大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

かいど(=家の外)

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僕:「かいど」というのは家の外、つまりは玄関先とか、裏木戸の向こうとか、とにかく屋敷の外の事を言うので街道がなまった言葉ではないよね。
君:ここはアクセントコーナーよ。語源のコーナーでお話しなさったらよかったのに。
僕:ははは、そうこなくっちゃ。「かいど」は尾高で、街道は平板、明らかにアクセントが異なるので後者は前者の語源たりえない。
君:俚言かしら。
僕:いや、全国の方言。従って古語に由来する。語源、わかるかな。ヒントは漢字。
君:ならば答えは簡単よ。「かいど」は垣外。
僕:その通り。複合語。「かき」+「そと」といったところか。共に和語だ。更には「そと」の語源は「と」。「と」が上代語で、「そと」は中世以降。つまりは「かいど」の語源は「かきと」、そして平安のイ音便。何れにせよ純粋な和語。
君:あらら、奈良時代に「そと」はなかったのね。それはともかく、ほほほ、アクセントの話はどうなったの。
僕:まあまあ、急ぎなさんな。ついでだから街道の語源もお話ししよう。
君:ほほほ、結構、新しいのよね。
僕:なんだ、知っていたのか。漢語だ。つまり輸入語。中世以降。海の道が海道ならば、陸の道が街道。共に旧仮名は「かいだう」。「かいだういち海道一」は東海道一番の意味で、日本一に続く最大級の誉め言葉。海道一の男といえば清水の次郎長。
君:脱線しているわよ。アクセントのお話に戻してちょうだい。
僕:和語「かいど」と漢語「かいだう」じゃアクセントが違っても当然という話。もうひとつ、実は重要な点でお話ししたい事がある。ヒントは反対語。
君:ほほほ、街道・海道に対して「かいど垣外」・「かいと垣内」というわけね。
僕:そう。街道・海道は同音韻同アクセントの反対語。垣外・垣内は異音韻の反対語。苦しい僕の立場をわかってくれ。
君:ほほほ、わかるわよ。垣内のアクセントがどうもはっきりしないのでしょ。
僕:その通り。垣外は単独で用いられる名詞で、佐七の幼心にアクセントは刻まれている。その一方、垣内は苗字に用いられる事が多く、「かいとう」と呼び、頭高アクセント。接頭語がつくことも多い。谷垣内「たにがいと」、中垣内「なかがいと」など、飛騨に多い苗字だね。「が」にアクセント核があり、中高。仮に垣外と同じく尾高であったとしよう、でも接頭語がついて苗字になる瞬間にアクセント核が「か」に移動するというのもね。理屈に合わないな。
君:そんな些細な事で悩む事なんかないわよ。アクセントというものはゆらぎがあるのだし。ほほほ

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