15 一人住まいのアパートで



「つまらない日曜日」

朝露のあるすがすがしい
夢を見ていた

今日は久しぶりの日曜日
一人だけの日曜日
きれいな服も着ました
きれいに靴も磨きました
きれいに(ひげ)()りました
小鳥の巣みたいな髪も
きれいにしました

だけど
今日の僕は
心の中が空っぽで
当てもなく道を歩くだけ

ふらり入ったパチンコも
通りのウインドガラスにも
君の面影増すばかり

だから一人で歩いた
どこかで君に逢えそうで
たまらなく寂しい思いがしたから

一人でじっとしていられなくて
だから一人で歩いた

どこかに寂しさ捨てるため
雲とともに歩いた日曜日

やっぱり好きです 愛している



「駄々っ子の見送り」

気をつけてね

ほかに何もいえない

知らない土地へ行くというのに
もっと言葉はあるのに
いつもはもっと言えるのに

今日はどんなことがあっても
見送りしたかった
君には通じるはず

もっと別の言葉で見送りしたかったことを
たったの二日間というのに
無性に寂しさを感じる

たぶんこの二日間は
気の抜けたビールのようだろう
君のいないときの僕ほど

弱虫で泣き虫ったらありゃしない
まるで
駄々っ子のよう

何時からこうなったのだろう
こんな僕を君が知ったら
さぞ腹を(かか)えて笑うだろう

それとも
頼りなさに怒るだろうか
こんな僕を見たら

情けなく思うことだろう
こんな僕を・・。



「ベタ()れのあいつ」

呼び出す電話に耳を寄せりゃ
聞いた事の有るような
ハスキーな声が飛んでくる

いきなり怒ってやりたいが
優しい心の君だから
今度だけはと又許す

いつしか時間も長くなり
とうとう一時間の長電話
これじゃー電話局が泣きますよ

電話口じゃ僕等が泣いている
永い電話も終ってみれば
自由にならず泣けて来る

腹の虫まで鳴いてくる
時には自分を苦しめ
責める時もある

苦いお酒を飲んで
挙句が苦しくて
単純なやつじゃ
馬鹿なやつだと
笑ってくれ

笑え 馬鹿なやつだと

「今宵の君は」

寝つきが悪い

なんとも無いのに
昨日よりも頭が重い

何故(なぜ)
熱も無いのに
床を蹴り起きる
寝付かれぬ今宵(こよい)

君の書いた手紙を見て
久しぶりに 君と会う
明日を思うと
心が弾む

君の姿が目に浮かび
寝付かれぬ
冷やした梨で
腹を(ふく)らまし

ひたすら明日に
思いを走らす
そのうち

優しい君の膝枕(ひざまくら)で眠りにつく
何時しかそんな

幸せの夢を見ています



「一人住まいのアパートで」

狭い小さなアパートで
いつも同じ場所に居て
一人ぽつんとたたずむとき
あらゆることを思い出す

幼き頃の思い出を
君と歩いた思い出を
今日起こった出来事を

何故かいろいろおもっていた
故郷の母は元気だろうか
この時間は何をしているだろう

君と栄で入った喫茶店
昆布茶が出るまで話し込み
時間を忘れていた二人

心のそこから笑う君
ちょっぴり怒ったその顔を
思い出す

一人残した母を思い
楽しかった君との一日を思う
こんなに楽しいはずなのに
わびしい思いが先走る

だけど
どうにも成らない僕でした

真剣でまじめに
君の事を考えていた
アパートでは

昨日と同じ音を出し
時計はコチコチ刻んでいる



「僕の人生行路」

今の僕に何があろう
捨て鉢の 心の中に
何もあろうはずがない

時には楽しく時には物悲しく
その時を
気まぐれに生き続けていく

人は笑うかもしれない
あまりにも悲しみが多すぎる
心の定まらない人生行路

こんな僕を君は嫌うだろう
そして苦しむと分かっていながら
君を求める

君は益々こんな僕を嫌いになり
私のそばを静かに去っていくだろう

またひとつ
捨て鉢の 思いを走らせ
定められた路を歩くかのように
明日のない路を

今日も一人歴史を刻んでいく
定められた
これが僕の人生行路



「涙は語る」

君を困らせたとき
君の頬を伝う涙の玉が
僕の心を打ち砕く

涙ほど美しいものはない
宝石も金も涙の玉ほど
美しいとは思わない
一粒の涙

君の中にいて
暖かくかくもはかなくも消えていく
涙は 愛を伝え 悲しみを
悔しさを語りかける
そして、
消えて行く

わめきもふらず恨みもせず
美しい光をそっと見せ
寸時の語らいをしてくれた
君の涙

可愛い瞳に水滴を作り
ぽつんと落ちて行った涙君
ありがとう・・・ごめんね



「心の人というのは」

この世に 数ある女性で
これほどまで 僕の心を知り
これほどまで 僕のことを案じてくれる
これほどまで 楽しくさせる
これほどまで 可愛く思う
そんな女性は
現れることは 無いと思う

だから
君を思うと切なく 言葉にならない
互いに 喧嘩(けんか)しようと
微笑(ほほえ)みあおうと
これ程まで
僕と思いをひとつに 出来る人はいない

喧嘩すれば 僕が悪かったと
いつも会いよれる 言葉を捜している
つつましく 優しい君の心は
清く暖かい情熱で
僕の心を 和らげてくれる
そんな君が 好きだ

だから 何を差し置いても
君の願いがあれば 聞いてあげたい
君の言う もう少し落ち着いて
はいはい そうします
はいは一回でいいのよ

母と子供のような
君といると 心が浮き浮きして
しょうがないのです



「私の常直」

誰が好んで常直(じょうちょく)
いまだ見ぬ幸せ見つめて勤めます

誰が好んで常直に
知らず済まさる事までも

みんな知っては悩んでいる
誰が好んで常直に

若さに身をもてあまし
こんなに悲しみこらえて
誰が好んで常直に

目的があれば我慢のしどころと
苦しみも君の笑顔で忘れ去る



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