いさましく装う、いばる、という意味の四段活用動詞です。
勇ましくない人が勇ましく装っているみっともない状態を示す言葉ですので、
一般的には侮蔑的、嘲笑的、冷笑的に用いられます。
また、いさる、の意味は、例えば強面のお兄さんが肩で風を切って歩く様の如く、
もともとはいさましく装うという意味であったのが、
飛騨方言ではそれ以外の意味で使用されるようにもなっています。
例えば、見栄をはる、ダンディを装う、浅はかな知識をひけらかす、等々です。
これらの用法には既に勇ましく見せるという意味はありません、
例えナヨナヨとしていても行為が実力を伴っていないために"いさる"と表現するのです。
飛騨方言では連用形は促音便・いさって、です。
さらに"〜ておる"は"〜とる"と、詰めて発音し、"いさっとる"になります。
また飛騨方言では"〜してしまう"は"〜てしまう"と発声しますので、
"いさってまう"という言い回しになります。
"いさってまって"という言い回しがありますが"いさってまう"事をしてしまって、
という意味、つまり、"いばってしまって"、という意味です。
また飛騨方言では連用形単独・いさり、を名詞として用いることはないようです。
飛騨方言のネット情報が多いのですが、能登、石川、遠くは北九州方言情報があります。
上記ネット情報は、いばる、の意の記載が多いのですが、
語源に言及する情報は皆無のようです。
いい子ぶる、といえば、いい子でない子がいい子を装う事をいうので、
当辞書としては、いさるは、勇ましぶると訳したい所です。
あるいは、勇ましぶる>いさる、と言葉が変遷したのでは、と考えるのは
難ありでしょうか。
いばる、がいさるの語源と考えにくいひとつの理由は
飛騨方言で、いばる、を、えばる、ともいうのです。
筆者としてはいばる、という言葉が、えばる、と、いさる、に
二分化したとは考えたくありません。
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