8 一日の始まり



「一日の始まり」


窓を開ける
さわやかな光と
建物の長い影が目に美しい
地面にちりばめた
小さな宝石を
一面に照らしている
屋根の頂に大きく
輝く太陽に
目を細めながら
暑い一日の始まりを
さわやかな心で向かえる
小鳥さんおはよう
昇り始めた
朝日に向かって
飛んでゆく

太陽は昇る
影もない
地面の宝石は
灼熱(しゃくねつ)の地面へ
変わり果てていく
今までささやいていた
風さへも
どこかへ行ってしまうだろう
やがて街を
草木を 大地を容赦(ようしゃ)なく
焼き尽くし始めるに違いない
今日もまた暑い
一日が始まる



「青い空」

青い空
君をじっと見ていると
君のとりこにされてしまう
君は何処まで続くの?
広い空間をぬって
太陽の光に答えながら
何処までも続いている
青い空間
だけど悪い奴がいて
この空間を俺の前で
(さえぎ)る奴が居る
雨を降らしたり
時には雪を降らしては
青い空間と俺を離そうとする
そんな奴 永続きはしない
俺は君を信じている
君も俺を信じてくれるだろう
そうだよ
青い空間は
そんな悪い奴の言う事する事に
決して(だま)されない
太陽の光りを何処までも通し
俺の住む都にも
何時も光を運んでくれる青い空間
俺の信じる青い空間
俺を引き付ける美しい青い空



「夜霧の雨」

夜霧の雨は
音こそないが
柳に光る夜の()
時には冷たく快く
街のネオンやビルの林を
ぼかして行く
かなわぬ恋に
思いを走らせ
夜霧の雨が涙を誘う
流れる涙は
誰のため
夜霧の雨は答えない
世間の辛さか人情か
暗い空に叫んでみても
無常にも
夜霧の雨は降り注ぐ
泣け
誰にとも泣け
気が晴れるまで
そして
夜霧の雨がやんだなら
歩を進めよ
誰のためにか
世界は(めぐ)
また辛い
明日があり
夜がくる
知ってか知らず
夜霧の雨は
僕の体に
降り注ぐ



「月が光を放つ」

月を人が歩いたって?
月が (ほこり)だらけの 山だって?
世の人が
いかに、そう(ほの)めかそうと
月よ お前は やはり美しい
昔と変わらぬ光を放ち
何もないかのように
東から顔を出しては西へ行く
幾万年も昔から何時までも
月よ
世の人が、いかに寂しがろうと
君は、顔を曇らさないでおくれ
雲から顔を出しては
いつもの様に
美しい光を放ちながら
笑っておくれ
私は信じる
目立たなくても静かに
光を放ち
話しかけてくれる君を
月よ
そんな君が好きだから
死ぬまで語り明かしたい



「月とネオン」

スモッグの空のお月様
多きい顔を見せたけど
誰かに恥ずかしいのだろうか
はっきり顔を見せないで
そこにそっといる
地上ではネオンが忙しそうに
青いネオンは空まで青く
赤いネオンは空まで赤く
低い空を焦がしている
あのネオンの近くには
君のお宿がありました
今頃君は何している
明日の楽しい夢を見ている
それとも何か別の夢
恋しい人とのデートの夢
僕は暗い空の下
お月様も悲しそうに
哀れみのまなざしで
見ている
そんな顔で見ないでください
夜のネオンまで
そんなに慰めないでおくれ
お月様は暗いスモッグの中
町のネオンは青く赤く輝き続ける
強くもっと強くありたいと
いつか僕は君の名前を
呼んでいた



「白く深い秋の空」

このまま変わりなき世であれ
今は幸せを堪能(たんのう)する
白い糸を引くような高い雲と
深く思わせる青い空の色が
薄く溶け合ってすばらしい
野原のススキにささやく秋風も
この世に悪はないかのように
この世の太平を語ろうとする
この世に(せい)のみ
存在するかのように
だが
私は未知の世界を
歩かなければならない
遠い路かもしれないが
この青空のように
溶け合って共に手と手を取り合って
喜びに泣ける日まで
私は歩かなければいけない
死すら遠ざかり
私を寄せ付けはしないだろう
その日まで



「四季の回転」


そこに住み
山や川を愛し 草や木を愛し
いつも見慣れた 風景を愛している
手は土にまみれ
足は土中に埋まりながらも
住み慣れた土地を愛して
小さな小鳥たちと語り合う
秋が過ぎ去り
厳しい冬が来るというのに
移り変わる四季とともに生きている
草を焼く煙は
何も感じないかのように
ゆっくりゆらゆらのんびりと
秋の香りを乗せて
深く空へ舞い上げていく
私は
街に居て
安らぎもなく
せかせかと月日が
すぎていく




目次に戻る