大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
はやばやと・気づかないアクセント |
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僕:2020米国大統領選挙、投票が締め切られ開票開始され二日目、結果は五分五分にて共和民主両陣営とも早々と勝利宣言の準備をしている。 君:なんでも方言のネタにしたいのね。「はやばやと」がどうかしたの。 僕:「気づかない方言」という用語があって、これが方言への興味のきっかけにもなるし、地方出身のタレントさんが苦労するのが、つい出てしまうお国訛りという事だが、「気づかないアクセント」も結構、あるのだろうね。 君:中高「はやばや◯●▼◯」が東京式アクセントよ。 僕:それを僕はずうっと中高「はやばや◯▼◯◯」で発音していた。どうも間違いという事のようだね。今日はテレビ報道を観ていて、突然に「あっ、俺のアクセントって違ってる」と気づいてしまったわけだ。 君:確かに飛騨方言としては中高「はやばや◯▼◯◯」でもセンスに合うわね。 僕:でしょ。これ、なかなか自分では気づきにくいよね。勿論、言われれば直ぐに気づくが。 君:飛騨に生まれ育って、国語教師も飛騨のご出身、つまりはそのような土地柄では自分たちのアクセント体系は実は東京式アクセントとは細かいところで異なっているという意識が育たないわね。 僕:ホント、その通りなんだよ。事実、僕は初等教育並びに中等教育でアクセント矯正の授業を受けた覚えが無い。 君:まあ、声優になるわけでなし、大した事ではないからよね。 僕:でも、こうやってサイトを運営していると、このような些細な事でも気になって仕方ない。 君:というか、話題が見つかると嬉しくて仕方ないのでしょ。 僕:まあ、なんとでも言ってくれ。飛騨方言のアクセントを考える場合、自分達は東京式内輪アクセント圏、つまりはほぼ完全に近い形で東京アクセント圏なので、アクセントは気にせず堂々と話して不都合は無かろうという無意識の方言意識が働くからだろうね。文末詞や動詞活用などでは下手な言い方をすると「おっ、方言ですね。ご出身はどちらですか?」という展開になるから気を付けて話すのだけどね。 君:今日の話は豆知識以下で平凡すぎる話だわよ。 僕:おっと、そうだね。今日は「同じ語、または相似した語が重複した三・四拍の和語」のアクセントについて考えてみよう。 君:擬声語や擬態語ね。 僕:その通り。まずはその言葉が連濁するか、しないかでアクセントは決定的に異なって来る。 君:具体例でお願いね。 僕:じゃあ連濁しない言葉について。これも「と」が付くのか、あるいは「だ」「に」が付くのかでアクセントが異なって来る。 君:だから具体例で話してね。 僕:じゃあ、連濁しないで「と」に付く言葉。これは全て頭高になる。「かんかんと」「ごろごろと」「どきどきと」「もじもじと」「じたばたと」「ちらほらと」「うろちょろと」「むしゃくしゃと」「かっかと」「せっせと」「パッパと」 君:なるほどね。 僕:ただし、ごく一部の言葉は中高アクセントになり、二拍目にアクセント核が移動する。「しくしくと」「ずたずたと」「ぴかぴかと」 君:なるほどね。「はやばやと」は連濁する言葉だかから、あなたの中高「はやばや◯▼◯◯」は東京の方々には奇異に聞こえるのよね。 僕:続いては連濁しないで「だ」「に」が付く言葉だがこれは必ず平板になる。「かんかんだ」「ごわごわに」「つるつるに」「さらさらに」「めちゃめちゃだ」「めちゃくちゃに」 君:あらほんとだわ。普段、何気なく使っているけれど「かんかんと(鐘がなる)」の擬声語は頭高だし、「かんかんに(怒る)」の擬態語は平板。同じ「かんかん」でも接続する助詞によってアクセントは変化するのね。 僕:その通り。かくしてアクセント学も奥深い学問で、興味のある人は興味が尽きない。 君:続いては連濁する副詞句についてよね。 僕:うん。実はこれも「と」に付くか、あるいは「だ」「に」の付くかでアクセントが異なるんだ。 君:あらそうだったかしら。具体例は? 僕:連濁し「と」に付く副詞句は中高になる傾向。「はればれ」「くろぐろ」「たかだか」「つくずく」「はやばや」「はるばる」「さめざめ」。 君:ただしここで問題なのがアクセントの核で、その位置は三拍目。それをあなたは二拍目の位置で話していたのでしょ。 僕:そうなんだよ。だから僕がテレビ報道を観ていて発見した飛騨方言のアクセント法則は・・「と」に接続する連濁する副詞句のアクセント核は、標準語では三拍目であるのに対して、飛騨方言においては二拍目である・・という事だった。 君:最後のアクセント則は連濁し、かつ「と」が付かない副詞句ね。 僕:その通り。「と」には付かず、「だ」「に」に付く副詞句。これは平板になる。「ちかぢかに」 君:然し、上記のルールは傾向であって、例外も多いわよ。 僕:そうだね。その辺りが、いったい国語とは、特にアクセント学とは学問なのか、という事にもなるのだけれど、少しアクセントが違うと違和感を覚えてしまう日本人のこの言語感覚はいったいどこから来ているのだろう。日本語はピッチアクセントだから、「あれっ、おかしなアクセントだぞ」という意識はウェルニッケの聴覚性言語野と聴覚野との間の連携プレーから生まれているという事を大脳生理学は教えてくれる。 ![]() 君:ウェルニッケとブローカについて簡単に説明をお願いね。 僕:ウェルニッケの損傷は感覚性失語とも言い、言われた言葉が理解できなくなる。ブローカの損傷は運動性失語とも言い、言いたい事があっても話せない。脳卒中によくある症状だ。 君:諦めるしかないのかしら。 僕:そんな事はない。気長にスピーチセラピストが治してくれるよ。脳は驚異の世界だ。 君:あなたのアクセント矯正は誰の手助けも必要なさそうね。ほほほ |
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