大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

ちゅうぶ・ちゅうぶう・ちゅうけ・飛騨方言

戻る

昔から飛騨で多かった病気といえば脳血管障害(脳梗塞、脳出血等)ですね。 厳冬の国、晩秋には菜洗いをしこたま 行い、冬の常食が漬物です。地方病ともいうべき悲しい時代がつい半世紀前の事。 共通語では中風・ちゅうふう、ないし、中気・ちゅうき、でしょうが、 これがそれぞれ、ちゅうぶ(ちゅうぶう)、ちゅうけ、と訛るのが飛騨方言ですね。

さて方言研究者の定義によれば、方言とは(1)広義では 特定地方の言語の全体、つまり音韻・アクセント・文法・語彙などの 体系を示します。また(2)俚言・りげん、とはその地域を特定付ける単語で共通語に ない語彙の事、つまりは他所では通じない言葉、例えばゆきまたじ、の事をいいます。 また(3)訛語・なまり、は標準語形が音韻的に変化したものをいいます。

本稿のちゅうぶ・ちゅうけ、は俚言ではなく訛語に当たり、 つまりは広義の飛騨方言に当たるという訳です。 さて中風の語源ですが、 ですから本稿ばかりは共通語の説明と言う事でご容赦を。 愚管抄・六、承久2年(1220年)ごろ、の〜の気有りしかば、 の例文の如く古くから病気一般を表す言葉であったようです。 つまりは単なる風邪から不治の病まで。尚、中という字ですが、 当たるという意味です。 見事ど真ん中心臓にあたる事を命中と言います。 つまりは悪い風に当たってしまう事を中風と言った中世以前の 日本人の死生観がお分かりでしょう。 運悪く風に吹かれてもしかたなし、 良い風で治る事もあるかも知れないし、 全ては風まかせ、あれこれ悩んでも仕方あるまい、 という事ですね。 中気というのは、病気にあたる、という意味である事は書かずもがな。

さて戦前ですが血管造影を考えたお医者さんがノーベル医学賞に 輝きました。そして脳血管障害の病態が解明されました。 また二十一世紀の現在、世界で最も売り上げの多い薬が 脳血管障害の予防薬・抗血小板薬という薬です。 そのおかげで最近ようやく人間は哺乳動物の中で一番に長生きできるようになったとさ。 しゃみしゃっきり。

ページ先頭に戻る