大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 文法

飛騨方言におけるゆすり音調

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北陸方言に特徴的と言われるゆすり音調ですが、 飛騨方言サイトからもいくつか情報発信があります。 曰く、飛騨方言では詠嘆の意味の終助詞・な、を、 なあ、と伸ばして発音し情感を込めて話す、というような 文面が多いようです。 飛騨方言をご存じない方には、まるでもって意味が理解できない 文章ではないでしょうか。

さて飛騨方言は純東京式アクセントのモーラ方言ですが、 この終助詞・な、の情感を込めた話し方とは、 例えば民謡のこぶしのように長音化しつつも高低アクセントを 利かすという意味です。 平たく言えば、単に二拍で長音化するのではなく、 三拍で長音化する(なーー▼○●)という意味です。 佐七が考える最前の表記、はズバリ、なぁあ、です。 それでもここまでで終われば平凡な記事と言う事でしょう。

筆者が気付いたのが実は半日前ですが、 飛騨方言のゆすり音調というのは単なる高低アクセントではなく、 つまり音の上げ下げという悉無率ではなく、 三段階の上げ下げが行われているようです。

この高低アクセントを、高中低、の三文字で お示ししますと、
 あれ、こーわいなぁあ
 高中 中中高高中低中
 ▼○ ○○●▼○○●
の如くです。記号▼○●を 用いたのでは、中低中、のゆすりは何とも早、 表現できません。 もっとも、この音というのは、あーあぁやっちゃった、 の、あーあぁ、の音と同じでしょうから、 私も簡単な事をただ言い換えているだけの事なのかも。 ついでですから、ゆすりが無いアクセントも 以下にお示ししましょう。
 あれ、こーわいなぁ
 高中 中中高中高中
 ▼○ ○○▼○▼○
つまり、ゆすりが無ければ終助詞・な、には アクセント核があるのです。つまり文意は そこで切れ、ひと息入れればよいのです。 ところがゆすり音調は平板です。 接続助詞・と、などに接続し高アクセントの まま文意を続けてもよいわけで、 この辺の理屈が、 冒頭の飛騨方言サイトの記事、情感を込めた話し方、 の説明ともいうべきでしょうか。

さて、な、の音の母音、あ、は非円唇前舌広母音です。 この音を単に長音化するのではなく、さらにピッチを さげようと思うと、ほんの一瞬ですが 舌全体を下げて口腔内のスペース を少し広げる事により発声が可能でしょう。 つまりは舌全体のトーヌスを和らげ、はやい話が 少し舌の力を抜けばよいのです。

ところで人の舌というのは、言わば 筋肉の塊です。どの筋肉の力を 抜いているのか、また声のピッチを決めるのは第一には声門の動かし方、 これが実は本題ですが、残念ですが紙面切れ。
www.yorku.ca/earmstro/journey/images/tongxsec.jpg

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