万事屋事件簿
1.
「銀ちゃんが風邪ひいたって?」
「そうなんですよ」
「馬鹿は風邪ひかないって、あれ嘘だったんだ」
「でも、夏風邪は馬鹿がひくって言いますよね」
「普段からだらしない生活してるから、こんなことになるアルヨ」
「どうせ、朝まで飲んで、お腹出して寝てたんじゃないの?」
「ありえますね、それ」
「見事なまでのマダオっぷりネ」
「マダオ?」
「まるでダメな男、略してマダオ。アルヨ」
「ああ、なるほど」
「確かにマダオだね、銀さんは」
「テメーら何を好き勝手言ってんだコノヤロー」
「あ。銀ちゃん」
「起きてたんですか? 大人しく寝ていてくださいよ」
「馬鹿は馬鹿なりに、風邪を治す努力くらいはすべきネ」
「さっきから馬鹿だのマダオだの、散々言いやがって。
これはだな、仕事のせいで―――げほげほっ」
「ああもう。だから寝てなくちゃ駄目だよ。マダオ銀ちゃんは」
「そうですよ。
これ以上馬鹿になったらどうするんですか。マダオなのに」
「マダオで馬鹿じゃ、救いようが無いアルヨ」
「なに? なんですか!?
マダオ決定? マダオ決定しちゃってんの俺!!?」
2.
「風邪ひいたマダオな銀ちゃんのために、お粥作ってあげましたよ。
さあ! 私に惜しみなき感謝と賛辞をしなさい!!」
「なに一人でテンション上げてんだコノヤロー」
「それが第一声?
感謝と賛辞どころか、罵倒されてる気分なんですけど?」
「よかったじゃん。お前の判断力は正常って証拠だよ」
「なんだかものすごく馬鹿にされてる気分なんだけど。
いらないの、お粥? いらないんだ。
じゃあ飢えて死んじゃえ。私しーらないっ!」
「ガキですかお前は。
治ったらいくらでもそのテンションに付き合ってやっから。
今は素直にそのお粥を銀サンに食べさせてくれることを要求します」
「私が食べさせるの?」
「俺、病人よ?」
「……別にいいけど。
―――はい。あ〜ん」
「お、いーねいーね。このシチュエーション。
あ〜ん―――ぐげぁっ、ぺっぺっ!
てめー、コレなに入れた!? 毒!? 毒でも盛りましたかコノヤロー!!」
「ひどっ!
ちゃんと普通に作ったよ! 昆布で出汁とって―――」
「オイオイ。ウチの台所には、出汁昆布なんて上等なモンは無かったはず……」
「あ、うん。だから神楽ちゃんが、これ使えって酢昆布くれて」
「なにその料理センス!
お前のセンスはどこのエロゲーのヒロインレベル!!?」
3.
「誕生日おめでとうアル!」
「これ、僕と神楽ちゃんからです。プレゼント」
「わあ! ありがとう、新八くん。神楽ちゃん!」
「じゃ、俺からはこれな」
「ケーキですか?」
「銀ちゃん、自分が食べたいから作っただけじゃないアルか?」
「えー? 無いのー? ケチだね、銀ちゃんは」
「バッカ。
なんで俺が、お前に金を費やさなきゃなんねーの。
むしろこっちが恵んでほしいくらいだよ」
「そういえばお登勢さんがさっき、怒ってたよ?
先月分から家賃を滞納されてるって」
「げ。マジですか」
「私、悪くないネ。悪いのは銀ちゃんネ」
「金、金って、意地汚ェババァだな。
人間、真に大事なものは金より心だよ、心。
つーわけだ。用意はしてなくともプレゼントはあるんだよ」
「え? ケーキじゃなくて、他に?」
「他にだよ。大事なプレゼントがな。
――この先一生、俺と同じ苗字を使ってくれね」
「銀ちゃんのプレゼントなんて、期待するだけ損するネ。
それより早くケーキ食べるアルヨ!」
「4等分でいいですかね、これ」
「あ、でも、定春の分もいるんじゃないかな?
――あれ? 銀ちゃん、どうかした? 頭なんか抱えちゃって」
「抱えさせてんのはテメーらだろ!!
何コレ! イジメ!? せっかくの決め台詞なのに、誰も聞いてねーよ!
新手のイジメですかコノヤロー!!!」
4.
「銀ちゃーん。お邪魔しまーす」
「おーう」
「寒いよ〜。外、雪降ってきてるし。初雪だね」
「積もるアルか!?」
「うーん。どうだろ。
初雪だし、積もる前に溶けちゃうかな」
「にしても寒ぃな。何度だよ、今」
「この冬の最低気温を更新したらしいですからね。相当低いはずですよ」
「マジでか。オイ、ちょっとこっち来い」
「え? なぁに、銀ちゃん―――きゃあっ!」
「おー、さすが。人間カイロは最高だね」
「ぎ、銀ちゃん……!」
「アンタ、それセクハラですよ……」
「銀ちゃんだけズルいネ! 私も人間カイロ欲しいアルヨ!」
「てめーは新八で我慢しとけ」
「イヤネ! 私もそっちがいいアル!」
「これは俺の。先着順だ、諦めろ」
「……って言うか、私の意志は?」
「諦めた方がいいですよ……」
5.
「『貞操問答』始まるアルヨー」
「え? あ、ほんとだ!!
神楽ちゃん、チャンネルチャンネル!!」
「私、昨日見逃したアルヨ。
女郎蜘蛛はどうなったアルか?」
「それがさー。聞いてよ!
黒バンビ最悪だって! もういいよ、私は貞操運転手一筋に行くから! 撃たれてたけど」
「それじゃわからないネ。
何がどうなって黒バンビ最悪アルか。女郎蜘蛛との駆け落ちはどうなったネ?」
「いや、メデューサ様がね」
「オイ。銀サン放ったらかしで何見てんの、お前。
つーか、人の家まで来てテレビ? 何? 何がしたいのお前は?
放置プレイか? 銀サン放置プレイして楽しんでるんですかコノヤロー」
「銀ちゃん、うるさいネ。今いいとこアル」
「だって。『貞操問答』面白いんだよ?
一回だって見逃したくないよ。
銀ちゃんだって、結野アナのブラック星座占いは欠かさず見てるじゃない。あれと同じだよ」
「同じじゃねェよ。
少なくとも俺は放置プレイなんかしねー」
「……銀ちゃん。
あのね? 所詮、ドラマだよ? テレビなんだよ?
最終的には、現実の銀ちゃんが一番に決まってるじゃない」
「え、マジ!?」
「マジだよ。
私にとっての一番は、銀ちゃ―――」
「あ。貞操運転手が出てきたネ! 生きてたアルヨ!!」
「ほんと!? きゃあ! ほんとに生きてた!!
やぁんっ、かっこいいかっこいいっ! 白服も似合ってたけど、黒服もかっこいい〜っ!!」
「……アレ?
なんかおかしくね? なんかおかしくね?」
(昼ドラ「貞操問答」ネタですみません…貞操運転手・杉山が好きです。
ちなみに、女郎蜘蛛=ヒロイン、黒バンビ=その相手、メデューサ=黒バンビの奥様、となります)
6.
「お邪魔しま〜す。
みんな、おせち料理持ってきたよー!」
「すげーじゃん。三段重ねかよ」
「すみません。わざわざ」
「気にしないでよ、新八くん。私、こういうの作るの好きだから」
「開けていいアルか!?」
「ちょっと待っててね。その前に……
はい、新八くん、神楽ちゃん。お年玉!」
「え!? い、いいんですか!!?」
「キャッホォォウ!!
何だか知らないけど大好きネ! ありがとうアル!!」
「オイオイ。俺には? 銀サンの分は?」
「なんで銀ちゃんにあげなきゃならないの?」
「アンタ、いい年してお年玉欲しいんですか」
「銀ちゃんには渡さないアルネ! 何だか知らないけど」
「知らねェのに喜んでんじゃねーよ。
別に俺、金が欲しいって言ってるんじゃねェよ。イヤ、金も欲しいけど」
「どっちですか、それ」
「金も欲しいが愛も欲しい。そんな年頃なんだよ、俺は」
「……銀ちゃん、もしかして淋しい人生送ってるの?
なんかそんな哀愁が漂う台詞だよ、今の」
「うるせー。
そう思うなら愛をくださいお願いします」
「愛なら私がたっぷりやってるネ。トイレットペーパーの次くらいに」
「何ソレ!? 俺の扱い、トイレットペーパー以下!!?」
「トイレの紙より役に立たないってことじゃないですか?」
「オイオイ、誰が養ってやってると思ってんの。
この家が誰の物だかわかってんのかよ、お前らは」
「お登勢さんの家ですよ」
「銀ちゃんは家賃を滞納してる半居候」
「……スミマセン。突き刺さるように痛いんですけど、その言葉」
「現実に打ちひしがれてるネ、この天パー」
「正月から何でこんな辛気臭くなってるんだろう」
「そうだね。せっかくのお正月なんだから――銀ちゃん、ちょっといい?」
「よくねェよ。ちっともよくね――っ!!?」
「――はい。お年玉の愛。これで勘弁してね?」
「勘弁も何も! コレだよコレ! 最高のお年玉だよ!!」
「ズルいネ! 私もほっぺにチューが欲しいアル!!」
「あ、そう? じゃあ神楽ちゃんにも――」
「ダメだダメだ!
これは希少だから価値があんだよ! ほっぺにチューは俺だけなの、俺だけ!」
「ケチケチしないネ。
心の狭い大人なんて、見苦しいアルヨ」
「心狭くていいよ、今は。
俺だけのチューになるなら、心狭くても無問題なんだよ、世の中!」
「……無問題だと思いますか?」
「んー……やっぱり止めておけば良かったかも」
7.
「おじゃましま〜す!
――あれ? 誰もいない? 定春だけ?
不用心だなぁ。玄関に鍵もかけないで。ねぇ、定春?」
「ワン」
「それにしても、いつ見てもおっきいね、定春は。
その上、かわいいし」
「ワン」
「よーし、よしよし。
あ〜、定春の背中、なんか触り心地いい〜。気持ちい〜。
神楽ちゃんのお気に入りじゃなかったら、私が飼いたいくらいだよ」
「ワン」
「定春って、人の言葉がわかるみたいに相槌打ってくれるよね。
いいなぁ。もう大好き。定春、大好き〜〜!!」
「ワン!」
「ワンじゃねーよ、定春。
人の女を誑かしてんじゃありません」
「あ、銀ちゃん。いたの」
「いたの。いたんです。
それよりお前、何をケダモノに誑かされちゃってんですかコノヤロー」
「銀ちゃんだってケダモノじゃないですかコノヤロー」
「それはアレだよアレ。
お前、男はみんなケダモノなんだよ。そういうもんなんだよ」
「聞いた、定春?
認めたよ。あの男、自分が定春と同レベルだって認めたよ」
「ワン!」
「あ、そうだよね。
定春と一緒にしたら駄目だよね。定春がかわいそう」
「イヤ、お前、なに定春と意思疎通しちゃってんの。
それより俺と意思疎通しようよ。銀サンと意思の疎通を図ろうよ」
「って、その手はナンデスカ」
「男と女が意思の疎通を図るっつったら、コレしかねェじゃん」
「まだ昼間でしょう!? 銀ちゃんのスケベ! 変態! 助けて定春〜!!」
「あ、コラ! なに逃げて――ってェっ!!?
いてっ、痛ェっ!! こら定春! 噛むんじゃね…だっ、いだだだっ!!!!」
「定春〜、ありがと〜! 大好き〜〜!!」
「って、オイ! 助けろ!
銀サン、マジでヤバいから! 助けてくださいコノヤロー!!!」
8.
「銀ちゃん、ちょっといい?」
「んー」
「……うん。人の話聞く時は、その相手を見ようよ」
「大丈夫大丈夫。銀サン、器用だから。テクニシャンだから」
「そういう問題じゃないし、銀ちゃんはそこまでテクニシャンってわけでもないような」
「マジでか」
「……ねぇ。だからこっち向いてよ」
「ちょっと待ってろ。今いいとこだから」
「そんなに結野アナが好き?」
「おう」
「……私よりも?」
「イヤ。それはお前、別問題だから。別次元の話だから。な?」
「な? じゃなくって……もういいよ。そのまま聞いてていいから」
「うんうん。ちゃんと聞いてやっから心配すんな」
「そう? じゃあ、新八くんとデートしてくるから」
「うんうん…………え?」
「お夕飯食べてくるから、神楽ちゃんと二人分、自分たちで作ってね。それだけ」
「……え? イヤあの、ナンデスカ? それ何の冗談? 冗談だよな? な?」
「銀ちゃんが悪いんだもん。じゃ、行ってくるから」
「なに堂々と浮気宣言しちゃってんのォォォ!!?
ダメだよダメ! お前は俺ので、俺もお前のだから! 一筋だから!!
だから浮気なんかすんじゃねェよ!!!」
「……だったら銀ちゃんも、結野アナばっかじゃなくて、ちゃんと私のこと見て話聞いてよ」
「え、なに? もしかしてヤキモチ? ヤキモチだったりしたの? いやァ、俺って果報者―――」
「うん。じゃあ新八くんとデートしてくるね」
「って、待て待て! ダメっつったろ!!
俺が悪かったからデートなら銀サンとしよう! な? な?」
9.
「銀ちゃんって、それだけ甘いもの食べててよく太らないよね」
「普段の食生活が質素だからじゃね? あと、適度な運動」
「ふぅん」
「『ふぅん』って、何そのあっさりした相槌。
適度な運動の中身とか聞かねーの? 銀サンと会話のキャッチボールしねーの?」
「だって。どうせセクハラ発言が返ってくるだけだと思ったから」
「へぇ。なに、お前、セクハラ的なこと想像したワケ? セクハラなのはお前の思考じゃね?」
「ゔ……だ、だって。銀ちゃんの発言って、いっつもセクハラまがいなんだもん……」
「セクハラは受け手の問題なんだよ。
んな過剰反応してたら、そのうち男は存在だけでセクハラになっちまうだろーが」
「銀ちゃんは存在だけで間違いなくセクハラじゃないの?」
「マジでか」
「マジだよ。だから銀ちゃんも、もうちょっと下ネタとか控えて――」
「そーかそーか。
んじゃ、期待には応えてやらねェとな?」
「え? ちょ、ちょっと、銀ちゃん!? 何して――っ!!?」
「決まってんじゃん。ナニだよ。
セクハラ的思考の期待には、ばっちり応えてやんねェとなァ?」
「期待してないっ!
セクハラ的思考もしてないからぁっ!!!」
10.
「銀ちゃんに質問。
私のためなら、銅の剣一本で魔王に戦いを挑める?」
「は? 魔王?」
「そう。魔王。エスターク的なヤツ」
「お前なに言ってんの。そんなゲームの話してないでさ」
「いいから! 答えてよ!!」
「……イヤ、やっぱ無理だわ。
いくらノリノリの時でも、銅の剣一本じゃ無理だって。
メタルキングの剣とか、せめて奇跡の剣くれぇ装備させてもらわねーと」
「そうなの?
じゃあ私たち、これで終わりだね」
「……え? イヤ、お前マジでなに言ってんの」
「だって私! 私のためなら銅の剣一本でだって魔王に挑めるってくらいの人じゃなきゃイヤだもん!
銀ちゃんなんか、途中でポッと湧いて出たフローラとかいう知らない人と結婚してればいいんだぁぁっ!!!」
「ちょっ、オイ!!? なにビアンカ気取ってんの!!?
わかった! わかったから! 銀サン、お前のためなら銅の剣一本で魔王と戦うから!!」
「え、ほんと?
じゃあ、素手で暴れ牛100頭と戦ってくれたりもするんだね?」
「……ハイ?」
「戦ってくれないの!?
やっぱり銀ちゃんの愛なんてそんな程度のもの―――」
「戦う! 戦うっつってんだよ!!
だからそんなことで俺の愛を疑うんじゃねーよ!!!」
「―――完璧に振り回されてるよね、銀さん」
「男は女に振り回されてナンボの生き物アルヨ」
「マジでか!!?」
(Vジャンプに載ってたドラクエ5ネタに、「きみのためなら死ねる」ネタを加味してみました。
まぁドラクエ5は、途中で放棄したワケなんですが(ヲイ))
11.
「銀ちゃん。いる?」
「お、どうした?」
「借金取立てに来たんだけど」
「……は?」
「だから、借金。あるんでしょう?」
「……イヤイヤ。なに言っちゃってんの、お前。俺が借金なんか作るわけ―――」
「お登勢さんに頼まれたの。代わりに取り立ててくれって」
「……あのババア!!!」
「さすがお登勢さん。銀さんの弱点を容赦なく突いてきてるよ」
「銀ちゃんの性格よくわかってるアルネ」
「借金の残り90万、耳を揃えてきっちり払ってもらえる?」
「……あのよ。もし、払わねェ、って言ったら……?」
「私、借金のある男の人とは付き合いたくない―――」
「返すから! 今すぐ返すから!! だから別れないで銀サン一生のお願い!!」
「みっともない姿アル」
「ま、まぁ、これで借金生活から脱出できるんだし……」
「それにしても、100万円の借金なんて、どうやって作ったの?」
「家賃滞納と食費らしいですよ。お登勢さんが言うには」
「銀ちゃん、金銭管理もグダグダアルから」
「テメっ神楽! 食費は確実にテメーの胃袋が飲み込んでんだろーがァァァ!!」
「……やっぱり考え直した方がいいのかな、私。色々と」
「え、ちょっ、待っ!
何を考え直すつもりだ!? 何を考え直すつもりですかお嬢さん!!?」
(元ネタはDS万事屋大騒動、だったはず…)
12.
「はい。新八くん、神楽ちゃん。おみやげ」
「あ、スミマセン。いつもありがとうございます」
「キャッホゥゥゥ!! なにアルか!? 今日は何アルか!!?」
「今日はねー。タコせんべいだよ。結構おいしかったんだよ、これ」
「……で? 俺には?」
「え? 銀ちゃん、欲しかったの?」
「『え?』じゃねーよ!! 普通、二人に買ってきたら俺にも何かあるだろ!!?」
「ところで、今回はどこに行ってきたんですか?」
「職場の慰安旅行でね。日帰り温泉旅行だったの」
「無視!? 俺のコト無視ですかコノヤロー」
「温泉入ってきたアルか。言われてみれば、いつもより肌すべすべネ!
思わず触りたくなるアルヨ!!」
「そ、そう?」
「神楽ちゃん……微妙にオヤジ臭いよ、その言い方は」
「黙るネ、このメガネ。すべすべお肌は女の夢アル。憧れて何が悪いアルか」
「違うぞー、神楽。
すべすべお肌は男のロマンってヤツだよ。な?」
「え、ちょっ、銀ちゃんっ!!?」
「要するに、だ。
俺へのみやげは、温泉入ってすべすべお肌になった自分自身、ってコトでファイナルアンサーだろ。な?」
「え、違っ、えっ、なんで!? どうしてそうなるのっ!?
うそっ、ちょっ、た、助けてっ、新八くんっ、神楽ちゃん〜〜っ!!!」
「いいかオメーら。邪魔すんじゃねーぞ。タコせんべい食いながら江戸一周でもしてこい」
「ご、ごめんってば! 今度はちゃんとおみやげ買ってくるから!!」
「イヤイヤ。みやげならお前自身で十分だって。腹一杯になるって」
「ならないよ! そんなのならないから!!
だからごめんって言ってるじゃない。銀ちゃん〜〜〜!!!」
13.
「お前、人の家まで来て何やってんの?」
「職場に提出しなきゃなんない書類書いてる」
「イヤ。俺が言いたいのはそこじゃなくてさ。
それはわざわざ恋人の家に来てまで書くものなのかってことで」
「でも、他に書く暇無いし」
「家に帰ってからでいいだろ」
「帰ったら家事だけで終わっちゃうし」
「なら早く帰るとか」
「じゃあ銀ちゃん。今日はもう帰ってもいい?」
「全身全霊をかけて拒絶すっぞ」
「ほら。じゃあやっぱり、ここで書くしかないでしょ?」
「……ハイ」
「……それに私だって、少しでも長く銀ちゃんといたいし」
「あ? 何か言ったか?」
「え、あ、ううん。何も」
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