陣痛の痛みに耐えかねて「何がどかーんだバカ野郎!」とMDを放り投げ
分娩室では「これ以上私に何をしろというんですか?」と助産師さんの乳をわしづかみ
差し入れの肉まんを握りつぶしつつ名前と年齢を聞かれたら「安次郎・・・50歳です・・・」
ふと昨日見たチラシを思い出し「ハーーーゲンダーーッッ!!抹茶味キボンヌ」
気遣いのないダンナにプチっときて「私に似ろー!私に似ろー!」
立会いのダンナをビシィッと指さし「見とけよ、アタシの生きざま!!」
 
そんな妊婦さんたちは、今日もどこかで頑張っているのです―――
 
 
 
 
女神たちの伝説(銀魂編)
 
 
 
 
【近藤家の場合】
 
「ま、まだぁっ!? まだなのぉっ!!?」
 
「奥さん、呼吸法呼吸法!」
 
「わかんないっ、わかんないぃぃっ!!!」
 
! もう少し、もう少しだから! な? な?」
 
「勲さぁん……私、頑張ったよね? ものすごく頑張ったよね!?」
 
「ああ、頑張ってるさ! だからもう少し――」
 
「そう! 頑張ったの私!
 だからもう頑張れない! もう無理!
 勲さん、私の代わりにこれから頑張って!!」
 
「え……ええ!!?
 イヤ、それ無理だから! が頑張らないと、俺じゃ無理だから!!」
 
「頑張れないぃぃっ! 無理なのぉっ、無理なのぉぉぉ!!!」
 
「そ、そんなこと言われても……
 とにかく、今だけ頑張ってくれ! そうしたらのお願い、何でも聞いてやるから!」
 
「じゃ、じゃあ、二人目は勲さんが産んでくれるっ!!?」
 
「……え?」
 
「産んでぇぇっ!! 産んでくれなきゃ頑張らないぃぃぃっ!!!!」
 
「わ、わかった! わかったから! 産むから!
 だから今はが頑張ってくれ、頼むよォォ!!!」
 
 
 *  *  *
 
 
「……あの。先生」
 
「ん?」
 
「……勢いで言っちゃいましたけど。
 男が子供産むなんて、無理ですよね。はっはっは」
 
「イヤ。腹切って、腸の辺りに受精卵着床させれば可能だよ。
 違法行為ではあるけどね。やってみる?」
 
「……マジ?
 つか、それって切腹じゃないですかァァァ!!!」
 
 
男に二言は無いと言うものの、こればかりは前言撤回したい真選組局長なのでした。
 
 
 
 
 
【高杉家の場合】
 
「し、晋助〜! 行っちゃイヤだ〜〜!!」
 
「あァ? 俺がいる意味なんざ無ェだろーが」
 
「行っちゃイヤ〜! ダメ〜〜!!
 晋助いないと怖いのっ、死にそうなのぉぉっ!!!」
 
「大袈裟なこと言ってんじゃねェよ」
 
「旦那さん。出産というのは、情緒不安定になるものなんですよ。
 落ち着かせるためにも、この場にいてもらえないですかね?」
 
「……ちっ」
 
「晋助〜〜!!
 っ!? いたっ、痛い、痛いよぉぉ〜!!」
 
「お、オイ!? 大丈夫、なのか……?」
 
「大丈夫じゃねぇよコノヤロー!!
 どうにかしてよ! どうにもできないならあっち行け役立たず!!!」
 
「…………」
 
「情緒不安定だと言ったでしょう?
 奥さんは大丈夫ですから、まぁ旦那さんはあちらに―――」
 
「イヤ〜! 行っちゃイヤ〜〜!! ダメっ、行っちゃダメ〜〜〜!!!」
 
「俺にどうしろってんだテメェは!!?」
 
「だから情緒不安定なんですよ、奥さんは」
 
「イヤぁぁぁ!! もうイヤぁっ!! いらないっ! みんないらないっ!!
 赤ちゃんもいらないっ、晋助もいらない〜〜っ!!!
 ダメ〜〜っ!! なんで晋助行っちゃうのぉぉっ!!? バカバカぁぁっ!!!!」
 
「……オイ」
 
「だから奥さんは情緒不安定だと」
 
「情緒不安定じゃなくて支離滅裂だろーがコレはァァ!!!」
 
 
罵倒され哀願され、結局最後までウロウロさせられる羽目になった高杉氏なのでした。
 
 
 
 
 
【沖田家の場合】
 
。予定日、今日じゃなかったんでィ?」
 
「ええ。でもまだ、それほど痛くないから。もう少しお腹の中にいたいのかしら、この子」
 
「はは。そうかもしれねェや」
 
「……ちょっと失礼しますね」
 
「どこに行くんでィ」
 
「そういうことは、聞かないものですよ」
 
「そりゃ失礼」
 
 ……
 
―――総悟さん」
 
「どうしたんでィ」
 
「あの。赤ちゃんが」
 
「う、生まれそうなのかィ!?」
 
「今、お手洗いに行ったら」
 
「あァ」
 
「赤ちゃんの頭が出かけてて」
 
「……は?」
 
「だから、赤ちゃんが。どうしましょう」
 
「ど、どうって……い、いいい医者!? 医者っ!! 医者ァァァァ!!!」
 
 
 *  *  *
 
 
「いるんですよね。こういう妊婦さん。本当にギリギリまで生まれることに気付かないんですよ」
 
「マジでか」
 
「痛みに鈍感とでも言うんですかね。
 で、病院に来るのが間に合わなかったり、厠で産んじゃったり。
 病院で産めただけ、奥さんはマシですよ。はっはっは」
 
「マシだろうと、俺の神経がもたないでさァ……」
 
 
二人目ができたら、予定日一週間前には奥様を病院に押し込もうと決めた、真選組一番隊隊長なのでした。
 
 
 
 
 
【土方家の場合】
 
「いたっ、いたたたたたっ、痛いっ、痛いのぉぉぉっ!!!!」
 
「だ、大丈夫か?」
 
「大丈夫じゃないっ! 痛い! 痛いから!! いたっ、痛いってばもうイヤぁぁぁっ!!!
 帰るっ! もうやめるっ、帰るっ!! 家に帰してぇぇぇっ!!!!」
 
「無茶言ってんじゃねェよ!
 帰れるわけ無ェだろーがァァ!!」
 
「帰る! 痛くなくして帰るぅぅぅっ!!!!!」
 
「だったらさっさと産め!」
 
「無理! 無理無理無理無理!! だから帰るぅぅぅっ!!!!」
 
「無理なわけあるかァァ!!」
 
「痛いのはお前じゃなくて私だぁぁぁ!!!
 私が無理って言ってんだから無理なんだぁぁぁ!!!
 人の痛みも知らないくせにっ、男のくせにぃぃぃっ!!!!」
 
「……俺が悪かった」
 
「そうだ悪いっ! 悪いのはお前だぁぁっ!!!
 離婚だ離婚! こんな鬼とは離婚!!!
 離婚して帰るぅっ! 家に帰る帰してお願いぃたっ痛いっ、いたた来た来たぁぁぁぁっ!!!!」
 
 
 *  *  *
 
 
「……離婚、してェのか。お前……?」
 
「はい? なに言ってるんですか、十四郎さん」
 
「てめーが言ったんじゃねェか……」
 
「そんなこと言ってないですよ。言うわけないじゃないですか」
 
「……そーか」
 
 
二度と出産立会いなんかするものか、と心に決めた真選組副長。父になった日のことでした。
 
 
 
 
 
【坂田家の場合】
 
「イヤぁっ、死ぬぅっ!! 痛いっ、いたっ、痛いぃぃぃっ!!!」
 
「痛ェってオメーよォ。攘夷戦争乗り切っただろ?」
 
「乗り切ろうと痛いモンは痛いんじゃボケェェェ!!!!」
 
「いだっ!! いだだだだだだっ!! ちょっ、まっ、タイムタイム!!
 それ腕! 俺の腕だから握るな折れる折れちゃうっ!!!!」
 
「私はその百倍は痛いんだバカヤロー!!!!
 いたっ、来てる来てるぅっ!! 痛いぃぃぃっ!!!!」
 
「痛いのは銀サンも同じだコノヤロー!!!!」
 
「同じにすんなぁぁぁっ!!!
 お前の痛みは屁だ! 屁以外の何ものでもあるかぁぁぁっ!!!!」
 
「随分と余裕のある妊婦さんですね。はっはっは」
 
「余裕なんかあるかクソ医者ぁぁぁっ!!
 笑ってないで赤子を出せ今すぐ出しやがれぇぇぇ!!!!」
 
「ちょっ、おまっ、医者にソレは無ェんじゃねーの?」
 
「だったらお前が代われやクソ天パー!!!!」
 
「いでっ、いででででっ、痛いからっ! マジ痛いから離せ!!!」
 
「誰が離すかぁぁぁっ!!!
 繋げっ! 神経繋げこの痛み共有しようぜ戦友だろ夫婦だろぉぉぉっ!!!!??」
 
「いだだだだだっ、折れるっ! マジで骨折れるゥゥゥ!!!」
 
「旦那さん。奥さん興奮するから、出てくれませんか?」
 
「そーします……」
 
「私を裏切る気か銀時ィィィ!!!!
 お前それでも白夜叉かっ!! いい加減にしないとその股のモン引きちぎっぞコノヤロー!!!!!」
 
 
 *  *  *
 
 
「怖いよマジ怖いよ今の
 いいよもう。俺、白夜叉じゃねェから。むしろが夜叉だから。
 だから大事なムスコだけは勘弁してくださいお願いします」
 
「獣ネ。獣になってるネ、アレは。別の人格が降臨してるアル」
 
「ここまで聞こえてきますからね、怒声が……
 って言うか、さん放ってここに来ていいんですか、銀さん?」
 
「仕方無ェだろ。医者が言うんだからよォ。
 アレは女の戦いだ。男は邪魔なんだわ。こういう時の男は大人しくジャンプを読んで待ってるしか―――
 
 
「銀時ィィィ!! 聞こえてんだろォォォ!!!
 パフェだパフェぇぇっ!!! パフェ作って食わせろコノヤローぉぉぉっ!!!!」
  
 
「さすがネ。
 銀ちゃんを逃がす気はさらさら無いみたいヨ」
 
「……ジャンプ読んでたら殺されるんじゃないですか?」
 
「……俺、パフェ作ってくるわ」
 
 
そして、パフェを片手に罵声を背に。ぐるぐると病院の廊下を歩き回る銀時さんの姿がありましたとさ。
 
 
 

 
元ネタ 女神たちの伝説(仮)
 
この元ネタに一人で勝手に大ウケした勢いで書いただけのブツ。
ご希望がありましたので、こっそり再アップさせていただきました。
何かしら追加されてますが、まぁ気にしない方向で(笑)