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初心者指導


1.初心者のトレーニングについて

 初心者がウエイトリフティングを行うときは、必ず専門家にフォームのチェックをしてもらえるようにすることが大切である。初心者の練習方法はたくさんあると思われるが、私が行っている初心者指導について述べてみたいと思います。


(1)1年間のトレーニングスケジュールを立案

 初心者にトレーニングを行わせるときに一番考えることは、正しいフォームの修得である。もし、初めて教える選手が素質的に優れた選手であっても、初めて3年目までのフォームの修得によって悪い癖が残ってしまう場合が多い。そのため、その選手に合わせたトレーニングスケジュールを立案する必要があると思われる。スケジュールを立案する場合、その選手の関節部の状態、筋力、性格などを考える。現在は2〜3ヶ月までは無理をさせないように、重い重量を行わせることを少なくし、本人にとって比較的軽めの重量を行わせ、フォームの基礎を修得させている。その後、その選手の特性によって1年後の目標記録を立てさせ、2ヶ月ごとくらいの目標記録を持たせるようする。また、その選手の欠点を補強すべき点をどのくらい練習に反映させるか考え、スケジュールを調整する。
はじめの1年間のトレーニングスケジュール例
 4月〜5月  競技の説明、練習方法の説明など
        ジャークフォームの修得、ハイクリーンのフォームの修得、ハイスナッチフォームの修得
        スクワットのフォームの修得、その他補助種目のフォームの修得

 6月〜8月  採点制競技会の説明と参加。ある程度のフォームの修得を確認
        記録測定 80%くらいでのトレーニング負荷の増加
        スクワットスナッチ、スクワットクリーン動作の修得

 9月〜11月 競技会の参加、来年の目標設定、本格的なトレーニングの開始
          上級生との合同練習開始   
12月〜 3月 サーキットトレーニングによる強化、補助種目強化、欠点の改善

(2)1ヶ月のトレーニングスケジュールの立案方法

 1年間のトレーニングスケジュールを立てたら、その案に合わせて1ヶ月のトレーニングスケジュールを立案する。初めて間もない選手の場合、目標とする大会は6ヶ月以上経験を積んだ後の大会にすべきであり、だいたい高校生の場合は新人戦が一つの目安になるはずである。準備期、鍛錬期、試合期などシーズンをわけ、その時期に合うようなトレーニングスケジュールを考え実施する。初心者の場合は、1年間が準備期であり、鍛錬期であると考えるべきである。

1ヶ月のトレーニングスケジュールは、以下を留意する。
@ 試合日程に合わせて立案する。
A 試合がなければ、記録測定日を計画しそれに合わせて立案する。
B その月の具体的な目的が何であるかを意図できるような練習計画であること。
C 必ず練習内容には強弱をつけ、練習量・練習強度のバランスを考える。
D 初心者の場合、怪我に十分留意し無理のない練習を考える。

(3)選手に合わせてのトレーニングスケジュールの変更

 一つのクラブを持つ場合、やはり学年ごとやチームごとに基本的な練習内容は同じにしなければいけない場合が多い。しかし、選手には個性があり、怪我や体調不良などのハプニングが起きる。そのときの状態に合わせて常にスケジュールの変更を実施し、目標大会に向けてトレーニングさせる必要がある。また、素質的に恵まれた選手を指導することができると、ついつい目先の記録や、目先の大会の優勝を狙わせたくなる。しかし、その選手が大学などに進学し将来期待される選手になるようにするため、決して無理をさせないように本人の状態を確認する。そのなかで、一番良い選択をすべきである。

(4)主要種目の修得方法とその順序

T ジャーク動作の修得方法 →ジャーク動作へ

@ ジャークの最終挙上姿勢の確認
 初心者はバーベルを持ってバランスを取ることは難しく、20kgのシャフトでさえ支えることが困難な場合がある。自分に一番楽な姿勢はどのような状態か確認させる。 
A 肩から頭上へのバーのコースを肘の動きとして確認させる。ディップ動作の修得。
 初心者は指先でバーをコントロールしようとする。しかし、肘の動きでバーをコントロールするように動きを確認させる。必ず指先はリラックさせ、小指の力の入れ方でバーをつかむ。手、手首、前腕部を固定し、肘を上に挙げることによりバーのコースを確認させる。このとき、ディップの動作を修得も同時に行う。ディップ動作は、肩の上にバーを置いて行わせるのではなく、頭上からバーを降ろしながら、ディップ動作を行わせることがポイントである。
*この時決して行っていけないことは、必要以上にバーを肩の上(鎖骨の上)に乗せることを強調してはいけない。選手によって関節部の柔軟性が違うため、そのような指導をすると、無理な動作を引き起こす可能性が多い。

B 使っている筋肉を確認させる
 Aの動作を数回で何セットか行わせて、どの部分の筋肉を使っているかを確認させる。この時、肩の位置に移動させたときに、肩の部位にできるだけ緊張させるように、肩の上にバーをのせないようにさせます。そうすることによって、肩の筋肉を使っていることを意識させる。

C ジャークの受けの動作を作る。
 ジャーク動作で、両足を前後させ、バーを受ける姿勢を作らせる。そのときには、本人が受けやすい足を前に出させ、受けの姿勢作りを行う。そのとき、後ろ足はあまり突っ張らず、大腿部前部の筋肉を緊張させるようにすべきであると思われる。この動作の修得は軽い棒などを利用し、何日間か実施させ、フォームがある程度安定した段階でシャフトを持たせて実施させる。

D ジャーク動作の完成
 最後に、ジャーク動作を一連の動きとして行わせる。すべての動作がスムーズに行えるようになるまで何回も反復させる。

U クリーン動作の修得方法 → クリーンの動作

@ バーを持ち、背筋部の緊張を意識させる。
 初心者には一番難しいことであるが、バーを持ったとき、背筋部を緊張させるようにします。

A バーを持ち、背筋部を緊張させたままジャンプする。
 バーを持った状態で維持させたまま、ジャンプさせます。バーを持っている腕の筋肉をゆるめるとバーが上に放り挙げられる感覚を持たせることをねらいとします。

B 背筋部を緊張させたままバーを少しだけ降ろし、その後元に戻しながらジャンプ し、バーを肩の上で受けさせる。ジャンプした後、肘を返し、バーを肩の上(鎖骨の上)で維持させる。そのときの姿勢作りが、スクワットの姿勢と同じになります。その姿勢はいろいろな人にに見てもらうこと。その姿勢のまま、フロントスクワットができればOKです。


C 背筋部を緊張させたまま、バーを膝下まで降ろし、その後クリーン動作を行わせます。
 最後に一連の動作としてクリーンを修得させます。動作がスムーズに行えるよう何回か繰り返し行わせます。

V スナッチ動作の修得 → スナッチの動作

@ スナッチの最終姿勢を確認させる。
  初心者は頭上にバーを挙げることに慣れていない。スナッチ幅でバーを頭上で挙上させた状況慣れさせます。できれば挙上させたまま、少し屈伸させます。バランス感覚を覚えさせるようにします。

A クリーン動作の修得のA〜Cを同じように実施させます。
 運動の方法は、ほぼ同じなのでクリーンと同じように行わせます。クリーン動作との違いは、バーを頭上から降ろさせるときに、バーを挙げるときの動作の逆を行わせます。肘の動きを理解させる必要があります。降ろし始めの時、肘を少し前に出しながら目線までバーを降ろし、その位置で肘を返しバーを降ろす。降ろさせる動作をおろそかにしている選手はなかなかフォームの修得はうまくいかない。

 TからUその後Vと順に行い、1ヶ月間で以上のフォームの修得を行わせる。初心者は、同じ動作の繰り返しを行いすぎると、ウエイトリフティングへの興味が薄れる可能性があるため、それ以外のサーキットトレーニングや補助種目(スクワット、ミリタリプレスなど)を加えながら、練習内容を決定する。1つの種目は長くても30分〜40分で終わるように考えながら、計画を立てる。主要2種目以外でフォームの修得が大切なものはスクワットとデットリフトである。デットリフトは技術的に難しい点や腰痛の元にもなりかねないので、最初の1ヶ月はあまり実施しないこともあります。できれば1ヶ月〜2ヶ月の間に上記の種目をある程度理解させたい。

W スナッチ、クリーンのスクワット姿勢の修得

 スナッチ、クリーンのスクワット姿勢の修得については、スクワットのフォームの安定と、ハイスナッチ、ハイクリーンの受けの姿勢がスクワット姿勢につながる状態かを確認しながら実施する。スナッチ、クリーンともにハイスナッチ、ハイクリーンの姿勢からスムーズにスクワット姿勢をとれるように受けの姿勢を確認させる。必ず受け→スクワットの順であることをこの時に意識させることが必要である。初心者はどうしてもスクワット姿勢が低いほど格好良いと感じてしまうものである。見た目より、その動作の順序を必ず確認させる。

X フォームの正確化、安定化

 初心者が練習を始め3ヶ月経つとある程度フォームが安定してきた段階でフォームの維持するための筋肉を強化する。その選手が最高で10回程度回数が行える重量で5〜7セット実施させる。この時、選手の特徴や性格によって失敗せずにセットを終えられるか決まった回数で失敗するか決まってくる。失敗してしまう場合、その回数ができるようになるまで、シーズンを通してそういった練習を組み入れると良い。

(5)補助種目の強化及び安定化

 補助種目、特にスクワット、デットリフト、プレス(プッシュプレス)などは直接必要な場所を強化する大切な種目である。必ず正しいフォームで練習する必要がある。この時に必ず選手に言っておかなくてはいけないことは、スナッチ、クリーン&ジャークのための補助種目であることである。主要2種目の動きとできるだけ同じように実施させることを意識させることにより、より正確な動作をおぼえさせるきっかけとなる。スクワットのためのスクワット、プレスのためのプレスのように、スナッチ・ジャークの動きを妨げるような動作は行わせないことが大切である。

(6)試合に対しての考え方

 初心者は試合になれてくると、試合での緊張感や集中力の向上などにより、練習以上の力がでることを知ってくる。しかし、試合に練習以上のものを求めさせないことが大切である。ウエイトリフティングの試合はスナッチ3回、クリーン&ジャーク3回の計6回である。この6回の中で自己ベストを出すことが最上であるといった考え方をもたせる。そうすることによって成功率の向上や、練習の中の2.5kgの大切さ、練習での失敗しないことの大切さなどを教える必要がある。経験的にスナッチ1回、クリーン&ジャーク1回の成功だけの6回中2回成功での優勝はあまり意味のないものである。自分自身のパフォーマンスを見ている人に与えらるように6試技の内容を考える必要がある。3回中1回成功すればよいといった考え方は捨てさせるべきである。6回成功したらトータル、○○○kg、5回成功だったら○○△kg、といったシュミレーションを考えさせ、それを頭に入れた練習を試合の2週間前から実施させることも大切である。

(7)初心者はバーベルだけで強くならない。いろいろな筋肉を強化させるために走ったり、跳んだり、泳いだり、様々な動きを継続して行わせる

 初心者で、筋力的にバランスの取れた選手というのはいまはほとんどいないと思う。小さい頃から農作業などをやってきたわけでなく、全体的に筋力不足である。そのため、バーベルを使って練習だけでは鍛えられない筋肉もあり、その筋力不足によって引き起こる怪我もある。高校時代のうちは様々なトレーニングを行わせ、型にはまった練習をさける必要があり、特に1年目の初心者はそのことが顕著である。
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