大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

(=支柱)

戻る

僕:表題の通りだが、つい先ほど急に思い出した飛騨方言の語彙について。
君:建築用語?
僕:そう、共通語の「はすかい斜交い」だ。
君:つまりは飛騨方言「さす」は「ななめ斜」の意味かしら。
僕:その辺が悩ましいところだ。語源は、やはり「さす刺す」だと思う。
君:でも「刺す」は頭高よ。
僕:その通り。その前に、稲田に作る「はさ稲架」は竹や木を組んだ、刈った稲を掛けて乾かす設備。さす、と言えば「はさ稲架」の支柱の事を示す。文字通り、田んぼに刺す棒の事だ。稲架の本体たる長い棒は「なる丸太」という。稲架の支柱の意味が敷衍して、壁の強度を増すために斜めに入れるつっかい棒、つまり「はすかい斜交」になったのだろう。はさ、なる、さす。三語とも平板の二拍名詞。
君:「はさ稲架」は、挟はさむ、の意ね。稲掛け。
僕:そう。「はざ」とも「はさかけ稲掛」ともいう。
君:動詞の連用形が名詞なので、さし、じゃないと辻褄が合わないわ。
僕:でも、そもそもが共通語ですら「はしかい」じゃなくて「はすかい」だぜ。
君:それはそうね。
僕:僕の推論はこうだ。はさ、なる、さす、の三語は古代の弥生時代からの重要生活単語。だから日本語の最小語条件が働いて二拍に落ち着いたんだ。「はさみ」は短呼化にて「はさ」、まるみ、から、まる、やがてナル、刺しと言うべきところを釣られてサス、と言うような事かもね。
君:うーん、微妙。
僕:これで終わりにしよう。飛騨方言では「はすかい斜交」の事を「ハ」ともいう。つまりは「サス・ハス」は同意語同義語。「サス・ハス・ナル」は最小語条件・二拍語のみならずアルタイ語の二つの特徴(頭語条件と母音調和)が一致するのみならず平板で同アクセント。本稿の結論だが、さす刺、は最重要倭語動詞なので、「さす」から「はす」が生まれたのでは、と僕は推察する。蛇足ながら「はす斜」は近世語(柳多留)。明らかに「さす」より新しい言葉。がはは
君:うーん、飛躍しすぎ。ほほほ

ページ先頭に戻る