くもじ○●○、をキーワードにネット検索しますと飛騨からの発信がありました。
筆者自身はほとんど使用せず生活実感というものがないのですが、
それにしても飛騨の郷土料理にやや古くなって酸味が強くなった漬物の煮しめがあり、
その名も、煮たくもじ○●●●○、があります。煮たくもじをキーワードにネット
検索しますと発信は飛騨に限られ、どうやら俚言のようです。
さて漬物の方言量は小学館日本方言辞典によりますとおよそ数十で、
くもじ、が話される地域は京都府、岡山県阿哲郡、小豆島、と記載されています。
派生語としては、くもり、おくも、おこもじ、おくもじ、等が全国の方言として
紹介されています。更には、くき、くきたち、の二語も漬物の方言として記載があります。
本題になりますが、上記の方言はすべて実は同根です。
くもじ、の語源は詳しくは古語辞典に譲りますが、室町時代に
御所に使えて一室を与えられていた女官(女房、にょうばう)の
話し言葉、所謂女房詞(にょうぼうことば)、
によります。漬物の意味でくき・茎の事をくもじと言った丁寧語というわけです。
現代語に生きる他の言い回しは、しゃくし・しゃもじ、の例があります。
当初は宮中で話されていた言葉もいつしか庶民が真似て使うようになり、
丁寧語の意味もなくなり、既に日葡辞書には Cumoji の記載があり、
普段語に格下げとなっています。
蛇足ながらくもじには他に、くわんぎょから還御、
三々九度の九献から酒、苦労、など各種の意味があるようです。
結論ですが、室町時代の宮中の女房詞と飛騨方言に
直接の関係はありません。日葡辞書の記載を信ずる限りは
安土桃山時代に既に畿内では庶民のことばであった、くもじ、が
その後に方言周圏論的に飛騨に伝わったという事なのでしょう。
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