ペスト カミュ (2)

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数日前ですが、新潮文庫の「ペスト」を読み終えました。粗筋等についてはネット情報などをどうぞ。ひと言で表せば、数えきれないほどの人々の死がテーマの大変に後味の悪い不条理文学ですが、主人公も私も共に医師である事も手伝って、大変に考えさせられる小説でした。印象についてはとても書ききれないのですが、極力、簡単にお書きしましょう。ペストではなく、皆様が最も知りたい事、コロナ、の話題にすり替えて。

★コロナはいつ収束するのか・・・不明と言わざるを得ませんが、オリンピックが一年延期となったわけですから、なんとしても年内に収束してほしいですね。今後、人類はこのウイルスと数世紀以上にわたるお付き合いが必要になる可能性もあります。既に遺伝子変異が生じ幾つかの亜型が出来た事もわかっています(ここ)。ざっと百種類ほどでしょうか。おそらくワクチンは一年前後の間に完成するかも。ただし分子量の大きなウイルスですから、共通抗原の特定とか、ワクチンといっても難しい仕事でしょう。

★コロナの特効薬は開発されるのか・・・微妙な問題です。ペストは細菌感染症につき抗生物質療法が有効ですが、小説「ペスト」では専ら血清療法とリンパ節の切開が医療の全て、戦後当時の医療としてはそれ以外なかったわけですから、根本的な治療とはなり得ませんが、しかたのないことですね。コロナの場合、ウイルスですから特効薬に過度な期待は禁物です。

★コロナでどうして人が死ぬのか・・・2009年の新型インフルエンザ(H1N1)騒ぎですが、政府は水際作戦を行いましたが、結局は三千万人が罹患しました。コロナ感染大半の患者様が軽い風邪症状か、あるいは無症状なのですが、日本でも既に相当数の不顕性感染があるのではと危惧します。ですからコロナについてはおそらく数万人にひとり、特異体質のかたがサイトカインサージ(サイトカイン放出症候群)を引き起こすために致死的になるのでしょう。間質性肺炎を引き起こしてしまうのです。人類がこのウイルスに対して一切の免疫を持っていなかったから、とも言い換えられましょう。ACE2 receptor 賦活による ARDS 説等、論文は増え続けています。インフルエンザも見方によっては単なる風邪とも言えますが、毎年の如くインフルエンザ脳症等でお亡くなりになる症例があり、どの感染症も時に重症化する例があるとも言い換えらます。第一次世界大戦中の1918年パンデミックではインフルエンザで一億人の死者が出ました。たった102年前、つまりは、ついこの間の事です。さて、どうして小説「ペスト」では血清療法でも死ぬ患者がいたのか、答えは焼け石に水だったからでしょう。ヒントは細胞免疫と液性免疫。

★パンデミックが将来に収束しても、コロナの逆襲はあるのか・・・あるでしょう。数年もたてばワクチンも普及し、患者数は激減し、やがて人々の記憶から2020コロナパンデミックは消え去るでしょう。ただし根絶するのには更なる根気がいるのです。地球60億人のひとりも感染していない状況になれば、一応、収束としてもよいかもしれません。ただし、自然界(こうもりの世界)にコロナは太古から存在し、そして文明との接点がたまたまあると、センザンコウなどという動物がまたまた介在して人類に災禍が降りかかる、数世紀おき、あるいは十数世紀おきに、こんな事が繰り返されるのでしょう。黙々と単調な文章で綴られる小説「ペスト」、多分、読者の皆様は読了するのが苦痛のはず、そんなあなたは(そっと)最後のページだけを書店で立ち読みなさるとよいでしょう。・・ペストが収束したと喜ぶ人々、生き残ってほくそ笑むペスト菌の残党。

★コロナ以外に怖い感染症は無いのか・・・いくらでもありましょう。エイズは未だに日本に蔓延しています。エイズはアフリカ等では未だに深刻な社会問題です。梅毒はじめ、性感染症も最近は増加しているようです。

★感染症と未来永劫に付き合わねばならない人類に明るい未来はあるのか・・・たったひとつだけあかりがあった、とお書きしましょう。天然痘 small pox です。人から人へうつる病気で、つまりは天然痘の患者がこの世からいなくなれば、人類は天然痘の災禍を恐れなくても済みます。1980年5月にWHOは天然痘の世界根絶宣言を行いました。忘れもしません、私が医者になって二年目の事でした。・・ただし生物兵器として天然痘が若し使われたら、人類は破滅です。私はニヒリスト。でも私は純文学好きのヒューマニスト、オートバイ好きのナルシスト、数学好きのサイエンティスト、愛妻家のユーモアリスト。世の男性へ、妻とだけ遊んでおけ。そうすれば病気の心配は無い。ぶふっ(2020/4/12)

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