サイト語源由来辞典様によれば、トウモロコシは、ポルトガル人によって16世紀に日本に伝えられた。それ以前に中国から渡来した「モロコシ」という植物によく似ていたことから、「唐のモロコシ(「唐」は舶来)」という意味でトウモロコシとなったとの事。唐(とう)+唐土(もろこし)、を語源と説くネット記事もあります。トウ、モロコシ、共に中国という意味です。もろこしに遠くの国をあてる説もあるようです。Wikipedia によれば『日本方言大辞典』には267種もの呼び方が記載されているようですが、岐阜県、富山県あたりではトウナワと呼ぶ、とあります。ところが実は、高山市大西区界隈では、更に詰まってトウナ○○●と言います。飛騨たかね工房に"とうな餅"という方言グッズがあります。高根村は大西区の上流十キロの地区です。飛騨川上流域では広くトウナが話されている事が分かります。
さて岩波新書・ことばの由来(堀井令以知・著)に更にトウモロコシの語源が詳しいのですが、トウナワの語源は唐粟(トウアワ)にあるようです。両県ではもともと粟の生産が少ない地域であるが故に、この外来種を外国、即ち唐から
来た粟という意味で唐粟と呼んでいたと堀井氏は推察しています。氏は他の地方のトウモロコシの各種方言名、例えばトウキビ、ナンバンキビ等、についても同様に推察しておみえです。
ところで筆者・佐七が疑問に思う事は、『日本方言大辞典』、及び上記堀井氏著の情報が残念ながら古いと言わざるを得ず、飛騨地方で、トウナワ>トウナ、と既に語の変化が生じている事が認識されていない点です。実は稀有な言葉・トウナのようで、下呂中学公開のネット方言辞典、当不肖記事、及び上記の"とうな餅"情報以外には、飛騨方言・"とうな"の情報は皆無に近いのです。さるネット岐阜弁辞典にはコーラキビがありました。高麗キビの意味でしょう。
さて、飛騨方言に於いてトウアワがトウナワに変化した理由は連母音を嫌ってリエゾン化した事と、〜縄が語尾の語群(例、墨縄、火縄)と同音衝突しなかった為と考えられます。そしてトウナワがトウナへと更に変化した理由は、トウアワ、トウナワ共に第三モーラがアクセント核であったのではと推察します。非アクセントモーラの脱落です。
以上から明らかな事ですが、飛騨方言・トウナの語源は唐菜ではありません。その一方、奈良県十津川方言ではトウキビ・唐菜(さて何の意味でしょう)の両者が話されているというネット情報の存在もこの際は記載しておきましょう。
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