デカプリン記〜その7〜
笑ってばかりではプリンは減らないので、当然ながら口に運び、胃で消化し、腸で吸収し、排泄するプロセスを
開始しなければならない。全員の顔が一瞬にして凍りつくほどの重さであるプリンを胃の中に収めねばならないのである。
当然ながら覚悟とか決心だとか、そういうものも必要になってくるのだがやはり本当に必要なものは鉄の意思である。
いつ何時でも人を本当に突き動かすものはその意思であることに変わりはない。かつてのIRAがそうであったように
我々も鉄の意思にてこのプリンという敵を排除し勝利宣言を収めることこそが今回のプリンを作るというイベントにおいて
もっとも重要なことであろう。我々はIRAやかつての十字軍のように理念を忘れて私欲に走ることはない。
プリンを完食するという唯一つの、ある種の神々しさすら覚える目標に向かって一心不乱に突き進む。
さぁ、まずは半分だ。半分食べれば残りも半分である。富士山とて1500メートルも登れば残りは1500メートルと
わずかなのと同じように12人前食べれば残りも12人前だ。何も臆することはない。
半分のプリンはまるで茶碗蒸しかなにかのように無造作に器に投げ入れられ、甘い匂いを放ちながら毒々しい
微笑をたたえて胃の中に吸い込まれていった。友人Kはひどい顔をしていたのだが、そんなことは関係ない。
兵隊とは駒である。多少の犠牲はやむを得まい。硫黄島やダガルカナル島の無念を思えばこんなものは
春吹くそよ風である。しかしながら半分のプリンは断末魔の叫びこそ上げなかったが、胃袋に悲鳴をあげさせる
ことには成功していたのだった。
半分を食べ終えたところで全員の士気が衰えていたことは明らかであった。半分とて12人前である。
成人男子4人で12人前である。1人あたり3人前なのだ。1人前で満足なのに3人前。これでも充分八面六臂の
活躍とたたえられてもお釣りをくれてやる必要がないぐらいの働きだ。しかし八面六臂の活躍の裏では四面楚歌の
状況に立たされた絶望感が漂う。全員の目が死にゆく者の目のようになってきた。しかし、あと半分。
全員で声を出し、士気を高めて立ち向かうことにした。
いっせーのーで
ぎぶあっぷ。
・・・・・
こうして我々の戦いは終わった。今から思えば24人前なんて最初から無理な話であったのだ。ただ単に
でかいプリンが見たかっただけ。それだけの理由でこの拷問に耐え抜いた。本当によくやった。
君にも色々意見はあるだろうがここは玉砕してはくれまいか、と頼んだかどうかはわからないが
そんな連帯感に包まれた4人は甘い匂いにも包まれ、棺おけにも包まれたい気分で横たわった。
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