アミオダロン(amiodarone)考

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文責  山本内科耳鼻科院長 山本秀平 (2003/9/28)

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アミオダロンという薬があります、心臓が一時停止した救急の患者さんに使用する抗不整脈薬です。 日本循環器学会でも総会のシンポジウムで取り上げられ (The 65th Annual Scientific Meeting of the Japanese Circulation Society March 25-27, 2001 http://www.j-circ.or.jp/english/sessions/reports/65th-ss/sc01.htm )、 アメリカで既に使用され (Cordarone(R))、いい薬だから日本でも使用しようじゃないかという方向にある薬です。 救急の現場で使用されはじめています。

実は昨日、アミオダロン研究会というのが開催されました ( http://www.amiodarone.jp/ )。 しかし、私は出席しませんでした。 アミオダロンを発売している製薬会社が共催しているからです。

海外に目を向けますと http://amiodaroneiv.com/ というサイトもあり、情報が得られます。 ただし、情報内容のほとんどがアミオダロン肯定の内容であるのに気づき、 この情報を提供するサイト http://docmd.com/ について更によく調べてみる必要があるように思いました。

今さら言うまでも無いかもしれませんが、以前から知られていた事について話題をひとつ。 例えば以下のような文献があります。薬理動態からアミオダロンを検証しており、輪郭が掴めます。
Intravenous amiodarone: pharmacology, pharmacokinetics, and clinical use. Chow MS Ann Pharmacother. 1996 Jun;30(6):637-43.

Pharmacokinetics of intravenous amiodarone in patients with impaired left ventricular function. Vadiei K, O'Rangers EA, Klamerus KJ, Kluger J, Kazierad DJ, Leese PT, Chow MS, Zimmerman JJ J Clin Pharmacol. 1996 Aug;36(8):720-7.

Interaction between amiodarone and lidocaine. Ha HR, Candinas R, Stieger B, Meyer UA, Follath F J Cardiovasc Pharmacol. 1996 Oct;28(4):533-9.

Population pharmacokinetics of intravenous amiodarone and comparison with two-stage pharmacokinetic analysis. Vadiei K, Troy S, Korth-Bradley J, Chiang ST, Zimmerman JJ J Clin Pharmacol. 1997 Jul;37(7):610-7.
お忙しい方の為にエッセンスをお伝えします。兎に角、この薬は血中半減期が極端に長いのです。 数ヶ月といわれています。 平たく言うと一旦体に入った薬がちっとも体から出て行かない。 世界に薬多しと言えどもこの値だけはアミオダロンが抜きん出ています。 私の知る限り世界の市販薬では血中半減期は最長です。

分布容積が 40-84 L/kg BW というのにも絶句します。 分布容積というのは投与量と血中濃度から換算して どれだけの体液(あるいは血液といってもよい)が体の中にあるのかなという仮想理論値です。 体重 50kg の人で 2,000 L-4,200 L、うーん、数トンの血液、 実際には脂肪などに極めて高濃度に蓄積され、 血液にはほんのチョッピリしか出てこない、しかも数ヶ月かけて。 だからこんな数字になっちゃうのです。

毒性の低い薬なら、それも良しとしましょう。 ところが逆です。 これが高い事でも知られ、処方する方も内服する患者さんも命がけといえます。 また本剤は肝臓に働き CYP3A4 を阻害する事でも名うての薬です。 サイクロスポリンを処方するとこの薬の毒性までもが発現する可能性があります。

例え毒性があっても救急医療では使用が正当と考えられる場もありますが、 循環器専門医といえども特別に造詣の深い先生が使用する薬で、 少し試しに使用してみる薬ではありません。

文献に戻ります。上記の薬理動態のパラメータは個人差が大きいとも書いてあります。 evidence based medicine が流行の昨今ですし、アミオダロンの大規模臨床試験も出ています (BASIS, PAT, CASCADE, CASH, GESICA, EPAMSA, CHF-STAT, CAMIAT, EMIAT)。 が、しかし、富山医科薬科大学の井上博先生は http://www.lifescience.co.jp/yk/doukou/doukou_0201/1.htm#1 に概説され、慎重に解釈してみえます。 個人差が大きいと EBM は途端に臨床では役に立たず、統計のお遊びになります。

半減期、分布容積だけではありません。本剤の薬価です。 一錠5197円(2003)と日本では他剤を凌駕して超高価です。 アンカロンという商品名からメーカーさんが腐心された様子が伺えます。 5197円の根拠が何処にあるのでしょうか。

追記 (2005.2.7)
本日ですがサノフィ・アベンティスグループ医薬情報本部からメールをいただいております。 実は当時の薬価が 519円70銭である事を確認しました。今となっては確かめるべくもないのですが、 コンマを見落としたのか、誤植に気づかず値を信じて記事にしたのか、いずれにせよ責任を感じ、陳謝いたします。
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