高山の音韻・アクセント、ですが、
筆者自身のゆらぎを記載しても
意味がありませんので、
奥村三雄編・増補改定岐阜県方言の研究、大衆書房、
昭和六十三年再版、の内容をご紹介しましょう。
一拍名詞
○ 蚊、子、血、戸、実
▼ 名、葉、日、絵、木、田、手、火
二拍名詞
○○ 飴、顔、風、箱、鼻
○▼ 歌、音、川、寺、胸、
池、腕、草、花、山
▼○ 糸、肩、空、針、松
秋、雨、声、猿、春
三拍名詞
○○○ 形、着物、煙、魚、間、桜、つるべ、
小麦、ちから、油、涙、桂、枕、
兎、狐、雀、背中、苺、薬、たらい
○○▼ 小豆、ふたつ、とかけ、むかぜ、
黄金、岬
○▼○ 小麦、力、二十歳、命、朝日、紅葉
▼○○ むかぜ、二十歳、瓦、畑、桜、蚕、
便り、やまい
二拍動詞
○○ 売る、聞く、積む、着る、為る、寝る
▼○ 書く、切る、飲む、来る、出る、見る
三拍動詞
○○○ 洗う、歌う、踊る、植える、借りる、捨てる
○▼○ 動く、落とす、思う、生きる、起きる、落ちる
歩く、隠す
▼○○ 入る、参る
二拍形容詞
▼○ 無い、良い
三拍形容詞
○▼○ 赤い、浅い、甘い、青い、暑い、多い
以上です。これ以上は著作権の事もあり、ご容赦を。
つまりは、高山方言のアクセントは
共通語・東京語とほぼ同じです。
ただし、上記の内容、二拍動詞・為る、ですが、▼○、の間違いでは
ないでしょうか、奥村三雄先生。
飛騨方言においては、なる○○、といえば、ラッパが鳴る、
の意味になりましょう。また飛騨方言では、なる▼○、といえば、
大家滅びて子家となる(方丈記)、などの文例が出てきます。
飛騨方言の二拍名詞、三拍名詞に無型アクセントが
存在すると言う点についても筆者は抵抗を感じます。
高低差が実はわずかではあるものの、やはりそれらは平板型
と言う事ではないでしょうか。例、まけるがかち○●●▼○▼。
アクセントの情報といえば、私の頭脳にも、
また飛騨方言ネイティブの皆様にも、おそらくは
数十万語のアクセントが詰まっているのですよね。
そして耳さえ肥えていれば、一言でも変なアクセントが
飛び込んでくるや否や、
あっ、こいつぁ今、おかしたやな(*)
言い方したぞ。絶対によそもんやな。
飛騨の人間でぁねえぞ。
という事になるのですよねえ。
また、東京の方は、
あらっ、佐七さんのアクセントはおかしいわ。
彼は東京の生まれじゃないわ。
携帯ストラップがサルボボだから、若しかしたら飛騨の方よ。
と思われるかも。
しゃみしゃっきり。
(*)おかしい(とでもいうべき)ような、という
意味の副詞句です。
おかしい、とは意味が異なります。
なんとなくおかしい、というのが、おかしたやな、です。
明らかにおかしい、という意味ではありません。