私:「る」をこの名詞に接続すると動詞になる。ラ行五段活用するんだ、ウサギる・ウサギらない。当然ながら促音便、先だっては「ウサギった孫」の事で我が家のラインは大フィーバー。
君:楽しそうな雰囲気は伝わるけれど、それって和語ってるつもりね。「ウサギる」の意味をキチンと漢語って説明して頂戴。
(*)異なり語数(ことなりごすう):あるテキストの中で、同一の単語が何度用いられていてもこれを一語とし、全体で異なる単語がいくつあるかをかぞえた数。これに対するのが延べ使用頻度。英語では 異なり語数=quality、 使用頻度=quantity。日常語ではクオリティーが高い・低いという例文に示される如く、品質の優劣を意味する事が多いが、実は誤法に近い。quality は他者と弁別される最小限の物が幾つ詰まっているかの概念で、異なり語数の概念に近い。漢語文が品質が高く、和語文が品質が劣る事はありません。

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