大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 地名考 |
ほら洞 |
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私:飛騨方言に興味があるが、飛騨の地名にも興味がある。自然地形にちなんだ名前ばかりだが、実はこれは古代の音韻の証左となっている。東北地方にアイヌ語の地名が多い、なんてのが有名な話だね。 君:地名だけは語り継がれて現代に至るというわけね。 私:そう。自然地名は七種類に分類できると言われる。川、野原、坂、山、谷(沢)、海岸、岬。この中で海岸だけは古語辞典に無く、つまりは近世語。明治時代からの言葉だ。言海(明治24)に記載がある。海岸以外は和語。然も最重要和語と言ってもいいね。 君:でも今日の話題は「ほら」よ。 私:うん。「ほら洞」は谷(沢)の下位分類と考えればいいんだ。 君:「ほら洞」は和語よね。 私:勿論。和語の定義、という事が必要だろうが、記紀及び万葉の語彙というのが必要条件だね。 君:ほほほ、当時から大陸との行き来はあったのだから外来語、つまり漢語を除けば十分条件、つまりはザ・和語という訳ね。 私:そうなんだよ。専門家ではないので若し間違っていたらゴメンネ。韓国の地名にも「洞」が多いが、音韻は「どん」。「ほら」は存在しない。和語に「ほら」があり、これに漢字の洞を当てたという事だよね。後世の当て字。実は万葉仮名は違うんだ。 君:後世という事は? 私:そう。記紀・万葉に洞は無い。有るのは「ふらふら富良富良」記・上。 君:それって「ふら」の畳語じゃないの。つまりは、オノマトペなのよね。 私:そりゃそうだろ。議論の余地は無い。但し、古事記の記載は、内部のうつろなさまの意味。自然地形の「ほら洞」、つまりは水の枯れた谷、という意味では無い。 君:でも、内部のうつろなさま・普段は水が枯れている地形、これは意味的にドンピシャリだわね。 私:なんだ。今日はお互い、やけに気が合うね。 君:実際、飛騨の地名、特に大字・小字、それに苗字にも「ほら」は多いわよね。 私:ほらあ、多いさ(そりゃあ多いよ)。突然に飛騨方言、ごめんね。 君:ほら出た、いつもの冗談。ほほほ、お相子ね。でも古事記のお話が出来てよかったわ。苗字のついでに、つまりは大迫は洞の事ね。 |
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