大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
千反田える |
戻る |
私:表題の人名についてお知りの日本人は、一般論としてはアニメオタクと呼ばれる方々かも知れないが、高山市民なら誰でも知っている名前だよね。 君:京アニ「氷菓」の主人公・折木幸太郎の恋人ね。読みは「ちたんだ」。 ![]() 私:能登の千枚田(せんまいだ)という位だから、普通は「せんたんだ」と読んでしまいそうだ。 君:今日は何のお話なの?「氷菓」は高山市街とりわけ我らが母校・岐阜県立斐太高等学校古典部が舞台のアニメだから、斐校のお話かしら。 私:いや、基数詞の読み方について少し考えてみようと思う。早速だが、先だっては可児市の自宅を朝早くにオートバイで出て、今年はこれが最後と思って新穂高ロープウェーに行って来たんだよ。片道200キロ。41号線を北上、高山に入るや石浦で右折して裏道へ、つまりは江名子経由で丹生川へ向かった。 君:それで? 私:丹生川に入り、目に飛び込んだ看板が「御宿・四反田」。いやあ、びっくりした。「四反田」は「したんだ」の読みである事は直感したし、「千反田える」ちゃんは実在する苗字「四反田」を文字って名付けられたのか、あるいは旅館が「千反田」を文字って「四反田」と名付けておられるのか、などと考えつつ看板を通過した。 君:結論はどうなのかしら。 私:全国のお名前検索サイトを先ほど調べたが、「したんだ四反田」は全国に数えるほどしかない、極めて珍しい苗字で、飛騨に数十人、その他、全国に百人程度という実在する苗字だった。その一方、「ちたんだ千反田」はゼロで実在しない。つまりは苗字「千反田」はアニメ「氷菓」の中だけの仮想現実的な苗字であり、作者は丹生川辺りに多いのだろう「四反田」姓を文字ったという事が判明した。 君:固有名詞であれ何であれ、あなたは飛騨の言葉にあれこれ、拘りがあるのね。四反の田んぼをお持ちのお百姓さんという事で「四反田」姓の由来という事でいいのじゃないかしら。 私:「四」の漢字だから「よ、よん、し」の読みがあるが「よ(ん)たんだ」とは読まない理由がひとつある。 君:和語であるかないか、という事ね。 私:その通り。あくまでも原則だが和語に用いられる基数詞は「ひと・ふた・み・よ・いつ・む・なな・や・ここの・と」。 君:「反」を調べたのね。 私:「反」が制定されたのは大化の改新だ。それ以前の田の面積の単位は「しろ代・ふ歩」。高麗尺なるもので長さを測って「反」を定義したそうだ。文明国家の幕開けだったんだよ。暦についても、ひとつ気づかされる事があるよね。 君:「しがつ四月」ね。旧暦は和語ではないのよね。中国あたりの輸入品。京都での太陽や月の見え方を基準として、毎年、せっせと計算していらっしゃったのだわ。 私:「ひと〜」という風に数える事が出来る名詞は和語といったが、あまりにも例外が多すぎて、あまり役立たない法則かもしれないね。 君:ほほほ、あれこれ一生懸命、思い浮かべてみたのね。 私:そうだ。ひといろ色・ひとがさね重ね・ひとかぶ株・ひとかん缶・ひときれ切れ・ひとくち口・ひとくみ組・ひとクラス・ひとけた桁・ひとこと言・ひとさら皿・ひとそろい揃・ひとたば束・ひとたび度・ひとたま玉・ひとつぶ粒・ひとつぼ坪・ひととおり通・ひとり人・ひとはこ箱・ひとばしょ場所(相撲)・ひとはしら柱・ひとはち鉢・ひとふくろ袋・ひとふり振・ひとへや部屋・ひとまく幕・ひとまわり回・ひとむね棟・ひとやく役。 君:和語でない単語のほうが多い勢いよ。 私:それでも規則は見いだせる。つまりは和語なら必ず「ひと〜」だか、「ひと〜」だからと言って和語とは限らない。一方、「いち(いっ)〜」なら和語では無い。「ももち百千」という古語がある。他には、ちあき千秋・ちいほ千五百・ちいほあき千五百秋・ちえ(だ)千枝・ちぎ千木・ちぎびつ千木櫃・ちひろ千尋、ふう。だから「ちたんだ」は和語の読み方。「したんだ」は外来語の読み方。 君:四苦八苦のあなた、古典部じゃなくて、確かギター同好会だったわね。 |
ページ先頭に戻る |