大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

アスペクト・テンスに関する一考察

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佐七:さて表題だが、ピンと来るかい。
長女:日本人には不明でも、学術用語ならあり、という事かしら。
佐七:御名答。この用語はネット情報もあるし、これ以上、議論する事もない。がしかし、国語学・方言学でこの言葉が用いられている事に、僕はこの世界に首をつっこんで、ほんとに驚いた。aspect
長女:ふふふ、今じゃ変な事を書いたと思った。
佐七:全然さ。いまだに変な言葉だと思っているが、言語学の直訳ができなくて、現在なお意味不明の片仮名である事が残念なんだ。
長女:アスペクト・テンスは・・実は私も意味不明なのよ。
佐七:私もだ。テンスは現在・過去・未来、これは直感できる。そしてアスペクトとは・・
     開始〜継続/
     最中〜終了〜終了後の状態/
     最中〜変化の開始〜継続/
     最中
     といった時間のスペクトラムを示す、
ある文法書に上記の如く書かれているが、意味不明で、おてあげだ。
長女:何か、外国の文献の直訳にみえるわね。
佐七:そうなんだよ。まるで日本語になっていない。でも僕の解釈じゃこうだ。どうも、アスベクトというのはテンスの下位分類だ。独立のパラメータと言ってもよい。テンス(現在・過去・未来)に対して動作があった状態が現在・過去・未来のいずれかを示すのがアスベクトらしい。
長女:ふふふ、お父さんも自分の解釈に酔いしれているわよ。なおも私には意味不明だわ。もっとわかりやすくお願いね。
佐七:わかりやすいといえば例文だな。お若い方むきのメール文を示すと、"・・昨晩、九時ころ電話したけれどいなかったわね、どこへ行ってたの。・・"。
長女:フムフム、深刻なメールの方もあるかも。
佐七:お前はいつも深刻なメールは無いらしいな。ははは。ところで、ここに基準時という概念がある。さていつだい。
長女:基準時は昨晩の九時ね。基準時から見たら、"電話した"、というのは現在、"いなかった"、というのは過去、"どこへ行ってた"、というのは現在進行形、よね。
佐七:だよね。とうもそれがアスペクトらしい。早い話が基準時からみた時相・テンス、の解釈だ。テンスの各々にどのようなアスペクトがあるのかを表にする事ができる。
                    テンス
    アスペクト      −−−−−−−−−−−−−
    −−−−−−−−−−−過去   現在   未来
    開始・基準時未実現  〜た   〜る   〜る
    終了・基準時実現   〜た   〜た   〜る
    最中・基準時同時間帯 〜ていた 〜ている 〜ていた
                    〜る
    基準時以前既実現   〜ていた 〜ている 〜ていた
                    〜た
                    〜る
    基準時以後非実現   〜た   〜る   〜る
    習慣・反復・真理   〜ていた 〜ている 〜ている
               〜た   〜る   〜る
という事だ。(泉原省二著・日本語類語表現使い分け辞典 pp.1154) 日本人にとってアスペクトの概念がピンと来ないのはあまりにも自明の理、という事からなのかな。瞬時にテンス・アスペクトを使い分けている。
長女:英語にはアスペクトがなくてテンスだけで話しているのかしら。
佐七:恥ずかしいが、私は実は英語の文法は高校どまりだ。でも僕は当時、文法は徹底的にやった。新々英文解釈研究・高英研、等々。がしかしアスペクトは教わらなかった。今もそうだろう。今でも大学入試には出まい。
長女:教わらなかったのは一般高校生の頭には無理だったから・・でしょ。お父さんは四十年前の高校生から進歩したのよ、えらいわあ。
佐七:ははは、親をからかって。 spect = single photon emission computed tomography, tens = trans-cutaneous electrical nerve stimulation, こんなの、知ってるかい。
長女:日本人には不明でも、学術用語ならあり、という事かしら。ほら、だいじな事、忘れてるわよ。読者の方にサービス、お得意の飛騨方言訳を。
佐七:おう、そしゃ。 "きんのようさり、九時ころ電話したに、おらなんだえな。どこ行っとったんやいな。"
長女:携帯の電池ゃ切れとったんやさ。かになあ。
cf.aspect : ME. L. aspectus, pp. of aspicere, to look at ad-, to, at + spicere/specere, to look
tense : OFr. tens, L. tempus, =time

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