A Christmas Carol
クリスマス。猫も杓子もクリスマス。
赤と緑と電飾に彩られた町を歩きながら、はそんな事を思う。
日本人なら正月だけ盛り上がってろという思いと、祭り事ならば何だって構わず祝いたがる日本人気質に呆れを通り越して感心する思いと。
複雑な思いを抱えては浮足だった町並みを早足で通り抜けていく。
面白くない、と思う。
それが八つ当たり以外の何物でもないとわかっていても尚、いっそ富士山でも噴火して皆クリスマスどころではなくなってしまえばいいと。そんな事まで考えてしまう。
理由は単純明快。喧嘩したのだ。恋人と。
原因が何だったのか、最早覚えていない。分かるのは、これ以上ないほどに二人の関係をこじらせてしまったことくらいだ。
おかげで今年のクリスマスは独りだ。街中が浮かれているというのに、は淋しく独り。これで面白い訳がない。
ならば謝ってしまえばいいのかもしれないが、生憎と素直に謝れるような性格をしていないのだ。そしてそれは、相手も同じこと。
このままでは、クリスマスどころか永久に仲直りできないかもしれない。その可能性が否定できない程度には、相手も自身も変に意固地なのだ。
そんな考えに至り、少なからずの胸の内に焦りが生じる。
確かに喧嘩はした。二度と顔も見たくないと、捨て台詞まで吐いた。
けれども別れたいかと問われれば……答えは否と言うしかない。
謝りたくはない。けれども別れたくもない。
どうしてよいのかわからず、はぐるぐると町中を歩き回る。
いつしか手にしていたのは、ケーキとシャンパン。そしてリボンのかけられたプレゼント。
これから何をするのか決めてもいないのに買ってしまって、どうしようかと泣きたい気分にすらなる。
今度はこの大荷物を手に町を歩き回るのか。それとも……
「!!」
突然、どこからか名前を呼ばれ、ははっと顔を上げる。
名前を呼ばれたことよりも、その名前を呼んだ声が。
まさかと思って周囲を見回し―――
思わずは笑ってしまった。
視線の先。
そこには、同じくケーキとシャンパンを抱え、そして赤いリボンがその口から見え隠れする袋を手に提げた男が、やけに必死な形相で立っていたのだから。
きっと自身も似たような表情をしていたことだろう。
どうやら恋人同士、考えることは同じだったらしい。
二つのケーキと、二本のシャンパンと。そしてお互いのプレゼント。
終りよければ、全て良し。
<終>
ショートショートでお送りいたしました。
お相手はお好きなように。
こういうの初めて書きましたけど、普通にオリジナルですよね。最早……
('07.12.25 up)
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