コラム なぜこんなに間違えるのか かたかなの学習 字体について 百ます計算 |
なぜこんなに間違えるのか |
漢字についての新聞記事 平成17年1月28日の中日新聞に、財団法人総合初等教育研究所の『小中学生の読み書き能力調査』の結果が掲載されました。 そのなかに「犬や切、風などの漢字では、点の位置や突き抜け、はねや曲がりが正確に書けないケースが目立」つという指摘がありました。 また、ある学校のHPでも「3年以下の漢字に間違いが多い」という記述がありました。 私が教える子供たちも、やはり同様の間違いが多く、何とかしなければと思っていました。 間違いの固定化 特に問題なのは、学校の宿題で子供たちが間違えた漢字を何回も書いている現状です。一所懸命にやればやるほど間違いが固定化していきます。 一度間違えて覚えた漢字は、一度や二度の練習では決して直りません。 長期記憶として定着しているため、記憶を正しい漢字に置き換えるためには、初めに覚えた時間の数倍の時間がかかります。 ですから、子供達のそんな姿を見ると、本当にかわいそうになってきます。 間違いが多い理由(私見) 子供達に対する漢字指導を通して分かったことが2つあります。 @ 手本を見ながら書いているのに、ノートには間違えて書いていることがある A 間違えて覚えている漢字は答を見てもなかなか間違いに気づかないこと どうしてこんな事が起きるのでしょうか。いろいろ考えた末に思いついたことは、どうやらその原因は、多くの小学校でおこなわれている漢字ドリルを使っての練習方法にあるんじゃないかということです。 あまり指摘されたことがないようですが(私が知らないだけかも?)、手本(ドリル)から書く場所(ノート)へ視線の移動するところに問題があるのではないでしょうか。 視線を移動するわずかの間に、省略化・簡略化・よく似た字への置き換え化等などの脳のはたらきがあって、間違った漢字を書いてしまう。 そして、その間違った形のまま練習をすすめ、間違った形で固定化してしまう。 このようなメカニズムがあるのではないでしょうか。 さらに子供たちは、宿題の漢字ドリルを自分で答合わせしますが、間違っているにもかかわらず○をつけてしまうのです。 そのときは不思議に思いましたが、注意深く答え合わせをしてみると、なんと私自身も同じ間違いをしていることに気がつきました。 遠く離れた答を見ても自分の書いた漢字が間違っていることに気がつかないのです。 一度間違えて覚えた漢字は、正しい答を見ても同一だ(合っている)という認識をしてしまうんですね。 その漢字を正しく読むことはできても、自分が書く漢字と違っていることに気がつきません(ここが不思議なところです)。 ですから、人はいつまでも間違った漢字を書き続けるのです。 間違っているかどうかは、正しい漢字を知っている他人が見て初めて気がつきます。 先生や親の答え合わせは非常に大事だと思います。 間違いを固定化させないために、ぜひ丁寧に答え合わせをしてください。 なお、この私見を友人の亀井喜久男氏(エジプトひもで有名)に話したところ、どこかで同じような意見を聞いたことがあるということでしたので、もし、ご存知の方がいれば教えてください。 このページのトップへ |
読めても書けない |
「象ってどんなもの?」と言われたとき、人はそれをたやすく説明することができます。 しかし、「象を絵に描いてください」と言われたらどうでしょうか。 正しく描き表すことができますか。 ほとんどの人は不格好な象しか描けないのではありませんか? 漢字も同じではないでしょうか。 『読む』ことはできても、正しく『書く』ことができない漢字が多くありませんか。 私は教育漢字までは何とか書けるのですが…。 その他の常用漢字になると…かなり書けません。 書けた!と思っていても、微妙なところで違っていることが多くあります。 間違いの固定化問題に気づいてから、自分自身の漢字について総点検したのですが、けっこう見つかりました。 人間の脳って不思議ですね。 私にはそれがどういう理由なのか分かりません。 しかし、だからこそ、漢字を「正確に」書く練習は大切なんですね。 |
対策 |
対策2 読みと書き順を覚えた漢字を定着させるために私が考えたことは、熟語の学習に入る前に何回も書く訓練を子供たちにさせることです。しかし、ふさわしい教材がありませんでした。どうしても視線の移動が多くなってしまうものか、コピーしなければいけないものばかりでした。そこで、しかたなく手作りで教材を作り子供たちに与えています。それが「窓あき式漢字練習シート」です。 教材「窓あき式漢字練習シート」 ・子供たちは市販のノートにそのシートを載せ、隣の手本を見ながら漢字を書いていきます ・練習量がぐんと増えました。視線の移動が少ないため、まちがいも少なく、時間も余りかかりません。(さらに、字がきれいになるというおまけも付きました)。 ・間違っていないか、私が確認をする場合も、同じシートを載せるだけですぐに確認ができます。 ・左利きの子供は、手本の左側の枠を使って練習します。(右側で練習すると手本が隠れてしまう) ・裏面は「書き取りテスト」です。答合わせは、裏返すだけで解答がすぐ隣に来ます。 ・何回も繰り返し練習ができます。また、今までに習った漢字をまとめて学習することができます。 このページのトップへ |
漢字ドリルについて |
今の学校における漢字指導の問題点 1 書き順指導:1漢字につき3,4回(ドリルまかせ) 2 「読みのページ」の宿題:テスト形式なので、裏の書き取りのページを見て答えを書く。読みの練習ではなく、平仮名を写す作業になっている。せめて、音読してからテストすればいいが。 3 「書きのページ」の宿題:表の読みのページを見て漢字を書く。教師によっては「答を見ないでやってきなさい」と言う指示があるが、ほとんどの生徒はできるわけがないし、間違えて覚えた漢字が固定化してしまう。 4 手本を写す回数が少なく、その手本がある場所(「書き」の問題)と書く場所(ノート)が離れているので、宿題をするのに時間がかかったり、間違えて覚えることが多い。 5 反復して練習する機会は少ない。適切な教師からの指導も、適切な練習問題もないので、その学期が終われば、その漢字を練習する機会はなくなる。 このため、漢字嫌いの子供が増えて、中学校の教科書が読めない子供が増えている。 |
かたかな学習について |
かたかなの習得は大切だと思うのですが、学校では指導時間がなかなか取れないようですね。そのために、きちんと書けない子供が多いみたいです。 参考ブログ このページのトップへ |
字体について |
陰山掲示板に「泣」と「位」の字体のちがいについての問題がありました。「立」の部分の縦線が上にくっつくかどうかという。 昭和56年10月1日内閣告示の「常用漢字表」の「(付)字体についての解説」に次のような解説を見つけました。少し長くなりますが引用します。 (付)字体についての解説 1 明朝体活字のデザインについて 常用漢字表では、個々の漢字の字体(文字の骨組み)を、明朝体活字のうちの1種を用いて示した。現在、一般に使用されている明朝体活字には、同じ字でありながら、微細なところで形の相違が見られるものがある。しかし、各種の明朝体活字を検討してみると、それらの相違は、いずれも活字設計上の表現の差、すなわち、デザインの違いに属する事柄であって、字体のちがいではないと考えられるものである。つまり、それらの相違は、字体の上からは全く問題にする必要のないものである。 …(略)… 2 点画の組み合わせ方について (2)つけるか、はなすかに関する例 発・備・空・湿・吹 (以上引用 「新しい国語の表記」尚学図書編 小学館発行) 長々と引用しました。これは、「例えば『湿』の縦線については今回の問題と同じように、『つく』活字と『つかない』活字が存在するが、単にデザインの違いであって、何も気にする必要はありませんよ。」ということではないでしょうか。 ちなみに教科書体の問題が出ましたが、私の持っている4種類の教科書体で調べてみると次のようなことがわかりました。 A社 「泣」「位」2字ともくっついている B社 同上 C社 「泣」「位」2字とも離れている D社 「泣」くっついている「位」離れている それぞれ違うんですね。私もこの掲示板を見て調べてみるまで気がつきませんでした。関係者ではありませんが、ありがとうございました。ただ、フォントには使用権の問題があり、出版する場合、自分の好きなフォントを使えないこともあるようです。私もあるメーカーに問い合わせましたが断られました。 さて、実際の運用においては、上記書籍の中の「明朝体活字と筆写の楷書との関係について」という解説を参考にしてください。詳しくは書きませんが、これを読むかぎり、ついていても離れていても問題ないようです。学校の先生方はこれらを元に採点していると思います。 このページのトップへ |
百ます計算について |
百ます計算についていろいろ言われていますが、疑問に思うことがいくつかあるのでまとめてみたいと思います。 1.なぜ「百ます」か 1けたのたし算は「0+0」から「9+9」までちょうど100問あります。この100問の計算を練習する方法は、実は2通りあります。1つは「百ます計算」であり、もう1つは「あまりのあるわり算プリント」のように100問のたし算を1枚の用紙に配列したプリントです。 百ますが批判されるのは、高速計算とうい側面だけでなく、その仕組みに問題があるからなのです。 学校現場では、後者のような作成にかなりの時間がかかるプリントより、手軽な百ますを選択せざるを得ないと思います。 しかし、市販される計算プリントまで「百ます」というのは少し疑問です。 このページのトップへ |