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村上へ行く
2004/8/18


お盆休みに、村上に行った。
新潟県村上市、私の母の故郷。
7月に起こった大水害の被害は、幸いなことに、無かった、新潟市から70km北、南北に細長い新潟県の北の端、山形県に近い町。

子供のころ、お盆に村上に行くのは楽しいことではなかった。
知った人はいない、道もわからない、子供は私だけなので、連れられていって、母の実家に置いておかれる数日間、退屈な村上滞在の間に、地元のお祭りは終わってしまう。

中学生になって、ひとりで家に置いておいても大丈夫となってからこっち、村上には行かなくなった。

その後、長いブランクを経て、妻と息子を連れて、村上に遊びに行ったら、昔の退屈な町の印象が変わった。
子供のころは、足が無いので、身動きが取れなかったけど、今度は車で行ったので、行動半径が広がった。

中心街は、海に面してるわけではないけど、海岸までは、車で15分、そこから大小の岩が海岸線に延々並ぶ景勝地、笹川流れ、そこの海水浴場がいい。
市外からすこし、離れると湧き水みたいにすんだ綺麗な海がある。
夏の海は、波も無く穏やかで、透き通った海の底は、晴れた空の下、明るい緑、赤みのさした茶色、彩り豊富な海草が、差し込む陽の光に、明るく冴えてお花畑のように美しい。
フグやなんかの稚魚が団子みたいに固まって、その中につ込むとドーナッツみたいに変形する。
岩の間洞窟みたいな場所に入るのも面白い。
子供のころは一人だったけれど、今度は息子が二人一緒に遊んでくれる。
シュノーケルと水中眼鏡があれば、一日楽しい。

今年の海は、お盆ということで、もう波が出てたり、くらげが居たりで泳げないんじゃないかと心配したけど、幸いくらげはごく僅か、水温は高く暖かい、波が少し出てたけど、岩にたたきつけられるような怖い波ではなかった。
ただ、波のおかげで、砂やら何やら、水の中に浮き上がり、透明度はいまいち、波を少ないといっても、引き込まれてしまっておきに出たりしたら、海に慣れてない山の民にはちと怖い。
今日は快晴だけれど、明日は天気が崩れそうということで、ちょこっと泳いで、写真を撮って、町に戻って川で遊ぶことにした。

市街の傍らを日本海に注ぐ三面川は、夏は鮎つりだけでなく、川原でバベーキューしてる若者や、タモで魚を追っかける子供がいる。
鮎つりの人も沢山居るけれど、河口近くの広い川なので、泳いだり、魚を追っかけて遊ぶ余裕は十分にある。
で、こちらでもシュノーケルと水中眼鏡で泳いでみた。
背は立つけど、腹ばいになれば、流れに乗って下っていける、足の立たないところはないし、急な流れもない、怖くない、水は温かい。
こちらでも、遊べた、写真も撮った。

夏、子供たちと遊ぶのも楽しい川だけど、三面川は、村上の人たちには、自然の残る綺麗な川というだけでない、特別な川
鮭が上る川、といえば日本には他にもあるけれど、この川の鮭は、江戸時代にはすでに、産卵の為の人口水路を作り、村上藩の大きな財源となっていた、さらに、明治になっても鮭の漁業権は、旧士族の共同財産として残り、子弟の奨学資金となった、という具合に、三面川は、この地域の食糧、経済を支えてきた鮭をもたらす川という意味がある。

鮭は村上の人には、さらに特別、平安のころから、今まで豊富な鮭と共に暮らしてきたから、村上の外の鮭は食わなかった。
だから、鮭は、調理法から、保存法まで、ここの風土に合った独特の、加工の仕方がある。
その代表が、塩引き
鮭を丸ごと一匹塩に浸すのは、荒巻鮭と同じだけれど、塩引きの鮭は、一度つけた塩を、全部洗い落とす、それを日陰干し、このとき鮭の尻尾を上にして軒に吊るす。
新巻鮭とは反対、村上だけの吊るし方。
しっかり干しあがった塩引きは、なめしたように銀色の光沢を放ち、肌のぬめりはまったくない、剥製のよう。
もちろん、塩引きは村上で取れた鮭を使う、これが大変旨い。
この塩引きを干し続け、鰹節ほど(は言いすぎだな)硬く乾燥させたものが、鮭びたし、薄くスライスした身を、その名のとおり酒に浸して柔らかくして喰う、酒の肴。
酒の獲れる晩秋11月には、いくらを味をつけた醤油に漬けたハラコが出る。
夏にある冷凍ものとは違う、柔らかい、旬のハラコはほんとに旨い(11月に取れた鮭のハラコが一番、12月のは少し固いという話:地元の人談)、筋子は大人になってから好きになった。

こういう薀蓄は、子供のころには興味のなかったこと、それが、年食うと大変興味深い、薀蓄で旨いわけじゃないとは言うもんの、塩引き喰っても一味違う、さらに旨い。
で、薀蓄といえば、酒どころ新潟、村上には二軒の酒造会社がある。
そのうちの一軒、宮尾酒造〆張鶴が、有名になったらしい(織部亭には置いてあるとのこと)、もう一軒の大洋酒造こちらの酒も、地元では〆張に負けず劣らず、いい酒との評価。
叔父のおごりで、〆張鶴も大洋盛も両方しっかり味見させていただけた。(あたま痛くなるくらい)
幸い母の実家のすぐ前が、品揃え豊富な酒屋さん、(品揃えの充実振りは、ヤフーフォトの写真でみて下さい)ここでしっかり薀蓄聞いて、カタログもいただいてきました。
一献そのうちみんなでどうでしょうか、飲んでみたいという方メール待ってます。(割り勘で行こうね)

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