大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
アクセント核 |
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僕:今夜はアクセントの基本の基本という事で。初等中等教育が 1961-72 だったが、アクセントについて教わった記憶は一切ない。方言に首を突っ込んでいなければ今日の話題も知ることは無かっただろう。 君:前置きはいいから結論からお話ししてね。 僕:ほいきた。日本語は音の上げ下げで同音異義語の意味が決まるピッチアクセント体系である事を昨晩は紹介した。 君:だからアクセント核は下がりめの直前の拍、つまりは山の部分という事ね。 僕:うん。狭義の意味ではあっている。そもそもがカタカナ語なのでどうせ国語学者のどなたかが英語文法からお借りになってお定めになった学術語かな、位に考えて、先ほどはアクセント学の歴史から調べものをした。 君:ところが英文法の翻訳ではなかったと。 僕:その通り。accent nucleus をキーワードにネット検索しても日本人による日本語の資料しか出てこない。つまりはこれはアクセント学の祖・元東京大学名誉教授の故・服部四郎先生の業績のようだね。国語学大辞典の記載も確認した。『アクセントと方言』 明治書院1933年という戦前の書もある。戦後に故・金田一春彦先生を始めとする新進気鋭の国語学者様がたが続々とアクセント研究にのめりこんでお行きになって現在の日本語アクセント学の隆盛がある。 君:だから、あなたは初等中等教育ではアクセントの事を学んでいないと。 僕:そう。ただし、国語学、方言学、言語学の成書でもアクセントの記載は少ないし、第一に判りにくい。今回はそれを一言で説明しようという試みだ。 君:アクセントについて既に知っている入試直前の受験生に予備校特訓ゼミのような雰囲気になってきたわよ。 僕:いや、そうではなくて誰でもわかる内容。また、全ては読み切り。さて服部先生は三重県亀山出身だが、学生時代に日本語にはアクセントがある事に夢中におなりになって、アクセントの東西対立をお調べになった。音の上げ下げの下がり目・アクセント核の名付け親。ところで英語だってアクセントがあるのに、英文法にはアクセント核なるものが無い理由についても僕は先ほど気付いたよ。 君:ほほほ、大発見ね。日本語の高低アクセントと違って英語って強弱アクセントなのよね。・・あっ、わかったわ。 僕:そう。ちょいと考えればわかる事。誰でもわかる。アクセントの事を英語では accentuation という。強のシラブルがアクセントそのもの、つまり accentuation である事は言うまでもない。蛇足ながら英文法でより大切なのが punctuation。論文の場合、一個でも間違えたらアウトのレベル。 君:要は英語ではアクセントは点、ポイントという事なのよね。数珠つなぎの何番目の数珠か、という事。 僕:その通り。英語のアクセントとは数学的には線の中の点の位置なんだ。反対に日本語やトーンアクセント(四声ししやう)の中国語などはウエーブ・波というか、山なんだ。稜線というか。 君:山に急な下りがあれば、それがアクセント核に続く部分、アクセントの滝、というわけね。 僕:正にその通り。山だから一般的には昇りがあって下りがある。核は二つある。つまり上がる部分の拍が「昇り核」で、下がる直前部分の拍は「下げ核」。そしてここがミソ、日本語は一音節に一個の核しかないし、下げ核の位置のみで同音異義語を弁別するという特徴を持つ。つまりはどうでもよい昇り核。昇り核がないと下げ核が出来ないからいやおうなしに出来てしまった昇り核よ哀れ。つまりは大切なのは山頂・滝と言う事。くどくて申し訳ないがひとつしか無い下げ核。アクセントを山に例える人は多いが、アクセントは富士山、あるいはメサ、つまりテーブルマウンテン。乗鞍ではない。ぶふっ。語頭に下げ核があると頭高アクセント。二番目以降にあれば中高で、語尾にあれば尾高。昇り核しかなくて下げ核がないのが平板型。もうひとつ、昇り核の位置だが共通語と東京式アクセントでは頭高以外は二拍目。昇り核の存在を無視していい、というのは日本語の代表・東京式アクセントに限って、という意味だった。このあたりの書き方も今後は慎重を期したいと思う。 君:東京アクセントでも本当に昇り核を無視していいのかしら。 僕:実は、若干の意味はある。 君:具体例を示してね。 僕:例えば船津(ふなつ)高校と岐阜高校、この二つの固有名詞は共に後ろから4番目の音韻「こ」に下げ核がある。高校という一般名詞は平板なのにね。固有名詞になった途端にビビッと下げ核がトップ部分に出現する。そして前方部分だが、船津高校の昇り核は「な」、岐阜高校は「ふ」で固定、複合名詞の場合、前方成分は平板で後方につながり、語全体としては後方成分の最初の拍に下げ核があるという規則が理解できるね。ところがどうだ、単独の名詞、船津、の場合は事情が少し異なってくる。「どこだった?」の問いに対しての答えが「船津。船津高校よ。」という会話の場合だが、船津は一般的には頭高アクセントだろうね。また中高・尾高の何れでもいいかも。ここでわかる事は、三拍品詞は頭高、中高ともに両核は一致するという事。つまりはアクセント核が「ふなつ」のどこかが重要な意味を持つ。もっとも三拍名詞の半数が平板だそうだから、さらりとした言い方、平板の船津もありかもしれない。ところが船津高校の場合は複合名詞につき、必ずだが後方部分の最初の拍「こ」が下げ核になる。 君:要は強調するほど核というものは前なのよね。 僕:その通り。そして強調したい部分に核ができる。複合名詞の後方成分は下げ核がトップに躍り出る。 君:ほほほ、半疑問文「船津?」で答えておけば心理を深読みされる事がないわね。 僕:その通り。更には、・・多いほど心理はわかってもらえやすいし、少ないほど奥ゆかしくなる。それが言葉というもの。 君:文章もそうよ。行間を読む事ね。 僕:おいおい、それじゃ "Read between the lines." 英語の直訳だろ。 君:ほほほ、眼光紙背に徹す、だわね。 おまけ オンライン日本語アクセント辞典(OJAD) - 東京大学 OJAD |
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