高校教師 〜Rainbirds〜
何が悪いのかと問われれば、間違いなく今日の天気に責任を押し付けるだろう。
少なくとも自分は悪くない。突然の土砂降りを見舞ってきた空が悪いのであって、自分は決して悪くないと、銀八は胸の内で懸命に自己弁護を図る。
だってそうではないか。愛しくてならない恋人が、自分のカッターシャツ一枚着ただけの姿でいたら、それはもう押し倒さないでいられる男はいる筈がない。
そうやって自己を正当化したところで、現在の状況が変わる訳ではない。自分がを押し倒しているこの状態が無かったことになる訳ではないのだ。
状況についていけていないのか、ベッドの上で不思議そうに目を瞬かせるのその姿が、銀八のなけなしの理性を疼かせる。今なら冗談として誤魔化せば引き返せるかと考えるものの、イヤ無理だなと即断する本能が恨めしい。そしてその本能は、天気へと責任を転嫁する。
いつも通りだった。いつも通り、何の変哲もないデート。店を冷やかしたり、お茶をしたり。ただ二人並んでのんびり歩いていたところへ、突然の土砂降り。偶々近かった銀八の自宅へと駆け込み、全身ずぶ濡れだからと順にシャワーを浴び、勿論は着替えなど持っていないから、手持ちの服で一番綺麗な物を貸してやり、だが下着まで用意できるはずもないから、当然今のはシャツ一枚剥ぐだけで生まれたままの姿に―――考えて、銀八は後悔した。ますます煽られただけだった。
「銀ちゃん?」
キョトンと目を瞬かせるは天使のように可愛くて無垢だと思う。誰かに聞かれたら夢を見すぎだと言われそうだが、勝手に夢を見るだけならばタダだ。
最近の高校生は進んでいると言うし、知識もある。が何も知らないということはないだろうが、ならば手を出していいのかという事になれば別問題だ。
が高校を卒業するまで、最後の一線を越えることだけは待とうと決めていたのだ。いくら恋人だとは言っても、相手はまだ高校生。早すぎる。何より、一度抱いてしまったが最後、歯止めが効かなくなりそうだったからだ。
適当に誤魔化しての上から退けば、何も無かったことにできる。たったそれだけの事だと崩壊寸前の理性が訴えるものの、しかしそれが出来ればこの葛藤は最初から無い。自分で思っていた以上に、どうやら自制ができないようだ。
静まり返った室内で、時を刻む時計の秒針の音がやけに響く。だがそれ以上に、自身の心臓の音がうるさかった。
膠着状態はどれほど続いただろうか。実際には然程の時間は経過していなかったのかもしれないが。
不意に、の腕が上げられる。
それが何処へと向かうのか銀八が認識するよりも早く、顔が引き寄せられ―――それは、口唇を重ねるだけの、ままごとのようなキスではあったのだけれども。
たったそれだけの事にがありったけの勇気を振り絞ったのであろうことは、耳まで赤く染まったその顔を見ればよくわかった。何より、が自分からキスしてきた事など、今まで数える程しか無いのだ。
「銀ちゃん…あ、あの……わ、私じゃ、えと……その気に、ならない……?」
瞬間、理性が完全に崩壊したのを銀八は自覚した。
潤んだ瞳でそんな事を口籠りながらも言われてしまえば、誰が拒絶などできようか。しかも相手は、愛しくてならない少女だ。
衝動に駆られるまま、銀八は性急に口吻ける。今まで押し止めていたものが決壊したかのように、を求めるそれには普段の穏やかさは微塵も無かった。
驚いて反射的に逃げ出そうとするの頭を抱え込むと、まだ乾ききっていない髪から甘い香りがふわりと漂う。うちのシャンプーはこんないい匂いがしただろうかと思わず訝しむ。だがが使えば、どんな安物でもこんな香りがするのだと言われれば、今なら本気で信じられそうだ。
「―――男はバカな生き物なんだからさ。無闇に誘うとこうなんの」
「む、無闇じゃないもん……銀ちゃんだから、その……いいかな、って…」
銀八にしてみれば、崩壊しても辛うじて残っていた理性の一欠片だった。今ならばまだ、引き返せたかもしれない。
しかしその一欠片を木っ端微塵にするかのように、はとんでもないことを言う。
「それとも……やっぱり、大人の女の人じゃないと、銀ちゃんはイヤ……?」
これはもう駄目だと、銀八は素直に白旗を揚げることにした。抵抗するだけ無駄だ。
今にも泣き出しそうに声を震えさせる様には愛しさが込み上げてくる。今すぐ抱き締めたくてならない。
その衝動に逆らうことなく、銀八はの身体を抱き締めた。柔らかくて、壊れそうで。今までにも抱き締めた事くらいはあるが、抱き潰してしまうのではと心配になるのは初めてだ。の表情が不安に揺れているからだろうか。
溢れんばかりの涙を瞳に湛えた少女を宥めるように、その顔に幾つもキスを落とす。擽ったそうに受けるに、勢いだけの衝動ではない、けれどそれよりも強い欲求が込み上げてくるのを銀八は感じた。
を抱きたいというだけではない。自分の、自分だけのものにしてしまいたいという、それは独占欲。
そして今ならば、その独占欲が満たされるのだ。誘惑は余りにも甘美に過ぎた。
「途中でイヤだっつっても、止めらんねーぞ?」
「い、イヤじゃない、もん……」
か細い声で紡がれた否定の言葉は微かに震えていて、が感じているであろう恐怖を伝えてくる。
にしてみれば、初めての体験になる。はずだ。違っていたら泣きたくなるが、の性格と今の反応からして、初めてであることに間違いは無いだろう。ならば、未知の領域に足を踏み入れるのに、少しも恐怖を覚えないはずがない。
銀八とて、そんなを前に恐れにも似た思いを抱く。最後まで優しくしてやれるのだろうか、何も知らないを傷付けてしまうのではないかと。
だが、今更後に引くことはできず、ならば先に進むしかない。
それに半分くらいはが誘ったようなものだ。
「俺って汚い大人だよなァ」
「え?」
「イヤ、何でも」
聞き返したに首を振ると、今度はそっと口唇を重ねる。徐々に深めていきながら、一方で、まだ高校生でしかない少女の言葉を盾に自分を正当化しようとする己を嫌悪する。
傲慢かつ狡猾な独占欲。たとえ世間に認められなくとも、それでもこの衝動は治まるところを知らない。
存分にその口唇を味わってから顔を離すと、トロンと蕩けた瞳と目が合う。途端に身体の内に感じた疼きは、間違いようもない。
頬に一つキスを落とすと、ゆっくりと指先を首筋へと這わせていく。途端にピクリと跳ねるの身体。だが銀八もまた、震えそうになる手を叱咤するのに精一杯だ。初めてでもあるまいし。そう思ってはみても、緊張が和らぐ事は無い。本気で愛した女を前にしたら、誰しもこんなものなのだろうか。
そう。本気で愛しているのだ。愛だの恋だの、柄でもないと思っていた自分が、幾つも年下の少女にどうしようもないほど溺れている。
指を這わせたその後を辿るように、今度は口唇を這わせる。白く細い首は、それだけでも扇情的だ。堪えなければ今にもシャツの前をはだけて、白い身体の至るところに自分の痕をつけてしまいたくなる。実際にそれを行動に起こさないのは、を怯えさせたくない、大人の余裕を見せたいという自尊心が、どうにか銀八を押さえ込んでいるからだ。
「ゃ…っ」
シャツの上からやんわりと胸を掴めば、途端に細い声がの口から漏れる。
見れば、恥ずかしいのか顔を真っ赤にしたがぎゅっと目を閉じている。初々しい反応に、思わず銀八の口元に笑みが浮かんだ。
「。目ェ開けないと、もっと恥ずかしいコトになんぞ?」
「えっ!?」
驚いて目を見開いたは、実に素直だと思う。
音を立ててキスをすると、その澄んだ瞳を覗き込みながら、手の内にある柔らかな膨らみを揉み始める。途端にその身体が強張るのだから、実にわかりやすい。
「あと、声も出そうな? でないと、イヤなのかどうかわかんねーし」
「で、でも…っ」
「聞きたいんだよ、俺が……の瞳も声も、好きだから」
そう言えばが逆らえない事を銀八は知っている。わかった上で言っているのだ。
耳まで赤く染め、今にも泣き出さんばかりの表情で、それでもは微かにではあるが頷く。
それに満足すると、銀八はシャツ越しに胸の頂を摘んだ。
「ひゃっ!? やっ、やぁんっ!!」
途端にの口から上がったのは、嬌声と言うよりは悲鳴に近いものだった。とは言え、初めてならば、そんなものなのかもしれない。納得すると、銀八はを宥めにかかった。ここで嫌なものだと思われては、この先が大変だ。
手間ではあるが、しかしが相手ならばそんな手間が全く不快ではないのだから、これも惚れた弱みなのだろう。
何より、何も知らないならば逆に、全てを自分好みに教え込むことができるのだ。そう思えばむしろ歪んだ支配欲が刺激される。
「こうされるの、イヤか?」
「い、いやって言うか…っ、ぁんっ、やっ…やだっ、なんか…っ、へんっ…わかんな…っ!」
「じゃあ、イヤじゃないんだな?」
聞いておきながら、返事を待たずに銀八はの口唇を啄む。宥めるように幾つもキスを落としながらも、手の動きを止めることはない。
そうしてやる内に、キスの合間に漏れるの声が次第に熱を帯びてくる。その熱さがますます銀八を煽る。こんなを前にしては、途中で嫌がられたとしても止めてやれる自信が全く無い。
怖がられないようキスを繰り返しながら、手はシャツのボタンへとかかる。ゆっくりと、上二つだけ。その隙間から手を滑りこませれば、しっとりと濡れた肌が吸い付くよう。瞬間、ビクリとの身体が震えた。けれども悲鳴がその口から漏れる事は無い。
その事に安堵して、今度は直に胸に触れる。空いたもう一方の手でシャツの前を開けば、小さな悲鳴がの口から上がった。
「やっ…見ちゃやだっ…!」
「なんで?」
「だ、だって…っ!」
「のこと好きだから、俺はの全部が見たいんだけど?」
我ながらクサい台詞だとは思うが、それでもそれは間違いなく本音だ。の全てが見たい。知らないところが無くなるほどに抱き潰したい。そんな思いは誤魔化すことなどできそうもない。
ややあって緩く首を横に振ったに小さくキスを落とすと、その口唇を今度は胸元へと落とす。日に焼けていないその場所は白く、軽く吸い上げただけでそこには紅い華が散る。所有の証、などと言うつもりはないが、それでも幾つも同じように跡を残し、片手は変わらず胸をやんわりと揉みしだく。
熱を帯びた吐息から、少なくとも嫌がってはいないだろう事が知れる。むしろ気持ちいいと思ってくれればいいと思うのだが、流石にそれを聞くのは躊躇われた。のことだ、聞けば嘘でも頷くに違いない。
他人に気を遣うあまり頑なになるのは困ったところではあるが、同時にそんなところも可愛いと思えてしまうのだから、一番の困った人間は自分なのだろう。
胸中で苦笑して、銀八はプクリと膨れた胸の先端をくわえ込んだ。少しばかりを驚かせたくなったのかもしれない。
効果は覿面で、途端には「ゃぁんっ!」と可愛らしい悲鳴をあげる。舌先で転がしたり押し潰したり、時に甘噛みしてやれば、の口からは切れ間無く声が上がった。
「だっ、だめぇっ…ぁんっ、やぁっ…へん…っ、なんかへん、なのっ…ぁあんっ!」
止めようとしたのか上げられた両腕は、しかし銀八にしがみつくだけで、逆にもっととねだられているようだ。
おまけに、もじもじと両脚を落ち着かなさげに擦り合わせている様を見せられては、の嫌がる言葉などあって無いようなものだ。
しかし、だからと言って性急に事を運ぶ訳にはいかない。今すぐにでもを自分で満たしたいなどという衝動はどうにか押さえ込む。
たっぷりと弄った胸をようやくのことで解放してやれば、その先は赤く腫れてしまい、痛々しさを通り越していっそ淫靡だ。まったくもって、いちいち煽ってくる身体だと思うが、そうさせている原因が自分なのだと思えば、むしろ満足感すら覚える。
何も知らない少女に自身の存在を植え付ける事に対するこの満足感は、男が本能的に持っている征服欲なのだろうか。何にせよ、を自分だけのものにしたいという独占欲が変わるわけではない。
堪えきれなかったのだろう、溢れ出た涙を舐めとってやりながら、銀八の手はシャツの残りのボタンを外しにかかる。
ビクリと震える身体。それでも潤んだ瞳は熱を帯び、それが決して拒絶の意ではないことを暗に伝えてくる。それはキスをした時とよく似た顔―――もっとしてほしいと無意識にねだる、そんな表情だ。
こんな顔を見せられては、ますますもって堪えられそうにない。すでに持て余し気味となっている内に籠る熱に、銀八は不安になる。
最後のボタンを外し終えると、全てが余すところなく露わになる。大人と呼ぶにはまだ未成熟なその身体は、けれども銀八を煽ってならない。
あまりにもまじまじと見ていたのだろうか。が恥ずかしげに身を捩じらせる。「銀ちゃん」と、これ以上ないまでに頬を紅潮させて。
「あ、あのね……銀ちゃんも、脱い、で……?」
「へ?」
「だ、だって…私だけ……恥ずかしい、から……」
我ながら間の抜けた声をあげてしまったものだと、銀八は後になって思う。
が、この時はそれを悔やむ余裕などどこにも無かった。
銀八の返事を待たず、腕を伸ばして銀八のシャツのボタンに手をかけるのその指先は震えていて、なかなかボタンを外せない。
けれども、にシャツを脱がされているというその事実が、更に銀八を追い立てる。恥ずかしげに頬を染めながら、震える手でそれでも懸命にボタンを外そうとする姿が、いじらしく愛しくて―――たまらなく欲情する。
たどたどしい手付きはまるで焦らされているようにも思えてくる。勿論、にそんなつもりがないことは銀八も百も承知だ。
だが、もともと堪え性がないのだ。のためとどうにか耐えてきたが、もうとっくに限界を超えている。これ以上は無理だ。
ようやく全てのボタンが外されるや、銀八はシャツを脱ぎ捨てる。
そのままを抱き締めると、小さく上げられた悲鳴には構うことなくその耳元に口を寄せた。
「悪ィ。優しくしてやれねーかも」
「銀ちゃん―――っ!!?」
途端にが目を見開いたのは、突如として下腹部を襲った痛みによるものに他ならない。
今までどんな異物も受け入れたことがないのであろうそこは、指一本ですら拒絶するかのように狭い。これまでの愛撫で多少なりとも濡れていたとは言え、相当に痛むだろうことは、見開いた目から溢れる涙から推し量ることができる。
だが、を傷付けるとわかっていても、最早この衝動を止める術を銀八は持たなかった。
「ごめんな、…」
謝れば許されるわけでもない。指を動かせば、嫌がるようにの腰が引ける。
それを押さえ込んでおきながらぬけぬけと口に出した謝罪の言葉で、どれほどの誠意が伝わると言うのか。
抽挿を始めた指を、内壁が痛いほどに締め付けてくる。だがが感じている痛みはこの程度ではないだろう。苦しそうに呼吸を繰り返しながら、それでも「痛い」とは口にしない。だからこそ余計に募る罪悪感。だがそれを押し退けるほどの飢餓感を覚えているのもまた事実だ。本音を言えば、今すぐにでもの中に自身を挿れてしまいたいほどだ。勿論、流石にそこまで手荒なことはできはしないが。
宥めるように口吻けを繰り返しながら、それでも性急な指の動きを止めることはしない。
抜き差しを繰り返すうちに、次第に解れてくる内側。胸への愛撫も加えれば、感じているのかじわりと蜜が生まれ、潤滑油となって更に指の通りが良くなる。
頃合いを見計らって二本目の指を差し込めば、始めよりは抵抗少なく受け入れられた。
それでも、あくまで比較しての話だ。の中が狭いことには変わらず、二本の指を内壁がぎゅうぎゅうと締め付けてくる。
こんな狭い場所に自分の物を挿れては、壊れてしまうのではないか。決して他人に比べて大きいとは言わないが、それにしたところでの中は狭すぎる。まるで子供のよう―――考えかけて、ハッと気付く。いや、再認識させられたと言うべきか。
はまだ高校3年生。世間的には子供でも通る年だ。
その子供を相手にしているのだという事に罪悪感を覚えたのは、しかし束の間だった。
まるで一瞬の躊躇いを見抜いたかのように、が抱きついてくる。そして。
「大丈夫、だから……はぁっ、私……だから……」
だから何をして欲しい、とまでは口に出さなかったが。
けれども、ぎゅうとしがみつくように抱きつかれていることが、全てを伝えてきているかのようでもあった。
本当にいいのかと問う代わりに、もう一度謝罪の言葉を口にする。「ごめんな」と、耳元で。どのみち、止まる事はできないのだ。
後はもう何かを考えている余裕は無かった。急かされるように残りの衣類を脱ぎ捨て、ようやく潤い始めた場所から指を引き抜くと、トロリと蜜が指先に絡み付く。
代わりに張りつめた自身の切っ先をあてがうと、一息にの中へと押し進めた。
「ひぁっ、ぁああっ!!」
悲鳴を上げ、その瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。
強引に押し開く形となったそこは銀八を締め上げ、痛みを通り越して引き千切られるのではという錯覚を覚えそうだ。
だが痛みと同時に確かな満足感もある。ともすればすぐにでも達しそうになるのを堪え、先にの頬を濡らす涙を拭ってやる。
「痛いだろ? ごめんな」
「ううん…大、丈夫……痛い、けど」
でも、とは言葉を繋ごうとする。
苦しそうに呼吸を繰り返しながら、それでも言葉を選んで逡巡するその顔に幾つもキスを落としながら、銀八は黙っての言葉を待つ。
「うまく言えない、けど……なんかもう…銀ちゃんの、ことが……すごく、好きなの」
そう言って笑みを浮かべるに、銀八の方こそ愛しさが込み上げてくる。
口唇を重ね合わせれば、どちらからともなく深まる口吻け。合間に漏れる吐息に煽られるように、銀八はゆるゆると腰を動かし始めた。
「ああっ、やぁっ! 銀ちゃ…銀ちゃん……っ!!」
内壁が擦れて痛むのか、縋るようには銀八の名を繰り返し呼ぶ。
それでも、やめてほしいとは口にしない。逆にもっととねだるかのように、銀八の身体に回す腕に力を込めてくる。
グチュ、と濡れた音に次第に速まる抽挿。荒い呼吸の合間に繰り返し呼ばれる名前。
きつくきつく締め上げられ、とっくに限界に来ていた銀八は、中で達してしまう寸前に自身を引き抜く。
瞬間、耐えきれずにの上へと白濁を吐き出してしまった。それでも避妊も何もしていなかったのだ。中で出してしまうよりマシだった筈だ。
そうは思うものの、荒い呼吸を整えて現状を認識すると、とてもそうは思えなくなってしまう。
目の前に横たわるの身体は銀八が吐き出したもので汚れ、下腹部は破瓜の血も散っている。おまけにその頬に濡れた跡があるのだから、まるで強姦してしまったような気分に陥ってしまう。それでなくとも、を穢してしまったことに変わりはない。
罪の意識は感じるが、それでも後悔はしない。
それよりも恐ろしいのは、に嫌われていないかということだ。大丈夫だとわかっていても不安を拭い去ることはできず、触れようと伸ばす手にも微かに震えが走る。
だがその手が拒絶されることはなかった。触れた先でが嬉しそうに笑う。
その笑顔に堪らなく愛しさが込み上げてきて、銀八は衝動のままを抱き締めた。
「痛かったよな、ほんと…ごめんな」
髪を撫でながら、謝罪の言葉を幾度も繰り返す。銀八の言葉に、は腕の中で顔を埋めたまま、ふるふると首を横に振る。
そのままぎゅっと抱き締めてきた、それがの答えだろうか。
「」
呼び掛け、その耳元へと口を寄せる。
柄でもないと思っていた言葉が、今ならば伝えられるような気がした。
「愛してる」
その言葉にの肩が跳ねる。
顔は上がらない。返事を求めているわけではない。それでも何かしらの反応が欲しくて、銀八はを抱き締め髪を撫でながら、黙って待つ。
ややあって、「あのね」とか細い声が腕の中から発せられた。
「『愛してる』かは、私はわからないけど……でも、私、銀ちゃんのことが、好き、なの……すごく、すごく大好き」
ようやく顔を上げたは、頬を紅潮させ、はにかんだ笑顔を見せる。耳まで赤く染めて。
にとっては、その言葉が精一杯の表現なのだろう。確かにからは、「愛してる」と言われるよりも「大好き」と言われる方がしっくり来る。それでなくとも、「大好き」の言葉だけで十分だ。
もう一度を抱き締めると、銀八は身を起こす。いつまでも腕の中に閉じ込めていたいくらいだが、やるべきことがあるのもまた事実。
立ち上がると、同じように身を起こしかけていたをシーツに包んでしまう。
そしてそのまま、有無を言わさず抱き上げた。
「ぎ、銀ちゃん!?」
「風呂入らねーとな。汚したし」
唐突な行為に慌てただったが、銀八の言葉にサッと顔を赤らめる。
確かに今のの体は、放たれた精液と、自身の血や汗ですっかり汚れてしまっている。行為を思い出したのか真っ赤になって黙り込むだったが、そのまま大人しくなるかと思いきや「でも」と反論してきた。
「じ、自分で歩ける、もん……」
「イヤ、ムリだろ。その体じゃ」
「ム、ムリじゃないよ!」
もぞもぞと身を捩らせるが、シーツに包まれた状態では大した抵抗にはならない。
それに実際、今のには体を動かすことは辛いだろう。半ば無理矢理に銀八のものを受け入れさせられ、突き上げられたのだ。下半身が痛みを訴えていないはずがない。
「ムリだって、ムリムリ。ぜってームリだから。俺の残りの人生、かけたっていいね」
「え?」
銀八の言葉に、は抵抗を忘れてキョトンと目を瞬かせる。
どうやら言わんとしたことは全く通じていないらしい。
結構頑張ったんだけどな、俺。などと気落ちするのはしかし後回し。
今の隙にと浴室に向かえば、我に返ったが慌てたように悲鳴をあげる。だが銀八にそれを聞くつもりはない。
「いい子だから黙って大人しく抱っこされてなさい」
まるで幼子を諭すかのような物言いに、今度こそは黙り込む。昔のことでも思い出したのだろうか。
まだが幼い頃、面倒を見ていた銀八はよくこうして諭したものだ。ただ決定的に昔と違うのは、二人の関係だ。
昔は昔で楽しかったが、やはり今の関係の方がいい。
大人しくなったに、ご褒美とばかりに銀八はその額へとキスを落とした。
<終>
以上、一年以上前から書きたがっていたネタでした。
久々にエロを書こうと思ったら、書き方わからなくて唸ってしまいました。
('09.10.10 up)
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