大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
なさけ情(名) |
戻る |
僕:飛騨方言のアクセントは東京式と言われるが、この数日、アクセント辞典をパラパラとみて、違いがあまりに多い事に驚かされる。今日は名詞。 君:NHKは「ナ\サケ」。 僕:うん。ところが飛騨は平板「ナサケ」。僕には頭高は奇異に聞こえる。というか非合理的な感じ。ついでだが形容詞となると、NHKは「ナサケナ\イ、ナサケナ\カッタ、ナサケナ\ク、ナサケナ\クテ、ナサケナ\ケレバ」、飛騨式は「ナサケナ\イ、ナサケナカ\ッタ、ナサケナ\ク、ナサケナ\クテ、ナサケナケ\レバ」。つまりは飛騨式は体言「ナサケ」にアクセント核は無いのに、どうしてNHK式では単独の体言では頭高のアクセント核なのに形容詞になった途端に語幹にアクセント核がなくなってしまうのだろう。不思議だ。 君:アクセントは時代とともに変わるものよ。 僕:うん、まさにその点だ。NHKアクセント辞典は1998年版と2016年版がある。1998年版では「ナ\サケ、ナサケ\」の両論併記。2016年版は「ナ\サケ」。 君:ほほほ、飛騨には古きアクセント残れり。 僕:飛騨と「ひな鄙」をかけたか。でも1998年って、実はついこの間。中央ではアクセントの変化が目まぐるしいという意味だね。然も名詞の傾向として頭高から平板へという傾向がある。メールのアクセントが良い例。将来的には名詞の大半が平板化するとみている国語学者もいらっしゃる。 君:確かにNHK式「なさけ(ない)情無」のアクセントは非合理的よね。尾高がすたれ、頭高が残ったという事は次第に逆行した現象。 僕:うん、「なさけ(ない)情無」のみ特殊という事だろう。この推察を裏付けるべく「〜けない」の形容詞をアクセント辞典で調べてみた。いたいけない、おもいがけない、かたじけない、あっけない、そっけない、あどけない、おとなげない、いとけない、しどけない、さりげない、はてしない。やはり思った通りだった。語根の体言は皆、尾高。ただし一つだけ例外があった。「わ\けない訳無」。これは「わけ\ない不分」との混同を嫌っての事だろうね。この辺りは全て飛騨方言アクセントと一致した。 君:情けは人のためならず。文語の場合はNHK式でも「け」にアクセント核があるのよね。 僕:そりゃそうさ。同語は飛騨方言では「け」ないし「は」がアクセント核だと思う。 君:内省しているうちに判らなくなってしまったのね。 僕:その通り。幾ら内省でわからなくなってしまっても頭高・中高・尾高の三者を間違える事はないだろうが、尾高と平板の違いについては正直、わけがわからなくなる事が多い。 君:情けない。目指せアクセントの王者。しっかりしてね。ほほほ |
ページ先頭に戻る |