愛情度数の計り方
「銀ちゃーん。お腹空いたー」
……お前。それが朝一番に恋人を訪ねてきた女の台詞か?
その前に俺の血圧くらい把握しよう。俺が低血圧だってことくらい知ってっだろ? 今まで何度一緒に朝を迎えてると思ってんだ。学習能力あるだろ?
「もう8時だよ? 世間は大して明るくもない一日への一歩をイヤでも踏み出してるんだよ? だからイヤでも起きる!」
俺は世間に流されねェ男なんだよ。他人に合わせる必要なんか無ェだろ。
男にはなァ。貫かなきゃなんねェ己の志ってモンが誰にでも一つはあるんだよ。
だからまだ寝かせろ。銀サン一生のお願い。
「じゃあ私の一生のお願い。今すぐ起きて私のために美味しいデザート作って?」
そんな低レベルなことに「一生のお願い」使ってんじゃねーよ。もっと前向きな事に使え。「結婚してください」とかよォ。それなら喜んで聞いちゃうよ俺は。
ってオイィィィ!? 問答無用!? 問答無用で強制連行ですか、この子は!!?
いつの間に成人男子一人引きずるだけの体力と腕力身につけたんですかちゃん!!?
「新八くん。ご飯の用意代わるよ。神楽ちゃん起こしてきてくれる? 私じゃ起きてくれないから」
「いいですけど……それは?」
「あ、これ? 気にしなくていい物体だから。だから新八くんも気にしないで」
人の事を「それ」だの「これ」だの言ってんじゃねーよ。しかも物扱いしやがって。
つーかよォ。仮にも恋人なら気にしよう。四六時中気にしよう。俺だってのことは朝から晩まで、更には夢の中でだって気にしてんだぞ。
「キモいよ、それ」
……マジでか。
イヤ、俺としてはにそれだけ想ってもらいたいんだけどな。
何この温度差。もしかして別離の危機!? オイオイ、マジ? 俺の人生最大のピンチじゃね?
「私は量より質なの。薄っぺらい愛情垂れ流しにしてたって、真実味が無いじゃない」
あー。了解。つまりお前は俺に対して、濃い愛情をたっぷりと注いでくれるワケね。そう言いたいワケね。
「うん。だから銀ちゃんも、愛情たっぷりのデザートを作ってくれれば―――ひゃうっ!!?」
じゃ、今すぐにでもその濃い愛情とやらを確認させてもらいましょーか。
心配すんな。俺もたっぷりと返してやっから。俺のやり方で。
「ちょっ、銀ちゃんっ!? 何っ! 何するのっ!? これからご飯なんだよっ!!?」
朝飯よりも、の愛情確認する方が大事だっての。
どうせ食うなら、の愛情こもったメシも捨て難ェけど、そのものをいただいちゃうってのもアリだろ。
「有りじゃないから! 却下だから!! って新八くんっ!! 溜息ついてないで助けてぇぇっ!!!」
甘ェよ。
何人たりとも、今の俺を止めることはできねェよ。
ここまで来たら諦めろ。
そもそもは、俺を無理矢理起こそうとしたが悪いんだからよ。
だから銀サン、思わずお前の愛情疑っちゃったじゃん。
まァ、せっかくだ。
温度差無くなるまで、抱き合おうや。
<終>
珍しく、休日の朝に目が覚めたので、つらつらと書いてみました。
流し読みしてスルーしておいてください。そんな話です。
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