14 お袋の味と君の味 



「お袋の味と君の味」

おらが炊いた 飯食った
固くて(しん)がありました

おらは知った
なんでもなかった
お袋の味

おらが炊いた
味噌汁吸った

何にも味がありゃしない

おらは知った
心のこもった
お袋の味

おらの作った
食事には

形だけで味がない

今日も卵に梅干しだ
パンに牛乳食べたけど

おらは 
だんだん痩せてった

おらが飯を炊いたって
何か たんねえものがある

厳しかった お袋の味
甘く優しい お袋の味

今じゃ美味しいカレー味
おらにゃ
君の味がある



「俺の親父」

親父
俺の親父

悲しいときに呼んでみる

親父が
俺の親父が

嬉しいときに呼んでみる

親父に
俺の親父に
何か話をして見たくって
親父と
俺の親父と

一緒に歩いて見たくって

親父の
俺の親父の
面影を写真に求めて

親父よ
俺の親父よ
どうすりゃいいのと相談し

親父へ
俺の親父へ
そっと、教えて上げたい人が

だが、親父
何も聞いちゃくれない
何も話しちゃくれない

だけど、親父は
いつも何処かで笑っている

そんな、優しい親父
俺の心の中の親父さん



「故 郷」

いかにおわせや
秋の空
虫の声に故郷を見る

手紙書き
故郷(ふるさと)恋し
人恋し

又も見送るポケズレ便り

思いても
済まぬ 済まぬと書くばかり
これとおもわる妙手(みょうしゅ)(あん)なし

言うなかれ
給料は参万四千 幾万と
家賃払って壱萬五千残



「故里の母」

母さん
無事と判かりしも
胸の()くような
思いする
匂いの
する言葉

やはり
故郷いいところ
昔と
少しも変わりゃせぬ

母さん
元気で待っていておくれ
一緒に住める
その日まで



「母の叫び」

母は叫ぶ
莚打(むしろう)ち機に向かって

子どものために
子どものために
子どもさえ大きく なればと

ツバメの子どもはピーピー泣いた

あれから十余年
母の願いはかなったろうか

老いたる母は叫ぶ
子どもさえ幸せなら
好きな人と一緒になって幸せになりなさい

それで母はうれしいと
ひとり寂しく暮らしている

なおも
子どもの幸せ願いつ
あれから
十余年過ぎたのに

ツバメも大きくなったのに
まだ
母親に苦労賭けている



「母への手紙」

我、記す
思い出しては故郷へ
何時も済まぬと書く便り

母の安否(あんぴ)を祈りつつ
記す便りのその中に
少し匂わす愛の路

優しい母には分かるでしょう

この前
写真も送ったから

無知な私も
愛と言う字を知りました

それでは元気に
文止めて今日も明日もと
無事を祈る



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