大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 飛騨方言 You Tube Contents |
菜洗い |
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私:「菜洗い」と言えば飛騨の晩秋の風物詩だね。まずは動画をどうぞ。場所は懐かしの飛騨の里。 君:ええ、思い出すわ。でも今の時代はご家庭の水道で野菜をお洗いになるのじゃないかしら。 私:いや違う。昔でも村に水道はあったが、なにせ洗う野菜の量が半端じゃないので広い場所が必要だ。僕の村でも家のそばの小川でムシロ・ゴザを敷いてばあ様とお袋が二人掛かりで数日掛かりで野菜の山を洗ったものだったよ。にわか仕立ての漬物小工場という訳だ。 君:つまりはあなたは赤カブや白菜漬けと朴葉味噌で育ったという訳だわ。 私:その通り。ご飯と朴葉味噌と漬物さえあれば生きていける。ところで「菜洗い」の言葉は飛騨の俚言のようだね。然も各種方言資料に出てこない。ネット情報としては若干の情報発信がある。気になるのは信州からの情報発信で、特に野沢漬けに関したものだが「お菜洗い」という言葉を発見した。ところがこちらも各種方言資料に出てこない。「(お)菜洗い」が国語辞典にあるかと言えば、そうでもない。つまりは「(お)菜洗い」は方言学用語というよりは民俗学用語という位置づけなのかもしれないね。 君:「菜」+「洗い」の複合語だから意味は明白よ。 私:確かに複合語だ。然もその中の接合語だね。いい点を突いているね。ただし、ここで少し問題がある。アクセントだ。一拍動詞「菜」だが,頭高▼。「な」にアクセントの核があり、従って「菜の花」も頭高の複合語▼◯◯◯、要は接合語になる。「洗う」は三拍で平板アクセント◯●●。「菜洗い」が「菜の花」と同じく頭高になるかというと、そうではなくて、アクセント核が「あ」に移動して中高アクセント◯▼◯◯になるんだ。 君:飛騨方言に特有なアクセントではなく、例えば手洗い◯▼◯◯の如く、日本語のアクセントそのものよ。 私:確かにそうだね。アクセント則には無数と言ってもよいパターンがあるが、後部が三拍以上の動詞・形容詞などでできた結合名詞は原則として後部の第一拍にアクセントの核が移動するという規則がある。例 めざまし◯▼◯◯、てさぐり◯▼◯◯、おやおもい◯●▼◯◯、やまびらき◯●▼◯◯、ひとりぐらし◯●●▼◯◯。 君:なるほどね。舟遊び、馬鹿騒ぎ、人違い、命拾い、等々。すべて当てはまるわ。 私:ところが居眠り、気休め、日帰り、は平板。こんな事を話し出すと日が暮れてしまう。「秋の日は釣瓶落とし」 君:十一拍接合語で「お」がアクセント核ね。おばあ様とお母様の二人掛かりの菜洗い、これは23拍で「あ」がアクセント核。 |
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