飛騨方言における音韻を考えるとプロミネンスを
避ける訳には参りません。
さて筆者はじめ読者の大半が言語学者、国語の先生では
ないでしょうが、日本人が普通、プロミネンスという片仮名
で思い浮かぶのは何でしょうか。
マンションの名前ですね。プロミネンス、ルーセント、ルミエール、
要は何でもいいのです、聞くだけでもワクワクとしてしまう瑞祥名
という訳です。
前置きはさておき、日本語ならば、言語学+プロミネンス、
国際的に行くのならば英語で、linguistics + prominence 、で
相当のネット情報が得られます。実は言語学の専門用語で
話し言葉の特定部分を強調させる技術の事をいうのでした。
例えば、佐七は女性にもてたい、と考えているとします。
強調したい特定部分は勿論、女性、です。
男や犬猫にもててもしようがない。
意思を伝達するにはその単語を大きい声でいえばよい。
これがプロミネンスの初歩、知能としては幼稚園なみ
と言う事になります。
以下、斉藤純男著、日本語音声学入門、三省堂、の
ご紹介になりますが。
プロミネンスの方法には五つあり、世界の言語に共通する
部分が多いのです。
★ひとつ、ピッチアクセントである飛騨方言などでは誰もが
無意識に行っている事でしょう強調したい単語のみピッチを
あげる。
★ふたつ、強調したい単語をわざとゆっくり話す。
極端には単語をぶつ切りにして話す。
★みっつ、強調したい単語の前後にポーズ、
つまり一呼吸を置く。
★よっつ、強調したい単語のみピッチではなくストレスアクセントを
強調する。平たく言えば、声を高くするのではなく(飛騨方言始めとする pitch accent 日本語のやり方)、
声を大きくする(stress accent である言語、英語が典型的)。
★いつつ、強調したい単語のみをそもそも全く異なった発声、ささやき声・金切り声等、
でおこなう。
実際には、ピッチだストレスだといっても微妙な事でしょう、
片方が百パーセントの言語などありません。
要は話者のいきいきとした話し振りが聞き手に共感されて、
どの言葉が強調されたのかが正確に伝わりさえすれば
上記の五つのどれを用いてもよいのでしょう。
平凡な結論ではありますが、飛騨方言は日本語、
そして日本語はピッチアクセント、
ですから飛騨方言におけるプロミネンスは
まずはピッチを使わなくては話にならぬ、というお話でした。
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