大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 文法

来る(=行く)

戻る

私:昨年あたりまではひとつの記事をゴテゴテと長く書く癖だったが、最近は短い文章にしている。読者の皆様にわかりやすい文章を書かねば、という反省から。
君:では、早速に結論をお願いね。
私:はい。飛騨方言では「行く」と言う意味で「来る」という事がある。例文は、A子さん、今から五分ほどでそっちへ来るでな(=そちらへ行きます)。
君:でも、現に飛騨方言では「行く」の意味で「行く」も使うわよ。
私:そうだね。言い間違えたかな。飛騨方言には「行く」の意味で「来る」という事があるが、「来る」の意味で「行く」という事はありません。
君:つまりは動作の方向性、アスペクトの問題ね。
私:その通り。飛騨方言に於いては「行く」という動詞は主体が現在の地点から遠ざかる事であり、そのアスペクトは共通語と同じだ。そして共通語で「来る」は近づく事を意味するが、ところが、飛騨方言の「来る」は、遠ざかる場合にも、近づく場合にも、共に用いる。
君:相手の視点から自分の行動の見え方を表す動詞という事で、飛騨方言「来る」は、言わば謙譲表現(=お近づき致します)なのよね。ほほほ

ページ先頭に戻る