飛騨方言は東京式アクセントである、
とは言っても細かい点を検証しますと、いくつか
重要な点で首都東京とは異なるようです。
方言の音韻好きにはたまらない話題といえましょう。
さて、運がよけりゃ、という言葉ですが、
半ば共通語ともいえましょうか。
飛騨方言でも日常会話で用いられます。
一方、飛騨方言でもあらたまった場合には、
運がよければ、と話します。
各種形容詞で内省してみましょう。
東京 飛騨 東京 飛騨 飛騨
赤い あかい あかい あかければ あかければ あかきゃ
○●● ○▼○ ○▼○○○ ○●▼○○ ○▼○
冷たい つめたい つめたい つめたければ つめたければ つめたきゃ
○●●● ○●▼○ ○●▼○○○ ○●●▼○○ ○●▼○
悲しい かなしい かなしい かなしければ かなしければ かなしきゃ
○●●● ○●▼○ ○▼○○○○ ○●●▼○○ ○●▼○
良い よい よい よければ よけれぱ よきゃ
▼○ ▼○ ▼○○○ ○▼○○ ▼○
白い しろい しろい しろければ しろけれぱ しろきゃ
○▼○ ○▼○ ▼○○○○ ○●▼○○ ○▼○
惜しい おしい おしい おしければ おしければ おしけりゃ
○▼○ ○▼○ ▼○○○○ ○●▼○○ ○●▼○
短い みじかい みじかい みじかければ みじかければ みじかきゃ
○●▼○ ○●▼○ ○▼○○○○ ○●●▼○○ ○●▼○
嬉しい うれしい うれしい うれしければ うれしければ うれしきゃ
○●▼○ ○●▼○ ○▼○○○○ ○●●▼○○ ○●▼○
飛騨方言における規則は単純です。
アクセント核ですが必ず、〜ければ、には存在し、〜きゃ、には存在しません。
また飛騨方言では形容詞終止形は必ず頭高か中高であり、平板型は存在しません。
必然的に、〜きゃ、は必ず低拍です。
一方、東京語は、やや複雑です。
終止形に平板型が入ってきます。
アクセント核は決して、〜ければ、には存在しないという
規則は単純だから良いとして、仮定形では形容詞語幹のアクセント核が
移動するものがある、と言う事を飛騨人は心しないといけないでしょうね。