発音に関して、アクセントとイントネーション、ふたつの言葉が
用いられますが、アクセントは共通語の日常語ともいえましょう。
アクセントがおかしい、正しい、変わっているなどの言い回しがあります。
そしてイントネーションという言葉を最初に教わるのは何といっても中学の英語ですね。
疑問文のイントネーションは尻上がりである、等々の
言葉を教わって、なんとなく理解した気持ちになった
という方が多いのでは。
両者ともに言葉の高さの上げ下げである事には変わりがなく、
従って、両者はしばしば混同して用いられ、
あるいは同一であると勘違いされている可能性が高いようです。
しかしながら両者は全く異なる概念です。
まず共通語ではひとつひとつの言葉に固有の音の上げ下げ、
つまりピッチのバターンで同音語を区別します。
例えば、端○●と橋○▼と箸▼○。
言葉の途中で急に高い音から低い音になる事に意味があり、
二拍の場合、○○と●●と○●、に意味はありません。
これがアクセントです。アクセントの対象は個々の拍であり、
文全体ではありません。
次いで、イントネーションという言葉ですが、ピッチアクセントの複数塊である
話し言葉全体としての、上がり調子ないし下がり調子の事を言います。
特に感情を込めて話す場合、話し言葉はイントネーションが顕著で、
特に句末、文末にまた共通語としての共通パターンがあります。
疑問、念押し、驚き、強調などでは上がり調子です。
また昔話の話草や、あるいは決まり文句のスピーチなどに
も共通語としての共通パターンがありましょう。
以上、斉藤純男著、日本語音声学入門、三省堂を参考までに。
さて飛騨方言で最も問題となるのが、ピッチアクセントであるものの
高低差が極めて少なく、イントネーションの中に埋もれてしまいやすい、
という事でしょう。仙台・福島・宮崎・熊本などの無アクセント方言のように、
飛騨にも少なからずアクセントを意識しない方言の話者がいるようです。
まめかな?
という言葉ですが、お元気ですか、という意味です。
豆とは異アクセントであり、本来ならば意味の取り違えなど起こるべくもありませんが、
現実には、同語を題材にした笑い話があるのです。
上がり調子のイントネーションであるがために、
語頭の意味がいずれであるにせよ疑問文である事には変わりが無く、
空耳で豆のピッチアクセント核を聞いてしまった事による笑い話です。
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