大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
あぶない危 |
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僕:細かいアクセントの違いなどどうでもよい事とお思いの日本人が多いのではないだろうか。 君:せっかく当サイトを訪れてくださる読者の方々に失礼よ。 僕:それは逆だ。この数日、アクセントの事しかお話ししていない。クリックが途絶えた訳では無い。さあ、今日も面白いお話のはじまり。 君:ほほほ、昨日は「ない無」のアクセントのお話で、今日は「あぶない危」のアクセントと来れば、既に結論は見えているわよ。 僕:そう。その通り。結論は見えている。昨日は飛騨式アクセント(つまりは東京式内輪系)とNHK式(つまり東京式外輪系)に明らかにアクセントの違いがある事をお話しした。若しかしてと思って先ほどアクセント辞典で「あぶない危」を見た。やはりその通りで、実は違っていた。しかもパターンも同じだった。つまり東京式内輪系と東京式外輪系にはアクセントの対応がある。これは新鮮な発見、昨日まで全く気付いていなかった事だった。あらためて「気づかない方言」特に「気付かないアクセント」の存在に気づく事の難しさと言うものを知った。ただし、佐七がアクセントに興味を持ち始め、そして気付いた違いをことごとく記載すれば、飛騨方言アクセントの全体像というものが見えてくるはずだ。 君:早速に「あぶない危」のアクセントをお示ししてね。 僕:うん。NHKは、アブナイ、アブナ\カッタ、アブナク、アブナ\クテ、アブナ\ケレバ。飛騨式は、アブナ\イ、アブナカ\ッタ、アブナ\ク、アブナ\クテ、アブナケ\レバ。 君:なるほど違うわね。飛騨式は「ない」であれ「あぶない」であれ、アクセント核の位置は同じね。 僕:そうだね。それにNHK式に平板アクセントがある事に思わずドキリ、目が点になってしまった。飛騨じゃ絶対にそのようには言わないね。NHK式「アブナ\ケレバ」についても思わず目が点になった。NHK放送など、毎日のように視聴しているが、アナウンサーの方々は実はそのようなアクセントで話していらっしゃるという事だよね。微妙な差だけに、心ここにあらざれば聞けども聞けず、ってやつだな。でも気づいてしまえばこちらのもの、今日からはNHKニュースを観る楽しみが増えた。 君:ほほほ、よかったわね。今日の結論をお願いね。 僕:要は形容詞の活用部分が「なり・たり・かり・けり」であると、これはそもそもの語源が「にあり・とあり・くあり・きあり」という事で、要するに語源的には自ラ変「あり」の系統の助動詞という事だ。そして飛騨方言においてはこれらの活用語尾に必ずアクセント核があるという事。言い換えれば活用部分に「あり」が内在する形容詞においては、肝心の語幹部分にはアクセント核が無いという事だ。これが飛騨式アクセントの法則。 君:「きたない」とか「おさない」とか、「〜ない」で終わる形容詞すべてに当てはまりそうね。 僕:その通り。その二つについては、今しがたアクセント辞典で確認した。 君:なるほど。両語の語源は、やはり「ない無」に関係しているのかしら。 僕:その通りだ。「きたない」の語源説のひとつは「かたなし形無」、他に数説あるが、「〜なし無」で一致している。「おさない」についても然り。「をさなし」は「をさ長」+「なし無」説が有力。「をさ長」とは年配で知恵者の事。 君:「あぶない」の語源は? 僕:痛い所を疲れた感じ。「あぶなし」は中世からの形容詞で「あやふし」の後に現れる。「あやふし」説が有力。「あぶない」の語源だが、「あぶ」が無いとはいったいどういう発想なのか。不明だな。安易な発想かもしれないが、戯言(ざれごと)で「あふやし」と言い始めた可能性はないだろうか。やがて、あふなし・あぶなし。英語ではアナグラムという言葉遊びがある。日本語で有名なのが「だらしない」。語源は「しだらなし」。 君:あらあら、それは証拠固めが不十分で、少し残念ね。危うし、佐七の形ク「なし無」アクセント語源説。ほほほ |
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