飛騨方言で、うやうやしく、深々と頭をさげて物をいただく、という四段動詞です。
主に、仏壇にお供えしてあるものを、うやうやしくいただく場合などに用います。
共通語・いただく、とほとんど同意です。
さて、古語には万葉集に、いなだき(=いただき)、があり、源氏物語など後世に、いただき、に転じたことが判ります。
頂上、てっぺんの意味です。
そして、いただき、の出現に伴い、いただく、という動詞が成立し、
物を頭のてっぺんに乗せる、仰ぎ尊ぶ、などの意味で用いられるようになりました。
あるいは、いただく、いただき、の両語は同時期に、あるいは相前後して成立したのでしょう。
さて古語にあるいなだき、という言葉は飛騨方言にはありません。
がしかし、その動詞語、いなだく、のみが現存し、しかも、いなだく、は三省堂・新明解古語辞典には記載がなく、
極めてまれな言葉と考えられます。あるいは、古典上は記載のない動詞なのかもしれません。
私自身は、古くは、いなだく、いなだき、と話されているうちにやがてそれが、
いただく、いただき、に変化したのではないかと思います。
つまりは、古語辞典にすら記載のしようがないこのような極めて珍しい、まぼろしの古語動詞・いなだく、が
飛騨地方の方言として残っている事は不思議というしかありません。
また飛騨方言では、名詞としては、いただき、のみを使用し、
動詞としては、いただく、と、いなだく、を使い分けている事も不思議な事です。
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